この記事では「五月の鯉の吹き流し」について解説する。

端的に言えば五月の鯉の吹き流しの意味は「こころがさっぱりとしていてわだかまりのないこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

漢検準一級を保有しており言葉に詳しいたきじを呼んです。一緒に「五月の鯉の吹き流し」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/たきじ

国立大学卒、漢検準一級保有のライター。高校時代の得意科目は国語と英語。漢字の意味やことわざ、熟語が好きで、新しい言葉を覚えるのが得意。

「五月の鯉の吹き流し」の意味や語源・使い方まとめ

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「五月の鯉の吹き流し」ということわざをご存知でしょうか。聞いたことがないという方も多いかと思います。ぱっと見ただけではどんな意味なのか想像しにくいですよね。一体どのような意味を持っているのでしょうか。

それでは早速「五月の鯉の吹き流し」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「五月の鯉の吹き流し」の意味は?

「五月の鯉の吹き流し」には、次のような意味があります。

1.心がさっぱりとしていてわだかまりのないこと。
2.口先だけで胆力のないこと。


出典:デジタル大辞泉(小学館)「五月の鯉の吹き流し」

「五月の鯉の吹き流し」の読み方は「さつきのこいのふきながし」です。「吹き流し」は鯉のぼりのことを指しており、鯉のぼりの中は空洞で風が吹き抜けることから口が悪くても中身はさっぱりしていてわだかまりのないことを表します。またそこから転じて口先だけで胆力のないことを表現するときにも用いられることわざです。

「胆力」とは物事を恐れない気力、度胸という意味の言葉で「五月の鯉の吹き流し」で意気地がないことを表しています。

「五月の鯉の吹き流し」の語源は?

次に「五月の鯉の吹き流し」の語源を確認しておきましょう。

このことわざは「江戸っ子は五月の鯉の吹き流し、口先ばかりではらわたは無し」という川柳から生まれました。江戸っ子は口は悪いが悪気は全くなく、単純で淡泊な気質であることを表しています。現在でも江戸っ子気質などと表現されることがありますが、口が悪くても裏表がないという江戸っ子らしい性格をうまく表した言葉です。

\次のページで「「五月の鯉の吹き流し」の使い方・例文」を解説!/

「五月の鯉の吹き流し」の使い方・例文

「五月の鯉の吹き流し」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.健太は気性が荒く言葉遣いも悪いが、とても素直な性格でまさに五月の鯉の吹き流しだ。
2.市長ははっきりとものを言うため時には喧嘩腰になることもあるが、五月の鯉の吹き流しで中身はあっさりしているので住民みんなから人気がある。
3.彼はいつも威勢よく意見を述べるが五月の鯉の吹き流しで気持ちが弱いためいざというとき頼りにならない。

「五月の鯉の吹き流し」は例文のように口は悪いが中身はさっぱりしていること口先だけで胆力がないことを表すときに使います。例文1、2のように中身はさっぱりしていることを強調してプラスの意味で使ったり、例文3のように胆力がないことを強調してマイナスの意味で使ったりと状況に合わせて使い分けることが可能です。

似たような意味でも使い方で印象が変わってしまうので使う場面はしっかりと見定めていきましょう。

「五月の鯉の吹き流し」の類義語は?違いは?

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「五月の鯉の吹き流し」の類義語やその違いについて見ていきましょう。

その1「江戸っ子は五月の鯉で口ばかり」

「江戸っ子は五月の鯉で口ばかり」(えどっこはさつきのこいでくちばかり)とは「五月の鯉の吹き流し」と同様、口が悪くても中身がさっぱりしていることや口先だけで胆力がないことを表すことわざです。読んでわかるように「五月の鯉の吹き流し」と意味や使い方が一緒なのでどちらを使ってもいいでしょう。

ただ「江戸っ子は五月の鯉で口ばかり」の方が、「口ばかり」という言葉で終わっていることで口先だけで胆力がないという意味合いが強くなってしまうので使いどころには十分注意しましょう。

その2「江戸っ子は宵越しの銭は持たぬ」

「江戸っ子は宵越しの銭は持たぬ」(えどっこはよいごしのぜにはもたぬ)江戸っ子は金をためることを良しとせず、得た金はその日のうちに使うという気前の良さをいったことわざです。こちらは日常でも耳にすることがあることわざではないでしょうか。

一見違う意味に感じますが、江戸っ子はお金をためずにすぐ使ってしまうという気前の良さを表したことわざで、中身がさっぱりしていることをいった「五月の鯉の吹き流し」と意味合いが近いため類義語としてふさわしいでしょう。

「五月の鯉の吹き流し」の対義語は?

