この記事では「諸手を挙げて」について解説する。

端的に言えば「諸手を挙げて」の意味は「心から歓迎すること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「諸手を挙げて」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「諸手を挙げて」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「諸手(もろて)を挙げて」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「諸手を挙げて」の意味は?

「諸手を挙げて」には、次のような意味があります。

無条件に、また積極的に歓迎する。「―・げて賛成する」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「諸手を挙げて」

この言葉は、「心から喜んで」「無条件で」と言う意味の慣用表現です。「すっかり納得して」などと言っても良いでしょう。

「諸手」とは次の語源の項で説明しますが「両手」のことです。「もろて」という読み方も覚えておきましょう。音読みをして「しょしゅ」とはなりません。

補足ですが「諸」という漢字について。「諸君(しょくん)・諸兄(しょけい)」という言葉で見たことがあるかもしれませんが、これらは主に男性に対して「皆さん」と呼び掛ける言葉で、「多くの」や「もろもろの」という「広い範囲」を意味しています。

今回「諸手」で使われている意味とは少し異なりますが、合わせて覚えてしまいましょう。

「諸手を挙げて」の語源は?

「諸手」とは「両手、両方の手」を意味します。両手・両腕を上に挙げるポーズを想像してみてください。バンザイの恰好ですね。思いっきりバンザイするのはどのような時だろうと考えると、意味もわかってくるはず。

この表現を使う時は、そんな思いっきり喜んでいる場面を選んでください。そのため、「諸手を挙げて悲しむ」のように、マイナス表現が続くことはないのもポイントです。

なお、この言葉は動作を表しているだけのため「諸手を挙げ」て「喜ぶ・歓迎する」など、動作を後ろに続ける必要があることも押さえましょう。

\次のページで「「諸手を挙げて」の使い方・例文」を解説!/

「諸手を挙げて」の使い方・例文

「諸手を挙げて」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・男子ばっかりでむさ苦しかったサークルに、ついに入部希望の女子がやってきて、僕たちは諸手を挙げて歓迎した。

・技術者不足で不具合ばかりだったシステムだったので、問題を解決してくれそうなその計画の提案を、皆は諸手を挙げて受け入れた。

・いつも利用しているサービスの一部機能が無料になることは諸手を挙げて喜びたいが、一方でサービスの質が低下しないか注目する必要がある。

「思いっきり歓迎している」「無条件で」というニュアンスが伝わりますでしょうか。「大歓迎・大賛成」していると言ってもいいかもしれません。対象となる物事が、好意的に捉えられていることがわかる表現です。

逆に言えば、ちょっとした喜びやじんわり嬉しい感じを表現する場合には不適切。たとえば「百円を拾って、諸手を挙げて喜んだ」などと言ったら、ちょっと言い過ぎか、大げさすぎてジョークになってしまうかもしれません。

試験によっては、選択肢から適切な慣用表現を選ばせる問題が出ることもあります。「喜んでいる」という点だけに飛びついて選んだりしてしまわないように、適切な選択肢か、文脈からしっかり判断することが必要です。

「諸手を挙げて」の類義語は?違いは?

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「諸手を挙げて」の類義語は「こぞって」をご紹介します。

「こぞって」

「こぞって」は、「ことごとく、皆が」という意味の副詞です。「こぞってご参加ください」という言い回しを聞いたことはないでしょうか。漢字で書くと「挙って」となり、「諸手をげて」と同じなのもポイントです。

「挙って(挙る)」とは、もともと「人びとを集めて」という意味で使われており、そこから「みんなが」という使われ方をするようになりました。「歓迎・喜ぶ」といった意味合いは含まれないため、「諸手を挙げて」との違いとしても押さえましょう。

ちなみに、もともとは「こぞりて」という言葉が変化したもの。クリスマスに歌う「もろびとこぞりて」の「こぞりて」もこれです。「諸人(もろびと=みんな)が、そろって」という意味なのですね。

\次のページで「「諸手を挙げて」の対義語は?」を解説!/

有名動画配信者が、おすすめランチとして地元の定食屋を紹介したら、大勢がこぞって食べにくるようになってしまい、気軽に行けなくなってしまった。

「諸手を挙げて」の対義語は?

