この記事では「耳順う年」について解説する。

端的に言えば「耳順う年」の意味は「60歳」ですが、由来や幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元大手予備校校舎長で大学入試の国語指導歴が長いライターのみゆなを呼んです。一緒に「耳順う年」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「耳順う年」の意味や語源・使い方まとめ

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「耳順う」と書き、読み方は「みみしたがう」です。どこかで聞いたことがある表現のような気もしますね。それもそのはず、日本人にも馴染み深い、非常に有名な文章の一部を抜き出したものです。「耳順う」のほかにも関連表現がいくつかあり、いずれも日常生活でも使える故事成語になっています。

由来までさかのぼって意味を知ると、理解が深まりますよ!早速「耳順う年」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「耳順う年」の意味は?

「耳順う年」には、次のような意味があります。

60歳。耳順( じじゅん) 。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「耳順う年」

「耳順う年」とは60歳のことです。「耳順う」の部分を抜き出して「耳順」と言ったりもします。

「耳」は、私たちの頭についている「耳」ですね。音や声を聞く器官のことです。また「順う」とは「従う/随う/遵う」とさまざまな感じが充てられますが、いずれも「ついていく、たどる、他からの動きに順応する、応じる、携わる」といった意味になります。ここで使われている「順う」は「順応する」という意味だと押さえましょう。

それにしても「耳」と「順応する」で、どうして「60歳」という意味を表すようになったのでしょうか。それは由来を見てみるとわかりますよ。

「耳順う年」の由来は?

次に「耳順う年」の由来を確認しておきましょう。

「耳順う年」=60歳を意味するようになったのは、孔子の弟子たちが編纂した「論語」の『為政』という章に収められている次の一文に由来します。

\次のページで「「耳順う年」の使い方・例文」を解説!/

(原文)
子曰、吾十有五̪而志乎学、三十而立、四十而不惑、五十而知天命、六十而耳順、七十而従心所欲不踰矩。

(書き下し文)
子曰く、吾十有五にして学に志す。三十にして立つ。四十にして惑わず。五十にして天命を知る。六十にして耳順う。七十にして心の欲する所に従えども矩を踰えず。

(意味)
孔子先生はこうおっしゃいました。「私は15歳で学問で身を立てようと決意した。30歳で学を修めて自立した。40歳では物事を決めるときに迷うことがなくなり、50歳で自分が天から与えられた使命を悟った。60歳になってようやく、自分と異なる意見や他人の忠告を素直に聞けるようになり、70歳でやっと自分の思うように行動しても道を踏み外さなくなった」と。

ここから「耳順う」は60歳を指し、同時に「他人の意見や自分とは異なる考え方にも耳を傾けられるようになる(耳順う)こと」も意味するようになりました。

またその他にも、論語生まれの年齢の異称として「志学」15歳、「而立」30歳、「不惑」40歳、「知命」50歳があります。

「耳順う年」の使い方・例文

孔子や論語というと格式ばっているようにも感じられますが、普段の生活やビジネスシーンでも使えるのが「耳順う年」です。使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.父さん、世間ではもう「耳順う年」って言われる年齢じゃないか!たまには俺の忠告も聞けよ!
2.取引先の社長は、社員の意見も積極的に取り入れているらしい。たしか60歳だったと思うが、まさに「耳順う年」の代表選手のような人だ。

「耳順う年」は「60歳」を指しますが、同時に「周りの意見や自分と異なる考えにも素直に耳を傾ける」姿勢も表します。

例文1は、昔ながらの頑固なお父さんに息子が文句を言っている場面ですね。「耳順う年」と言われる60なんだから、忠告も聞いてくれよ!という意味です。現実には歳をとればとるほど頑なになり、人の話を聞き入れなくなる人も多いもの。誰もが孔子のようにとはいきませんね。

一方、例文2は「耳順う年」の体現者であるような取引先の社長を賛辞している場面です。会社の上層部が社員の意見を取り入れてくれると、若手でもやりがいや働きがいを持つことができますよね。ビジネスシーンでも「耳順う年」が使えるという一例です。

\次のページで「「耳順う年」の類義語は?違いは?」を解説!/

「耳順う年」の類義語は?違いは?

