今回は「柔組織」というキーワードについて学習していこう。

柔組織は、植物の組織と動物の組織、両方に関連している用語です。一般的には植物の柔細胞について語られることが多いので、そちらを中心に学んでいきたいと思う。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

柔組織とは?

「”柔”らかい”組織”」と書く柔組織(じゅうそしき)。この用語は、動物について使われるか、植物について使われるかによって、その意味あいが異なってきます。

ふつうは植物についての柔組織が取り上げられることが多いですね。

そもそも組織とは?

先に、組織という用語について確認しておきましょう。

生物学において組織とは、同じような機能・形状をした細胞が集まったまとまりを指します。

皆さんご存じの通り、生物の最小単位は”細胞”です。生物である限り、そのからだは多かれ少なかれ、細胞が集まってできています。

たった一つの細胞で生きていく単細胞生物もいますが、私たちがイメージする多くの”生き物”は、複数の細胞からなる多細胞生物でしょう。

image by iStockphoto

多細胞生物では、細胞がさまざまな機能や形に分化し、からだの各部分に分布して役割を果たしています。

前述の通り、同じような機能・形状をした細胞の集まりが組織。組織は集まって器官を構成し、複数の器官は集まって器官系と呼ばれます。

そして、器官系の集まりが1つの個体を形成しているのです。

植物の”柔組織”

それでは、具体的に植物の柔組織について解説していきましょう。植物の柔組織は、柔細胞(じゅうさいぼう)とよばれる細胞からなる組織を指します。

では、柔細胞とはどんな細胞なのか?これも名前の通りなのですが、植物の細胞の中でも”柔らかい”細胞です。

植物細胞にみられる大きな特徴の一つに細胞壁がありますよね。柔細胞の細胞壁は比較的薄く、木質化(もくしつか)されていないため、他と比べたら”柔らかい”と表現されるのです。

木質化というのは、細胞壁の壁にリグニンという成分が沈着し、より強度が増す現象をいいます。樹木の幹や枝は、木質化した細胞からなるのです。

その通りです。詳しくは細胞壁について解説した記事をご覧いただきたいと思いますが、柔細胞は基本的に一次細胞壁とよばれる、薄い細胞壁からなっています。

さて、この植物の柔組織ですが、柔細胞の存在する場所や機能によって、柔組織を大きく2種類に大別することができるんです。2種類とは、「同化組織」と「貯蔵組織」になります。

同化組織

同化組織(どうかそしき)は、葉緑体を多く含み、光合成や呼吸を活発に行う柔細胞からなる組織です。

植物の中でもとくに盛んに光合成をおこなう器官といえば、ですよね。葉の断面図を見ると、表皮よりも内側に、葉緑体を多量に含んだ細胞があることがわかるでしょう。細胞の形や並び方によって、さらにさく状組織海綿状組織に分けられています。

Fine scale diagram of leaf structure
By Zephyris - Own work, CC BY-SA 3.0, Link

さく状組織は、細長い円柱のような形をした細胞(さく状柔細胞)がきれいに整列して並んでいます。一般的に、葉の表側にみられる組織です。

海綿状組織は、さまざまな形の細胞(海綿状柔細胞)がランダムに並び、細胞間には間隙が存在するような組織。こちらは葉の裏側にみられることが多いですね。

ちなみに、葉においてさく状組織と海綿状組織を合わせた部分は、まとめて葉肉とよばれます。

\次のページで「貯蔵組織」を解説!/

貯蔵組織

貯蔵組織(ちょぞうそしき)は、デンプンやタンパク質、脂肪などの養分を蓄える細胞からなる組織を指します。

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多くの植物では、皮層とよばれる部分に、この貯蔵組織が形成されます。

髄は、茎や根の中心部分。その外側は木部や師部に囲まれています。皮層というのは、表皮と維管束組織の間に位置し、主に柔組織でできている部分です。

また、成長して樹木になるような木本植物では、維管束の木部にある柔組織が主な貯蔵組織となります。

いえいえ!むしろ、植物によってはそれ以上に発達・特殊化した貯蔵組織をもっていることが良くあるんです。

たとえば、普段の食卓に上がることの多い野菜であるジャガイモ。これは、地下茎が極端に発達・肥大してできたもので、塊茎(かいけい)とよばれます。塊茎は、主に貯蔵組織からできた、特別な構造物の一つなんです。

