この記事では「毒を食らわば皿まで」について解説する。

端的に言えば「毒を食らわば皿まで」の意味は「一度手を汚したから徹底的に罪を重ねる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

高校で国語教師をしていた経歴を持つ、現役ライターのhiyoriを呼んです。一緒に「毒を食らわば皿まで」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/hiyori

大学で近現代日本文学を専攻し、その知識を生かして国語教師として教壇に立っていた経歴を持つ。現在はライターとして様々な情報を発信している。難しい言葉もわかりやすい説明で解説していく。

「毒を食らわば皿まで」の意味や語源・使い方まとめ

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みなさんは「毒を食らわば皿まで」という言葉を聞いたことがありますか?日常生活で使用されることはほとんどありませんが、小説や漫画、アニメなどで悪事に手を染めた人物のセリフとして「毒を食らわば皿まで」が使われることもあるので、意味は分からないけど聞いたことがある、という人もいるのではないでしょうか。今回は、そんな「毒を食らわば皿まで」につい解説をしていきたいと思います。

それでは早速「毒を食らわば皿まで」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「毒を食らわば皿まで」の意味は?

「毒を食らわば皿まで」には、次のような意味があります。

一度罪を犯したからには、徹底的に罪悪を重ねる。

出典:大辞林 第3版(三省堂)

「毒を食らわば皿まで」は「どくをくらわばさらまで」と読むことわざで、一度罪を犯したからには徹底的に罪を重ねるという意味を持ちます。
一度罪を犯してしまうとそれをなかったことにすることなできません。どうせ後戻りができないのなら徹底的に罪を重ねてやろう、というマイナスの方面に開き直った状況などで用いられます。
「毒を食らわば皿まで」は、悪事を働きかけるマイナスなニュアンスをもつので、使用する場面には十分注意が必要です。現代では、悪事を働いた場合に限定されず、大変な事態になった場合や苦しい状況に陥った場合に、どうせ一度手を付けたのならのなら腹をくくって最後までやり切ろうという使い方もされます。

「毒を食らわば皿まで」の語源は?

次に「毒を食らわば皿まで」の語源を確認しておきましょう。

「毒を食らわば皿まで」の出典は不明です。しかし、このことわざは、いったん毒が入った料理を食べたからには、その料理を盛った皿まで舐めとることが由来になっていると考えられています。
一度毒を食べてしまったら死ぬ運命からは逃れられず、もう回復は望めません。なので、どうせ毒を食らって死ぬのなら余すところなく皿までなめとってやろうという開き直りが元になっているのです。

\次のページで「「毒を食らわば皿まで」の使い方・例文」を解説!/

「毒を食らわば皿まで」の使い方・例文

「毒を食らわば皿まで」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.毒を食らわば皿までと言うように、どうせ捕まってしまうのならここで改心したとしても意味がない。とことん悪事を重ねて落ちるところまで落ちてやろう。
2.毒を食らわば皿までだ、相当無理のあるスケジュールだが一度引き受けた仕事なのだから、どんな結果になろうが最後までチームみんなでやり切ろうじゃないか。
3.毒を食らわば皿までと言うが、いくら犯してしまった罪を変えられなくても思ってくれる家族や恋人がいるならば真摯に罪に向き合うべきなのだ。

上記では3つの例文を挙げました。それでは、ひとつひとつ意味を確認していきましょう。

例文1は、どうせ捕まるのなら改心したとしても意味をなさないので好き放題罪を重ねてやろうということを表す例文です。一度罪を犯してしまえば、それは変えることができないので開き直ってしまったという状況で用いられています。

例文2は、一度受け入れてしまったスケジュールなら、たとえそれが不可能に見えていようが最後までやり通そうということを表す例文です。ここでは苦境に陥った場合としての例文で、悪事を犯した場合ではないので使い分けに注意してください。

例文3は、一度悪事を犯してしまっても、大切な家族や恋人がいるならば開き直らずに罪と向き合うべきだという戒めとして使用される例文です。悪事を犯した場合、それを肯定するのではなく逆に戒めにするという使い方もあることを覚えておいてください。

「毒を食らわば皿まで」の類義語は?違いは?

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一度罪を犯したからには徹底的に罪を重ねるという意味を持つ「毒を食らわば皿まで」と似た意味を持つ言葉にはどのようなものがあるのでしょうか。下記の言葉を確認していきましょう。

その1「濡れぬ先こそ露をも厭え」

「濡れぬ先こそ露をも厭え」は「ぬれぬさきこそつゆをもいとえ」と読むことわざです。「厭う」は嫌に思う、嫌に思って避けることを意味します。
皆さんにも一度は経験があるかもしれませんが、濡れる前は少しの露でさえも身体にかかるのが嫌だけど、一度濡れてしまえばどんなに濡れてしまっても気にならなくなるもの。このことから、間違いを犯す前は極度に注意をするが、一度間違いを犯すとそれ以上のひどいことでも平気で行うようになることの例えとして用いられるのです。

一度罪を犯した後は平気で罪を犯せるようになる点では「毒を食らわば皿まで」の一度罪を犯してしまった後に徹底的に悪事を重ねると意味が類似しています。しかし、間違いを犯す前はそれに対して非常に慎重になっている点では少しニュアンスが異なっているので使い分けに注意してください。

