「枯れ木に花」と聞くと、昔話の「花咲か爺さん」を連想する人も多いでしょう。「枯れ木に花を咲かせましょう!」と言いながら、灰を撒き、枯れた桜を満開にするシーンは有名です。

しかし「枯れ木に花」が、そんな奇跡を表す言葉でもありつつ、全部で3つの意味を持つことは、あまり知られていない。実は様々な場面で使えることわざなんです。

今回は大学で日本語や日本文学について学び、塾講師時代には国語の指導に力を注いでいたというカワナミを呼んです。一緒に詳しく解説していきます。

ライター/カワナミ

大学で日本語と日本文学について学び、言葉の楽しさを伝えたい!と、塾講師時代には国語の授業に力を入れていた。言葉を知ると世界が広がると、本気で信じている。

「枯れ木に花」の意味・語源まとめ

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「枯れ木に花」の意味と語源について見ていきましょう。

「枯れ木に花」の意味は「衰えたものが再び栄えること」

「枯れ木に花」を辞書で調べると、次のように記されています。

いったん衰えたものが再び栄えることのたとえ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「枯れ木に花」

更に細かく意味を見ていくために、同じ意味の「枯れ木に花咲く」も調べてみました。

① 衰えはてたものが再び栄える時を迎えることのたとえ。こぼくに花咲く。枯れたる木にも花咲く。
※玉塵抄(1563)五二「槁木生レ花発二大機一啓二大用一、〈略〉かれ木に花のさいたことぞ」
② 望んでも不可能なことのたとえ。転じて、本来、不可能と思われることが不思議の力によって実現することのたとえにいう。枯れたる木にも花咲く。
③ (「文選‐七」にある曹植の文「弁言之艷、使二窮沢生一レ流、枯木発レ栄」によるか) 実際とは違った嘘やつくりごとを話して、もっともらしく他人をだますこと。
※雑俳・蝉の下(1751)「仲人の口は枯木にも花」

出典:精選版 日本国語大辞典(小学館)「枯木に花咲く」

「枯れ木に花」の意味は、端的に言うと「衰え果てたものが再び栄えることのたとえ」です。まさしく、すっかり枯れてしまった木に再び花が咲くように、誰もがもう無理だと諦めるような状況や物事が再び勢いを取り戻すことを表します。

また、そういった奇跡のようなことは「望んでも不可能なこと」を例える場合にも用いられ、転じて「不思議の力によって実現すること」「奇跡」といった内容で使うことも可能です。「花咲か爺さん」のお話では、1と2の両方の意味で使われていると考えられますね。

さらには「嘘や作り事、お世辞などで取り繕うこと」という意味も持っています。何もない枯れ木を作り物の花で飾り立てるというイメージです。

「枯れ木に花」の語源は「枯れ木に花が咲くような奇跡」

「枯れ木に花」の語源は、言葉の通り「枯れた木に花が咲くこと」にあります。枯れ木とは、すでに生気を失い、命を終えた木のこと。そこに突然、花が咲くのですから魔法や神通力といった不思議の力が働いていても、おかしくないとすら錯覚してしまいます。

それもそのはず。実は「枯れ木に花」には、すべてのものを救うという千手観音信仰といった仏教の思想が含まれています。千手観音の力は、枯れた木にすら花を咲かせるのです。平安時代末期の歌謡集である「梁塵秘抄」(りょうじんひしょう)の中にも、千手観音信仰が歌われており、「枯れ木に花」に当たる「枯れたる草木もたちまちに花咲き実なる」という表現が確認できます。とても古くから存在する言葉です。

「枯れ木に花」は「花咲か爺さん」から生まれた言葉ではない

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「枯れ木に花」といえば、多くの人が連想するのは昔話の「花咲か爺さん」でしょう。広く知られている話だけに、「枯れ木に花」は「花咲か爺さん」が元になっている言葉ではないかと考えがちですが、これはちがいます

「花咲か爺さん」江戸時代の赤本(子供向けに作られた絵本のようなもの)に掲載され民間に普及した物語です。「枯れ木に花」の考え方は、すでに平安時代には広まっていたことから、「花咲か爺さん」のほうが後ということになります。反対に、「枯れ木に花」の思想が元になって「花咲か爺さん」の話が作られたということが想像できますね。