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「耳順う」と同じように60歳をあらわす異称を集めてみました。

その1「杖郷」「杖者」

「杖郷(じょうきょう)」、あるいは「杖者(じょうじゃ)」という言い方があります。いずれも「杖」の字が入っていることからも分かるように、歳をとって歩くのに杖が必要となる年齢だ、ということから「60歳」を指すようになりました。

「杖郷」はやはり儒教の経典の1つである『礼記(らいき)』に記載されている言葉です。

その2「本卦還り」

本卦還り(ほんけがえり)」も60歳を指す慣用句です。「卦」とは昔の占いのことで、古来占いに使われていた「干支(えと)」は60ありました。生まれて60年経つと、生まれたときの干支と同じ干支に還ってくることから、60歳を「本卦還り」というようになったようです。

その3「下寿」

下寿(かじゅ)」という言い方もあります。これは年代・年齢によって長寿を3つに区分した「三寿」のうち、最も若い年代を指す言葉です。三寿は一般的に「上寿(100歳以上)」「中寿(80~100歳)」および「下寿(60~80歳)」とされ、「下寿」が60歳から始まることから同時に「60歳」も意味するようになりました。

「耳順う年」の対義語は?

「60歳」には対義語がありませんが、「年を取って、他人の意見も素直に聞けるようになった」という意味と対義になることわざをご紹介しましょう。

「老い木はまがらぬ」

老い木はまがらぬ」は、歳をとった人の頑固さや強情さを揶揄したことわざです。若木のうちは力を加えれば曲げることもできますが、老木になってしまうともう曲がりません。このことから、直すべきところは若いうちに直しておかないと、歳をとってからではどうしようもなくなるよ、という忠告にも使われます。

「耳順う年」は60歳という年になって、他人の忠告を素直に聞きいれられるという意味でしたから、まさに対義になりますね。

\次のページで「「耳順う年」の英訳は?」を解説!/

「耳順う年」の英訳は?

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英語には取り立てて「60歳」を特別視する文化はありません。したがって「60歳」は「60 years old」です。では「耳順う年」を英語で表現したい場合、どのように言えるのでしょうか。

「at sixty my ear was attuned」

直訳的ですが「at sixty my ear was attuned」という言い回しが使えます。

「at sixty」は「60歳で」、「attuned」は「調子を合わせる、順応する」という意味の英単語です。順応する対象が周りの人の意見だと考えれば、「at sixty my ear was attuned」で「耳順う年」を表現できますね。ただしこれを聞いた相手は「なぜ?」という疑問を持つでしょうから、孔子という著名な人がいたこと、その人がこんな名言を残したということ……、と一通りは英語で説明できるように準備しておいたほうが良さそうです。

「耳順う年」を使いこなそう

この記事では「耳順う年」の意味・使い方・類語などを説明しました。

古代中国時代に孔子が教えたことが、21世紀になった今日の日本語でも生き続けているというのはロマンすら感じさせますね。『論語』は図解表示されたものやマンガなどを使って分かりやすく書かれたものが、書店でも手に入ります。ぜひ手に取ってみてくださいね。

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【故事成語】「耳順う年」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校校舎長がわかりやすく解説!

この記事では「耳順う年」について解説する。

端的に言えば「耳順う年」の意味は「60歳」ですが、由来や幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元大手予備校校舎長で大学入試の国語指導歴が長いライターのみゆなを呼んです。一緒に「耳順う年」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「耳順う年」の意味や語源・使い方まとめ

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「耳順う」と書き、読み方は「みみしたがう」です。どこかで聞いたことがある表現のような気もしますね。それもそのはず、日本人にも馴染み深い、非常に有名な文章の一部を抜き出したものです。「耳順う」のほかにも関連表現がいくつかあり、いずれも日常生活でも使える故事成語になっています。

由来までさかのぼって意味を知ると、理解が深まりますよ!早速「耳順う年」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「耳順う年」の意味は?

「耳順う年」には、次のような意味があります。

60歳。耳順( じじゅん) 。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「耳順う年」

「耳順う年」とは60歳のことです。「耳順う」の部分を抜き出して「耳順」と言ったりもします。

「耳」は、私たちの頭についている「耳」ですね。音や声を聞く器官のことです。また「順う」とは「従う/随う/遵う」とさまざまな感じが充てられますが、いずれも「ついていく、たどる、他からの動きに順応する、応じる、携わる」といった意味になります。ここで使われている「順う」は「順応する」という意味だと押さえましょう。

それにしても「耳」と「順応する」で、どうして「60歳」という意味を表すようになったのでしょうか。それは由来を見てみるとわかりますよ。

「耳順う年」の由来は?

次に「耳順う年」の由来を確認しておきましょう。

「耳順う年」=60歳を意味するようになったのは、孔子の弟子たちが編纂した「論語」の『為政』という章に収められている次の一文に由来します。

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