次に「五月の鯉の吹き流し」の対義語について見ていきましょう。

その1「豪胆無比」

「豪胆無比」(ごうたんむひ)他と比べられないほどに度胸があり、思い切った行動をするようすを表す四字熟語です。「豪胆」は何事にも動じない度胸があること、「無比」は比べられるものが存在しないことをそれぞれ表しているため、口先だけで胆力がないという意味の「五月の鯉の吹き流し」の対義語としてふさわしいと言えます。

その2「大胆不敵」

「大胆不敵」(だんたんふてき)度胸がすわっており全く恐れないことを表す四字熟語です。「大胆」は度胸があって気後れしないさま、「不敵」は恐れを知らず敵を敵とも思わないことをそれぞれ表しており、「豪胆無比」とも近い意味の言葉になります。

こちらも胆力がないという意味の「五月の鯉の吹き流し」の対義語としてふさわしいと言えるでしょう。

「五月の鯉の吹き流し」の英訳は?

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最後に「五月の鯉の吹き流し」を英語でどのように表現するのか見ていきましょう。

その1「not two-faced」

two-facedは日本語で裏表があることを表しており、notをつけることにより裏表がなく、さっぱりしているという意味になります。

\次のページで「その2「just saying that」」を解説!/

その2「just saying that」

just saying that は直訳すると「言っているだけ」となるため意訳して「口先だけ」という意味を表すことができます。

「五月の鯉の吹き流し」を使いこなそう

この記事では「五月の鯉の吹き流し」の意味・使い方・類語などを説明しました。簡単に復習しておきましょう。「五月の鯉の吹き流し」とは口は悪いが中身はさっぱりしていることや口先だけで胆力がないことを表したことわざです。類義語では「江戸っ子は五月の鯉で口ばかり」江戸っ子は宵越しの銭は持たぬ」を紹介しました。

江戸っ子気質という言葉をよく耳にしますが、さっぱりしていて人情に熱い人柄が思い浮かんできます。私自身物静かであまり前に出ない性格なので、こういった江戸っ子気質に憧れることがあるんですよね。「五月の鯉の吹き流し」はプラスマイナスどちらの意味でも使うことができるため、江戸っ子気質がいいとは一概に言えませんが、自分にないものは欲しくなってしまうものです。

使いどころに注意は必要ですが、「五月の鯉の吹き流し」はことわざ由来の言葉で文学的な印象を持てるためぜひ使ってみてください。この記事がみなさんの参考になれば幸いです。

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【ことわざ】「五月の鯉の吹き流し」の意味や使い方は?例文や類語を漢検準一級ライターがわかりやすく解説!

この記事では「五月の鯉の吹き流し」について解説する。

端的に言えば五月の鯉の吹き流しの意味は「こころがさっぱりとしていてわだかまりのないこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

漢検準一級を保有しており言葉に詳しいたきじを呼んです。一緒に「五月の鯉の吹き流し」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/たきじ

国立大学卒、漢検準一級保有のライター。高校時代の得意科目は国語と英語。漢字の意味やことわざ、熟語が好きで、新しい言葉を覚えるのが得意。

「五月の鯉の吹き流し」の意味や語源・使い方まとめ

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「五月の鯉の吹き流し」ということわざをご存知でしょうか。聞いたことがないという方も多いかと思います。ぱっと見ただけではどんな意味なのか想像しにくいですよね。一体どのような意味を持っているのでしょうか。

それでは早速「五月の鯉の吹き流し」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「五月の鯉の吹き流し」の意味は?

「五月の鯉の吹き流し」には、次のような意味があります。

1.心がさっぱりとしていてわだかまりのないこと。
2.口先だけで胆力のないこと。


出典:デジタル大辞泉(小学館)「五月の鯉の吹き流し」

「五月の鯉の吹き流し」の読み方は「さつきのこいのふきながし」です。「吹き流し」は鯉のぼりのことを指しており、鯉のぼりの中は空洞で風が吹き抜けることから口が悪くても中身はさっぱりしていてわだかまりのないことを表します。またそこから転じて口先だけで胆力のないことを表現するときにも用いられることわざです。

「胆力」とは物事を恐れない気力、度胸という意味の言葉で「五月の鯉の吹き流し」で意気地がないことを表しています。

「五月の鯉の吹き流し」の語源は?

次に「五月の鯉の吹き流し」の語源を確認しておきましょう。

このことわざは「江戸っ子は五月の鯉の吹き流し、口先ばかりではらわたは無し」という川柳から生まれました。江戸っ子は口は悪いが悪気は全くなく、単純で淡泊な気質であることを表しています。現在でも江戸っ子気質などと表現されることがありますが、口が悪くても裏表がないという江戸っ子らしい性格をうまく表した言葉です。

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