\次のページで「「枯れ木に花」の使い方・例文」を解説!/

「枯れ木に花」の使い方・例文

例文を元に「枯れ木に花」の使い方を見ていきましょう。

1.シャッター街と化していた地元の商店街が、青年会の努力によって枯れ木に花を咲かせるように賑わいを取り戻した。
2.足の怪我から、もう選手としての復帰は見込めないと思われていたが、彼は今、フルマラソンを走り切った。まるで枯れ木に花のような復活劇だ。
3.あの人の褒め言葉は枯れ木に花だとわかっているのに、悪い気はしないから、つい頼み事を引き受けてしまう。

ここでは、「枯れ木に花」の3つの意味にそれぞれ合わせた例文を用意しました。
例文1は「衰えたものが再び栄えること」という意味で、商店街の活気が再び戻ってくること「枯れ木に花」で表現しています。
例文2の「枯れ木に花」が表すのは、怪我からの復帰です。これは「奇跡」という意味に当たりますね。
そして例文3では、「嘘や作り事、お世辞で取り繕う」という意味で「枯れ木に花」を使用しています。この例文の主は、お世辞だと分かっているのに、褒められると頼み事が断れないようです。

「枯れ木に花」の類義語は?

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「枯れ木に花」と同じ意味を持つ言葉をご紹介します。

「炒り豆に花が咲く」:あり得ないこと

「炒り豆に花が咲く」は、「あり得ないこと」という意味の言葉です。炒めた豆から花が咲くなんて、どう考えてもあり得ないですよね。転じて、「衰えたものが再び勢いを持つこと」という意味でも使われます。意味も使い方も「枯れ木に花」とよく似ている言葉です。

「石に花咲く」:現実には起こり得ないこと

「石に花咲く」も「炒り豆に花が咲く」と同じく「現実には起こり得ないこと」という意味の言葉です。「岩に花咲く」とも言います。石や岩に花が咲くことは、そうあり得ることではありません。そのため、「現実には起こり得ないこと」のたとえとして使われる言葉の一つになっています。

\次のページで「「老い木に花咲く」:衰えたものがもう一度栄えること」を解説!/

「老い木に花咲く」:衰えたものがもう一度栄えること

「老い木に花咲く」は老いた木に花が咲くように、「一度衰えたものが再び栄えること」という意味のことわざです。「老い木に花」とも言います。「枯れ木」よりも「老い木」の方が、盛り返す可能性は高いので、「奇跡」というニュアンスでは、あまり使われません

「枯れ木に花」の対義語は?

「枯れ木に花」の対義語はありません。「枯れ木に花」は多様な意味を持っているため、ぴったりと反対の意味を示す言葉を探すのは難しいでしょう。

「枯れ木に花」と間違いやすい「枯れ木にも山の賑わい」

「枯れ木も山の賑わい」は、「枯れ木に花」とは意味の異なる表現です。「枯れ木」というキーワードから類義語として間違いやすいので注意しましょう。

「枯れ木も山の賑わい」は、「つまらないものでも、ないよりはまし」という意味です。たとえ枯れ木であっても、山に趣を添えるのに、多少は役に立つことに由来します。最近では「集まれば賑やかになる」という意味で認識する人が増えていますが、こちらの意味は誤りです。

「枯れ木も山の賑わいですから、ぜひ家に来てください」と言うと、「いないよりはましですから、家に来てください」という失礼な意味になってしまいます。本来は謙遜して自分自身に向けて使う言葉です。

「枯れ木に花」の英訳は「make a dead tree blossom」

「make a dead tree blossom」「枯れ木に花を咲かせる」という意味になります。「AにBさせる」という使役の形の「make A B」を用いた表現です。「dead tree」は「枯れ木」「blossom」は「咲く」をそれぞれ指しています。

「枯れ木に花」に隠れた仏教文化

今回は「枯れ木に花」の意味や語源・使い方・類義語などについて解説しました。

「衰えたものが再び栄えること」、「奇跡」といった意味は、文字通り枯れ木に花が咲く姿を想像すると理解が簡単です。しかしもう一つ、「嘘や作り事で取り繕う」という意味を持ち合わせていることも、ぜひ覚えておきましょう。

イメージのしやすさから、「花咲か爺さん」が元になって生まれた言葉だと思いがちな「枯れ木に花」ですが、その語源をたどっていくと仏教文化に繋がっていました。かつては国の権力者が仏教を重んじていたことから、日本語には仏教の思想を元にした言葉がたくさんあります。日本語を掘り下げることは、歴史を掘り下げることにもなりますね。

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国語言葉の意味

「枯れ木に花」の意味は3つ!語源は花咲か爺さんじゃない!使い方や類義語と共に元塾講師ライターがわかりやすく解説!

