この記事では「ギャップ更新」という用語に着目していこう。

高校生であれば、「生物基礎」の授業内でこの言葉を耳にするでしょう。生態系や森林の遷移に関係するキーワードです。ギャップ更新の意味や、その重要性について確認していきたい。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

「ギャップ更新」は植生の遷移に関係している

はじめに桜木先生も少し触れてくれましたが、「ギャップ更新」という言葉は、生態系…中でも植生(しょくせい)の遷移(せんい)に深く関係している言葉です。ギャップ更新自体の解説をする前に、まずは”植生”というものについて確認しておきましょう。

植生とは?

植生とは、ある場所に生育している植物の集まりのことを指します。

”ある場所”というのは、森林や草原といった自然の環境だけをさすわけではありません。自宅の庭、畑、公園…人間の手が加わったところであっても、植物が生えていれば「植生が存在する」ということになります。

植生は場所によって異なる

image by iStockphoto

植生は場所によって大きく異なります。太くて背の高い樹木がメインとなっている森林のような植生もあれば、背の低い小さな植物しか見られないような植生もあるでしょう。公園の植え込みなんかであれば、人の手によって選ばれた花や低木が植えられているかもしれませんね。

\次のページで「植生の遷移」を解説!/

植生の遷移

日本は気温や降水量に恵まれていますので、私たちの周囲には当たり前のようにたくさんの植物が存在し、場所によって多様な植生をみることができます。

ここで少し考えてみましょう。植生というのは、今も昔も、これからもずっと変わらぬ姿を保ち続けるのでしょうか?

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そうですね。一般的に植生は時間の経過とともに移り変わっていきます。これが植生の遷移です。

日本のように十分な気温と降水量のある環境でみられる植生の遷移の例をみてみましょう。

裸地…植生のない状態。

コケ植物など、厳しい環境に強いパイオニア植物の侵入

草原…草本類を中心とした植生 例)ススキ

低木林…低木を中心とした植生 例)ヤシャブシなど

陽樹林…明るいところを好んで生育する樹木(陽樹)を中心とした植生

混交林…陽樹と陰樹の入り混じる森林

陰樹林…暗いところを好んで生育する樹木(陰樹)を中心とした植生

あくまで一例なのですが、日本のような土地では、最終的に陰樹林にたどり着くとされますね。陰樹林が形成されると、よほどのことがない限り、全体的な植生はそれ以上変化しにくくなるんですよ。このような状態を極相(きょうくそう)、またはクライマックスといいます。

極相で多く見られる植物種はとくに極相種ともよばれますね。

\次のページで「陰樹と陽樹」を解説!/

陰樹と陽樹

今回のテーマである”ギャップ更新”に関係してくるので、ここで陽樹と陰樹についても簡単にふれておきましょう。

樹木の中でも、明るいところを好んで生育するものが陽樹とよばれます。陽樹の幼木は強い日の光がないと育ちにくい傾向があるんです。

一方で、日の光があまり当たらなくても幼木が育つことのできる樹木は陰樹とよばれます。

image by Study-Z編集部

「極相が陰樹からなる森林になる」理由は、このような陽樹と陰樹の性質によるのです。

まだ周囲に背の高い樹木がなく、地表まで日の光が届きやすいときは陽樹の幼木がぐんぐん成長します。しばらくすると陽樹の林=陽樹林ができますが、生い茂る枝葉によって地表には日光が届きにくくなるのです。

すると、暗いところでも幼木が成長できる陰樹が生育するようになり、時間をかけて陰樹林に置き換わっていきます。

”ギャップ更新”は森林の部分的な変化

さて、おまたせしました!今回のテーマである”ギャップ更新”について解説しましょう。

”ギャップ”とは、森林において部分的にできる「すき間」のことを指します。

背の高い樹木が病気や寿命で枯死したり、落雷などのアクシデントで倒れると、その樹の枝葉が占めていた部分がぽっかりと空き、ギャップが生まれるのです。

発達し、極相に近い森林の場合、このギャップは非常に大きな意味を持ちます。その部分では、暗い林床に光が差し込むようになるためです。すると、それまで発芽や生長が妨げられていた日の光を好む植物がみられるようになります。

\次のページで「ギャップ更新より大規模な森林の変化」を解説!/

image by iStockphoto

陰樹ばかりの森の中で、日の光を好む陽樹がぽつんとたたずんでいることがあるのですが、これはまさにギャップがもたらしたものと考えられるでしょう。

このように、ギャップが生じて森林の一部が変化することを、ギャップ更新とよびます。

それがすごく大切な視点なんです。長い年月にわたって形成された森林は、大規模な撹乱が起きない限り、全体的な様子はほとんど変化しないように見えます。しかし、よく観察すれば一部で破壊や再生を繰り返しながら、森林が維持されているんですよ。

ギャップ更新より大規模な森林の変化

部分的な変化であるギャップ更新よりも、もっと大規模に森林の様子が変化することがあります。たとえば、山火事大規模な土砂崩れ、人の手による広範囲の森林伐採などです。

このような場合は、部分的に光が差し込むどころか、全体的な植生ががらりと変わってしまいます。それまで林床だった地表全面に日の光が当たるようになり、パイオニア植物や陽樹の幼木がぐんぐん育つでしょう。

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岩や砂ばかりの”裸地”から始まる遷移と違い、すでに植物が生えていたり、種や根が残された状態から始まる遷移はまとめて二次遷移(にじせんい)とよばれます。

大規模な森林の更新も、部分的なギャップ更新も、どちらも二次遷移にふくまれるのです。

今こそ”森林”をみてほしい

今回のテーマである”ギャップ更新”は、森林生態学とよばれる分野で登場する言葉です。

私たちの国にはあちこちに森林がのこっていますが、それが形成されるまでには気の遠くなるような年月がかかります。過去には過剰な伐採が行われたり、手入れの不足なども課題となっていますが、近年は地球温暖化などの環境問題解決への糸口として、再び森林の重要性が見直されているのが現状です。

今一度、身近な植生や森林に目を向けてみてください。静かで変化に乏しいように見える森でも、そこかしこで常に変化が起こり続けていることに気づけるでしょう。

イラスト使用元:いらすとや

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理科生態系生物

生物基礎で必須!「ギャップ更新」って何?植生と遷移との深い関係とは?現役講師が簡単わかりやすく解説!

この記事では「ギャップ更新」という用語に着目していこう。

高校生であれば、「生物基礎」の授業内でこの言葉を耳にするでしょう。生態系や森林の遷移に関係するキーワードです。ギャップ更新の意味や、その重要性について確認していきたい。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

「ギャップ更新」は植生の遷移に関係している

はじめに桜木先生も少し触れてくれましたが、「ギャップ更新」という言葉は、生態系…中でも植生(しょくせい)の遷移(せんい)に深く関係している言葉です。ギャップ更新自体の解説をする前に、まずは”植生”というものについて確認しておきましょう。

植生とは?

植生とは、ある場所に生育している植物の集まりのことを指します。

”ある場所”というのは、森林や草原といった自然の環境だけをさすわけではありません。自宅の庭、畑、公園…人間の手が加わったところであっても、植物が生えていれば「植生が存在する」ということになります。

植生は場所によって異なる

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植生は場所によって大きく異なります。太くて背の高い樹木がメインとなっている森林のような植生もあれば、背の低い小さな植物しか見られないような植生もあるでしょう。公園の植え込みなんかであれば、人の手によって選ばれた花や低木が植えられているかもしれませんね。

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