\次のページで「その2「盗人猛猛しい」」を解説!/

1.濡れぬ先こそ露をも厭えと言うように、一度だけにして手を洗おうと同僚も思っていたただろうが、感覚が麻痺してどんどんエスカレートしてしまい横領罪で逮捕されてしまった。
2.彼と会うのは一度だけのつもりでいたが、濡れぬ先こそ露をも厭えと言うように、一度一線を越えてしまうと緊張感よりも自身の甘えた気持ちが勝ってしまう。
2.最初はひょんなミスを上司に報告したくなくて始めたことだが、濡れぬ先こそ露をも厭えと言うように、今ではばれたら解雇を免れないだろう大きな不正まで犯している。

その2「盗人猛猛しい」

「盗人猛猛しい」は「ぬすびとたけだけしい」と読むことわざです。「猛猛しい」はずうずうしいという意味といかにも勇ましくて強そうであるという意味の2つがあります。ここでは前者のずうずうしいという意味が適切です。盗みや悪事をはたらき、それを咎められてもふてぶてしい態度をとったり、逆に居直ったるする様子を表します

「毒を食らわば皿まで」の一度罪を犯した後に徹底的にそれを重ねるのような意味はありません。しかし、犯した罪に対してそれを咎められても反省することなく、むしろ開き直ってしまうという点では似たニュアンスであると考えられるのではないでしょうか。

1.親友が私の教科書を盗ろうとしていたところを見つけて問いただしたが、ごめんねのごの字も言わない。なんて盗人猛猛しい人なのだろうかと怒りを通り越して呆れてしまった。
2.偽のインターネットサイトに誘導して個人情報を抜き取るフィッシング詐欺を企て実行したのにも関わらず、引っかかった方が悪いと言い張るなど、なんて盗人猛猛しい奴なのだろうか。

「毒を食らわば皿まで」の対義語は?

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「毒を食らわば皿まで」には明確な対義語はありません。しかし、一度罪を犯した後に徹底的に罪悪を重ねると反対の意味を持つ言葉をしいて挙げるなら、「君子は豹変す」(くんしはひょうへんす)が挙げられます。これは、君子のような徳の高い人物は、過ちを速やかに改めて善に移ることがはっきりしていることを意味することわざです。しかし、今までの思想や態度が急に変わることの例えとしても用いられることもあるので、反対の意味として考えることができるのではないでしょうか。

「毒を食らわば皿まで」を使いこなそう

この記事では「毒を食らわば皿まで」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「毒を食らわば皿まで」は一度罪を犯したからには徹底的に罪悪を重ねるという意味を持つことわざです。これは後戻りがきかない罪を犯し、開き直っている状態を表す時に用いられます。また、どうせ手を付けたのなら最後まで覚悟を決めてやり切ろうという使い方もできるので、使い分けや読み分けに注意してください。

類義語としては、「濡れぬ先こそ露こそ厭え」、「盗人猛猛しい」の2つを紹介しました。「毒を食らわば皿まで」に明確な対義語はありませんが、態度や思想が急に変わるという点で反対に近い意味を持つと考えられる「君子豹変す」を挙げているので、あわせて確認しておきましょう。

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【ことわざ】「毒を食らわば皿まで」の意味や使い方は?例文や類語を文学部卒現役ライターがわかりやすく解説!

この記事では「毒を食らわば皿まで」について解説する。

端的に言えば「毒を食らわば皿まで」の意味は「一度手を汚したから徹底的に罪を重ねる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

高校で国語教師をしていた経歴を持つ、現役ライターのhiyoriを呼んです。一緒に「毒を食らわば皿まで」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/hiyori

大学で近現代日本文学を専攻し、その知識を生かして国語教師として教壇に立っていた経歴を持つ。現在はライターとして様々な情報を発信している。難しい言葉もわかりやすい説明で解説していく。

「毒を食らわば皿まで」の意味や語源・使い方まとめ

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みなさんは「毒を食らわば皿まで」という言葉を聞いたことがありますか?日常生活で使用されることはほとんどありませんが、小説や漫画、アニメなどで悪事に手を染めた人物のセリフとして「毒を食らわば皿まで」が使われることもあるので、意味は分からないけど聞いたことがある、という人もいるのではないでしょうか。今回は、そんな「毒を食らわば皿まで」につい解説をしていきたいと思います。

それでは早速「毒を食らわば皿まで」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「毒を食らわば皿まで」の意味は?

「毒を食らわば皿まで」には、次のような意味があります。

一度罪を犯したからには、徹底的に罪悪を重ねる。

出典:大辞林 第3版(三省堂)

「毒を食らわば皿まで」は「どくをくらわばさらまで」と読むことわざで、一度罪を犯したからには徹底的に罪を重ねるという意味を持ちます。
一度罪を犯してしまうとそれをなかったことにすることなできません。どうせ後戻りができないのなら徹底的に罪を重ねてやろう、というマイナスの方面に開き直った状況などで用いられます。
「毒を食らわば皿まで」は、悪事を働きかけるマイナスなニュアンスをもつので、使用する場面には十分注意が必要です。現代では、悪事を働いた場合に限定されず、大変な事態になった場合や苦しい状況に陥った場合に、どうせ一度手を付けたのならのなら腹をくくって最後までやり切ろうという使い方もされます。

「毒を食らわば皿まで」の語源は?

次に「毒を食らわば皿まで」の語源を確認しておきましょう。

「毒を食らわば皿まで」の出典は不明です。しかし、このことわざは、いったん毒が入った料理を食べたからには、その料理を盛った皿まで舐めとることが由来になっていると考えられています。
一度毒を食べてしまったら死ぬ運命からは逃れられず、もう回復は望めません。なので、どうせ毒を食らって死ぬのなら余すところなく皿までなめとってやろうという開き直りが元になっているのです。

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