「枯れ木に花」と聞くと、昔話の「花咲か爺さん」を連想する人も多いでしょう。「枯れ木に花を咲かせましょう!」と言いながら、灰を撒き、枯れた桜を満開にするシーンは有名です。

しかし「枯れ木に花」が、そんな奇跡を表す言葉でもありつつ、全部で3つの意味を持つことは、あまり知られていない。実は様々な場面で使えることわざなんです。

今回は大学で日本語や日本文学について学び、塾講師時代には国語の指導に力を注いでいたというカワナミを呼んです。一緒に詳しく解説していきます。

ライター/カワナミ

大学で日本語と日本文学について学び、言葉の楽しさを伝えたい!と、塾講師時代には国語の授業に力を入れていた。言葉を知ると世界が広がると、本気で信じている。

「枯れ木に花」の意味・語源まとめ

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「枯れ木に花」の意味と語源について見ていきましょう。

「枯れ木に花」の意味は「衰えたものが再び栄えること」

「枯れ木に花」を辞書で調べると、次のように記されています。

いったん衰えたものが再び栄えることのたとえ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「枯れ木に花」

更に細かく意味を見ていくために、同じ意味の「枯れ木に花咲く」も調べてみました。

① 衰えはてたものが再び栄える時を迎えることのたとえ。こぼくに花咲く。枯れたる木にも花咲く。
※玉塵抄(1563)五二「槁木生レ花発二大機一啓二大用一、〈略〉かれ木に花のさいたことぞ」
② 望んでも不可能なことのたとえ。転じて、本来、不可能と思われることが不思議の力によって実現することのたとえにいう。枯れたる木にも花咲く。
③ (「文選‐七」にある曹植の文「弁言之艷、使二窮沢生一レ流、枯木発レ栄」によるか) 実際とは違った嘘やつくりごとを話して、もっともらしく他人をだますこと。
※雑俳・蝉の下(1751)「仲人の口は枯木にも花」

出典:精選版 日本国語大辞典(小学館)「枯木に花咲く」

「枯れ木に花」の意味は、端的に言うと「衰え果てたものが再び栄えることのたとえ」です。まさしく、すっかり枯れてしまった木に再び花が咲くように、誰もがもう無理だと諦めるような状況や物事が再び勢いを取り戻すことを表します。

また、そういった奇跡のようなことは「望んでも不可能なこと」を例える場合にも用いられ、転じて「不思議の力によって実現すること」「奇跡」といった内容で使うことも可能です。「花咲か爺さん」のお話では、1と2の両方の意味で使われていると考えられますね。

さらには「嘘や作り事、お世辞などで取り繕うこと」という意味も持っています。何もない枯れ木を作り物の花で飾り立てるというイメージです。

「枯れ木に花」の語源は「枯れ木に花が咲くような奇跡」

「枯れ木に花」の語源は、言葉の通り「枯れた木に花が咲くこと」にあります。枯れ木とは、すでに生気を失い、命を終えた木のこと。そこに突然、花が咲くのですから魔法や神通力といった不思議の力が働いていても、おかしくないとすら錯覚してしまいます。

それもそのはず。実は「枯れ木に花」には、すべてのものを救うという千手観音信仰といった仏教の思想が含まれています。千手観音の力は、枯れた木にすら花を咲かせるのです。平安時代末期の歌謡集である「梁塵秘抄」(りょうじんひしょう)の中にも、千手観音信仰が歌われており、「枯れ木に花」に当たる「枯れたる草木もたちまちに花咲き実なる」という表現が確認できます。とても古くから存在する言葉です。

「枯れ木に花」は「花咲か爺さん」から生まれた言葉ではない

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「枯れ木に花」といえば、多くの人が連想するのは昔話の「花咲か爺さん」でしょう。広く知られている話だけに、「枯れ木に花」は「花咲か爺さん」が元になっている言葉ではないかと考えがちですが、これはちがいます

「花咲か爺さん」江戸時代の赤本(子供向けに作られた絵本のようなもの)に掲載され民間に普及した物語です。「枯れ木に花」の考え方は、すでに平安時代には広まっていたことから、「花咲か爺さん」のほうが後ということになります。反対に、「枯れ木に花」の思想が元になって「花咲か爺さん」の話が作られたということが想像できますね。

\次のページで「「枯れ木に花」の使い方・例文」を解説!/

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