その通りです。塊根の代表といえばサツマイモですね。ジャガイモもサツマイモもたくさんのデンプンをふくみ、ほくほくとした食感で知られていますが、それも「デンプンを貯蔵した柔細胞からなる貯蔵組織だから」と説明することができるでしょう。

image by iStockphoto

他にも、果肉や、種子の内部で発芽のための養分を蓄えている胚乳などが、主に貯蔵組織からなる部分です。

\次のページで「”柔組織”と”基本組織系”」を解説!/

image by Study-Z編集部

”柔組織”と”基本組織系”

さて、植物の柔組織について調べていると、”基本組織系”という単語に行き当たることがあります。

基本組織系とは、『維管束植物のからだのうち、表皮と維管束以外の組織をまとめたもの』をさす言葉です。

植物学の世界では昔から、植物のからだを「表皮系」「維管束系」「基本組織系」の3つに分けて考えることが伝統的になされてきたんですよ。

この分け方ですと、今回ご紹介した柔細胞からなる柔組織は、基本組織系に含まれることになります。

うーん、それも少し違います。基本組織系には、柔組織以外にも厚角組織や厚壁組織といった、別の組織も存在しているんです。

とはいえ、基本組織系のメインとなるのは柔組織なので、資料によってはほぼ同じような扱い方になっているかもしれません。

動物の”柔組織”は?

では最後に、”柔組織”という単語を動物について使うときの意味も少し確認しておきましょう。

動物における柔組織とは、腎臓や肝臓、肺などの器官でその内部を占め、各器官の主要な役割を果たすための機能をもった部分を指します。

例えば、腎臓という器官は、主に尿の生成や体液濃度の調節を行う役割がありますよね。この場合、腎臓の内部を多く締め、尿生成に重要な役割を果たしているネフロンが、腎臓における柔組織ということができるのです。

ほかの”組織”についても学習してみよう!

今回は主に植物の柔組織について紹介していきました。植物のからだのつくりは中学校の理科でも学習する分野ですが、柔組織などといった組織の種類については、高校に入ってから習うと思います。動物の体とは大きく異なるため、組織の名前や細胞の種類を覚えるのは大変ですが、様々な組織について知っていくと、植物のからだが理解しやすくなっていくはずです。ぜひ、他の組織について調べてみてくださいね。

" /> 「柔組織」ってどこ?細胞壁と関係や植物と動物の違いは?現役講師が簡単わかりやすく解説! – Study-Z
体の仕組み・器官理科生物

「柔組織」ってどこ?細胞壁と関係や植物と動物の違いは?現役講師が簡単わかりやすく解説!

今回は「柔組織」というキーワードについて学習していこう。

柔組織は、植物の組織と動物の組織、両方に関連している用語です。一般的には植物の柔細胞について語られることが多いので、そちらを中心に学んでいきたいと思う。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

柔組織とは?

「”柔”らかい”組織”」と書く柔組織(じゅうそしき)。この用語は、動物について使われるか、植物について使われるかによって、その意味あいが異なってきます。

ふつうは植物についての柔組織が取り上げられることが多いですね。

そもそも組織とは?

先に、組織という用語について確認しておきましょう。

生物学において組織とは、同じような機能・形状をした細胞が集まったまとまりを指します。

皆さんご存じの通り、生物の最小単位は”細胞”です。生物である限り、そのからだは多かれ少なかれ、細胞が集まってできています。

たった一つの細胞で生きていく単細胞生物もいますが、私たちがイメージする多くの”生き物”は、複数の細胞からなる多細胞生物でしょう。

image by iStockphoto

多細胞生物では、細胞がさまざまな機能や形に分化し、からだの各部分に分布して役割を果たしています。

前述の通り、同じような機能・形状をした細胞の集まりが組織。組織は集まって器官を構成し、複数の器官は集まって器官系と呼ばれます。

そして、器官系の集まりが1つの個体を形成しているのです。

植物の”柔組織”

それでは、具体的に植物の柔組織について解説していきましょう。植物の柔組織は、柔細胞(じゅうさいぼう)とよばれる細胞からなる組織を指します。

では、柔細胞とはどんな細胞なのか?これも名前の通りなのですが、植物の細胞の中でも”柔らかい”細胞です。

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