この記事では「弓折れ矢尽きる」について解説する。

端的に言えば弓折れ矢尽きるの意味は「力も手段も尽きてどうにもならない」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

語学好きで歴史好き、名古屋出身で6年間のライター経験を持つeastflowerを呼んです。一緒に「弓折れ矢尽きる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/eastflower

今回の記事を担当するのは語学好きで英語、中国語が得意な6年目のライター、eastflower。「弓折れ矢尽きる」の言葉の起源やどんな場面で使えるのかをわかりやすく解説していく。

「弓折れ矢尽きる」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「弓折れ矢尽きる」(ゆみおれやつきる)の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「弓折れ矢尽きる」の意味は?

まずは、「弓折れ矢尽きる」の国語辞典の意味を見ていきましょう。

1. 戦いにさんざんに負けることのたとえ。また、力も手段も尽きてどうしようもなくなることのたとえ。

出典: 日本国語大辞典(精選版)「弓折れ矢尽きる」

戦国時代には、戦いで敗れることがはっきりした後でも、矢を射(い)続け、弓が折れるまで戦い続けどうしようもなくなると、相手の大群を目指して腰の刀を振り上げて切り込んで最後を迎える武士もいたようです。
「弓折れ矢尽きる」とは、まさに勇ましい武士を思い起こさせる慣用句でもありますね。

「弓折れ矢尽きる」の語源は?

次に「弓折れ矢尽きる」の語源を確認しておきましょう。
戦国時代のドラマを見ていると「弓折れ矢尽きるまで戦う」という台詞(せりふ)はしばしば登場しますが、「弓折れ矢尽きる」(ゆみおれやつきる)は元々、中国の将軍によって発せられた言葉に由来するものだと言われています。

時は、10世紀の半ばのこと後晋(こうしん)の将軍、沈斌(ちんひん)は北の異民から攻められ城門も突破され落城は誰の目にも明らかでした。この状態に至り、敵方の将軍は、沈斌に降伏を勧めてきましたが、沈斌はキッパリ断り、こう言ったそうです。
「弓が折れ矢も射尽くしてしまったら国のために死ぬのみだ」と。
そして、翌日、城は落ち、沈斌は言葉どおり自害して果てたと中国の歴史書には記載されています。

\次のページで「「弓折れ矢尽きる」の使い方・例文」を解説!/

「弓折れ矢尽きる」の使い方・例文

「弓折れ矢尽きる」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1. 「やれることはすべてやったんだ。銀行に追加融資もお願いし協会にも相談にのってもらった。ことわざにある「弓折れ矢尽きる」という感じだ。来月からは、正式に大型ホテルチェーンに統合され経営も変わるが、これまで通り、あるいはこれまで以上に仕事を愛し、みんなにはこのホテルを盛り上げていって欲しいんだ。」

2.「いままでありがとう。みんなに励まされてこれまで闘病を続けてきたが正直なところ疲れてしまってこれ以上耐えられないという気持ちなんだ。まさに「弓折れ矢尽きる」というところかな。これからは、積極的な医療を受けず、施設で静かに余生を過ごそうと思うので理解してもらえないだろうか?」

「弓折れ矢尽きる」は、やるべきことはすべて試みた上で、あとは、運命として受け入れなければならないという考えに至った状況のことですね。

「弓折れ矢尽きる」の類義語は?違いは?

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それでは、「弓折れ矢尽きる」の類義語を見ていきましょう。

「万策尽きる」

「弓折れ矢尽きる」とは、「力尽き、他のとりうる手段もなくどうしようもない状態のこと」ですが、これと同じような意味を含む言葉に「万策尽きる」(ばんさくつきる)があります。

「万策尽きる」の「万策」とは漢字のまま理解すると「一万もの方策・手段のこと」になりますが、「できる限りの全ての手段や方策」という意味で使われていますね。「万策尽きる」は「全ての手段を試みたものの他に解決する方策がない」という意味で、「弓折れ矢尽きる」とほとんど同じ意味なのです。ただ、「弓折れ矢尽きる」と言うと、どうしても「ヘトヘトになっている武者」が最初に頭に浮かびやすいので、「万策尽きる」の方が多くの場面で使えるかもしれないですね。

\次のページで「「弓折れ矢尽きる」の対義語は?」を解説!/

「弓折れ矢尽きる」の対義語は?