「諸手を挙げて」の対義語は「けんもほろろ」などが考えられます。

「けんもほろろ」

「けんもほろろ」は、「取りつくすべもない様子」「不愛想に他者を拒絶する様」を意味する表現です。「諸手を挙げて」が無条件に受け入れていたのに対し、こちらは完全な拒絶を意味しています。

「つっけんどん」という言葉もあるように、「けん」には「とげとげしさ・不親切さ」を意味することがあり、「けんもほろろ」も動作をする人の冷たさや不親切さが強調される表現です。

彼女はいつも周囲を便利に使っているせいで、本当に困ったときに誰かに助けてもらおうとしたら、けんもほろろに断られていた。

「諸手を挙げて」の英訳は?

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「諸手を挙げて」の英訳は「wholeheartedly」「unconditionally」などがいいでしょう。

「wholeheartedly」「unconditionally」

「wholeheartedly」は「心から」を、「unconditionally」は「無条件に」を意味する副詞です。前者は「whole(全体の)」「heart(ハート、心)」で意味が覚えやすいですね。後者は「conditionally(条件付きで)」に否定形「un」が付いた形です。

どちらも副詞であるため、日本語の「諸手を挙げて」と同じように、後ろに動詞を付ける必要があります。「agree(同意する)」や「accept(受け入れる)」などがセットになることが多いでしょう。文脈から、適切な語句を選べるようにしたいですね。

\次のページで「「諸手を挙げて」を使いこなそう」を解説!/

・I agree about that wholeheartedly.
私はそれについては諸手を挙げて(心から)同意します。

・We decided to accept the proposal unconditionally.
私たちはその提案を諸手を挙げて(無条件で)受け入れることにした。

「諸手を挙げて」を使いこなそう

この記事では「諸手を挙げて」の意味・使い方・類語などを説明しました。あまり聞きなれないかもしれない「諸手」という言葉ではありましたが、意味を知ってその動作を想像するとグッと意味がわかりやすくなったのではないかと思います。

慣用表現にはそのようなパターンが多くありますので、知らない言葉が出てきても恐れずに理解するようにしてみましょう。

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国語言葉の意味

【慣用句】「諸手を挙げて」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説!

この記事では「諸手を挙げて」について解説する。

端的に言えば「諸手を挙げて」の意味は「心から歓迎すること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「諸手を挙げて」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「諸手を挙げて」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「諸手(もろて)を挙げて」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「諸手を挙げて」の意味は?

「諸手を挙げて」には、次のような意味があります。

無条件に、また積極的に歓迎する。「―・げて賛成する」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「諸手を挙げて」

この言葉は、「心から喜んで」「無条件で」と言う意味の慣用表現です。「すっかり納得して」などと言っても良いでしょう。

「諸手」とは次の語源の項で説明しますが「両手」のことです。「もろて」という読み方も覚えておきましょう。音読みをして「しょしゅ」とはなりません。

補足ですが「諸」という漢字について。「諸君(しょくん)・諸兄(しょけい)」という言葉で見たことがあるかもしれませんが、これらは主に男性に対して「皆さん」と呼び掛ける言葉で、「多くの」や「もろもろの」という「広い範囲」を意味しています。

今回「諸手」で使われている意味とは少し異なりますが、合わせて覚えてしまいましょう。

「諸手を挙げて」の語源は?

「諸手」とは「両手、両方の手」を意味します。両手・両腕を上に挙げるポーズを想像してみてください。バンザイの恰好ですね。思いっきりバンザイするのはどのような時だろうと考えると、意味もわかってくるはず。

この表現を使う時は、そんな思いっきり喜んでいる場面を選んでください。そのため、「諸手を挙げて悲しむ」のように、マイナス表現が続くことはないのもポイントです。

なお、この言葉は動作を表しているだけのため「諸手を挙げ」て「喜ぶ・歓迎する」など、動作を後ろに続ける必要があることも押さえましょう。

\次のページで「「諸手を挙げて」の使い方・例文」を解説!/

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