次に「弓折れ矢尽きる」の対義語を見ていきましょう。

「起死回生」

「弓折れ矢尽きる」が「やれることはすべてやり尽くしてもうだめだと諦めざるを得ない状況」であるのに対して、反対語にあたるのは、「そんな瀕死(ひんし)の状態でありながらも蘇(よみがえ)り、良い方向に転換する」ことですよね。

そんな意味を含む言葉に「起死回生」(きしかいせい)という四字熟語があります。「起死回生」の「起死」(きし)とは、「死にそうな病人を蘇生させ、生き返らせること」「回生」(かいせい)の方も「よみがえり、生きかえること」を意味する言葉です。同じ意味の言葉を違った表現で繰り返す四字熟語や中国の成語はよくでてきますよね。野球の試合などでは、敗北の流れが濃厚な雰囲気の中で、逆転ホームランがでたときなど、「起死回生の一発がでました」などと表現されることがあります。

「弓折れ矢尽きる」の英訳は?

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それでは、「弓折れ矢尽きる」の英訳をみていきましょう。

「exhaust all the options」

「弓折れ矢尽きる」を直訳すると「Bow breaks」(弓が壊れて)、「arrows run out」(矢がなくなってしまう)、「Bow breaks and arrows run out」となります。このように表現しても雰囲気として相手に意図が伝わるかもしれませんが、やはり表現としてはあいまいなため、別の表現をご紹介しましょう。

「弓折れ矢尽きる」は「すべての手段や選択肢をやりつくし他にとりうる手段がない状態のこと」ですから、動詞としては、「使いつくす」の意味を持つexhaust(ɪgzˈɔːs)を持ってくると意図を伝えやすくなります。目的語としては、「すべての手段や選択肢」に合う表現「all the options」(ˈɔːl ðə ˈɑpʃʌnz)が候補のひとつになるでしょう。全体で、「exhaust all the options」、「すべてのやれることはやりつくした」と言ってみたらスッキリと通じると思います。

「弓折れ矢尽きる」を使いこなそう

この記事では「弓折れ矢尽きる」の意味や使い方を見てきました。「弓折れ矢尽きる」は、「力も手段も尽きてどうにもならない様子」のことでしたね。人生には、しばしば「力いっぱいやったのに報われない」こともありますね。自分には問題がないことでも、周りの環境から危機に追い込まれることもあります。

では、そんなときはどうすれば良いのでしょうか?
ひとつは、「目の前の危機を緩和できるように落ち着いてベストを尽くすこと」、「周りの人の意見を素直に聞くこと」、「体や心がへとへとのときは、きちんと休み、ゆっくりと歩きはじめ過去のことは考えないようにすること」くらいかもしれませんね。「捨てる神あれば拾う神あり」(すてるかみあればひろうかみあり)ということわざがありますが、自分を非難する人が圧倒的に多くても、案外、助けてくれる人がいる場合もありますよ。

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国語言葉の意味

【慣用句】「弓折れ矢尽きる」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「弓折れ矢尽きる」について解説する。

端的に言えば弓折れ矢尽きるの意味は「力も手段も尽きてどうにもならない」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

語学好きで歴史好き、名古屋出身で6年間のライター経験を持つeastflowerを呼んです。一緒に「弓折れ矢尽きる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/eastflower

今回の記事を担当するのは語学好きで英語、中国語が得意な6年目のライター、eastflower。「弓折れ矢尽きる」の言葉の起源やどんな場面で使えるのかをわかりやすく解説していく。

「弓折れ矢尽きる」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「弓折れ矢尽きる」(ゆみおれやつきる)の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「弓折れ矢尽きる」の意味は?

まずは、「弓折れ矢尽きる」の国語辞典の意味を見ていきましょう。

1. 戦いにさんざんに負けることのたとえ。また、力も手段も尽きてどうしようもなくなることのたとえ。

出典: 日本国語大辞典(精選版)「弓折れ矢尽きる」

戦国時代には、戦いで敗れることがはっきりした後でも、矢を射(い)続け、弓が折れるまで戦い続けどうしようもなくなると、相手の大群を目指して腰の刀を振り上げて切り込んで最後を迎える武士もいたようです。
「弓折れ矢尽きる」とは、まさに勇ましい武士を思い起こさせる慣用句でもありますね。

「弓折れ矢尽きる」の語源は?

次に「弓折れ矢尽きる」の語源を確認しておきましょう。
戦国時代のドラマを見ていると「弓折れ矢尽きるまで戦う」という台詞(せりふ)はしばしば登場しますが、「弓折れ矢尽きる」(ゆみおれやつきる)は元々、中国の将軍によって発せられた言葉に由来するものだと言われています。

時は、10世紀の半ばのこと後晋(こうしん)の将軍、沈斌(ちんひん)は北の異民から攻められ城門も突破され落城は誰の目にも明らかでした。この状態に至り、敵方の将軍は、沈斌に降伏を勧めてきましたが、沈斌はキッパリ断り、こう言ったそうです。
「弓が折れ矢も射尽くしてしまったら国のために死ぬのみだ」と。
そして、翌日、城は落ち、沈斌は言葉どおり自害して果てたと中国の歴史書には記載されています。

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