この記事では「親の心子知らず」について解説する。

端的に言えば「親の心子知らず」の意味は「子供は親の気持ちに気づかず勝手な振る舞いばかりする」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

高校で国語教師をしていた経歴を持つ、現役ライターのhiyoriを呼んです。一緒に「親の心子知らず」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/hiyori

大学で近現代日本文学を専攻し、その知識を生かして国語教師として教壇に立っていた経歴を持つ。現在はライターとして様々な情報を発信している。難しい言葉もわかりやすい説明で解説していく。

「親の心子知らず」の意味や語源・使い方まとめ

image by PIXTA / 60855388

「親の心子知らず」は誰しもが一度は聞いたことがある有名なことわざなので、当たり前に意味を知ってるよ!なんて人も多いはず。意味を知っている人が多いぶん、間違えた意味で使っていたり意味を知らないでいると恥ずかしい目にあってしまうことも。今回はそんな「親子心子知らず」について解説していきたいと思います。語源などや類義語も紹介するので意味をすでに知っている人も必読です!
それでは早速「親の心子知らず」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「親の心子知らず」の意味は?

「親の心子知らず」には、次のような意味があります。

子を思う親の心を子は察しないで勝手な振る舞いをする。

出典:大辞林 第3版(三省堂)

「親の心子知らず」は「おやのこころこしらず」と読むことわざです。みなさんは、「勉強しなさいなど」と親からあれこれ言われたり叱られたりしたことはありませんか?そんな時、子供からすると何でこんなに口うるさくするんだろう?と突っぱねたり反抗したりすることもありますよね。「親の心子知らず」はそんな状況を表します。子供は親の気持ちを理解できず、つい反発してしまいますが、勉強しなさいなどと親が子供へあれこれ言うのは子供の将来を願ってのこと。「親の心子知らず」は子供は親の心からの愛情を理解せず勝手に振る舞うことを意味することわざなのです。また、自身が親になってみないと親の気持ちは理解できないという意味でも用いられるのであわせて覚えておきましょう。
また、「親の心子知らず」は主に親子間で用いられることが多いですが、親子と同じくらい親しいと考えられる場合には、師匠と弟子、先生と生徒、上司と部下などの間柄でも使用することが可能です。

「親の心子知らず」の語源は?

次に「親の心子知らず」の語源を確認しておきましょう。「親の心子知らず」の由来は、室町時代前記に成立し、源義経の悲劇的な生涯を描いた一代記である「義経記」です。この「義経記」では、源義経の従者として有名な弁慶が登場し、「あはれや殿、おやのこころを子しらずとて、人の心は知り難し」というセリフがあります。現代語訳すると「親の心子知らずと申して、人の心は知り難いものです」になり、この弁慶のセリフが転じて、現在も使われる「親の心子知らず」になったと考えられているのです。

\次のページで「「親の心子知らず」の使い方・例文」を解説!/

「親の心子知らず」の使い方・例文

「親の心子知らず」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.親の心子知らずだと理解してはいるが、いくら言っても勉強しない息子には腹が立ってしまう。

2.娘が生まれて子育てをしてはじめて、自分がいかに親の心子知らずであったかを思い知った。
3.師匠が目をかけてくれていたのかに気づかず辞める道を選んでしまうなんて、自分はなんて親の心子知らずだったのか。

上記では、3つの例文を挙げました。それではひとつひとつ意味を確認していきましょう。

例文1は、子供はなかなか親の言うことを聞かないということをわかっていても、一向に勉強しない息子に対して腹が立ってしまうという例文です。親は子供を思って、「勉強しなさい」や「早く寝なさい」の小言を言いますが、それは子供を思ってのこと。それを子供は気づかないとはわかっていながらも、やはり人間なので腹が立ってしまうのですね。

例文2は、自分に子供が生まれて初めて、親の気持ちがわかるという例文です。いくら思いをかけられていても、実際にその立場に立ってみないとその気持ちを理解するのは難しいもの。そうした状況を表す言葉として「親の心子知らず」が使われています。

例文3は、師匠の思いに気づかずに辞める道を選んでしまった自分を責める例文です。この例文では、親子間ではなく師匠と弟子という関係で使われています。このように、親子という関係でなくとも、相手を親と思えるほど親しい間柄では使用することができるので覚えておきましょう。

「親の心子知らず」の類義語は?違いは?

image by PIXTA / 57645653

親の気持ちがわからず勝手ばかりするという意味の「親の心子知らず」と似た意味を持つ言葉には何があるのでしょうか。

下記の言葉を確認していきましょう。

その1「親思う心にまさる親心」

「親思う心にまさる親心」は「おやおもうこころにまさるおやごころ」と読むことわざです。子供が親を思う気持ち以上に親が子供を思う心は深いことを表します。子供への親の深い思いという点では「親の心子知らず」と似ていますが、親から子供への思いを察さずに子供が勝手に振る舞うというニュアンスは含まれないので注意しましょう。

\次のページで「その2「子を持って知る親の恩」」を解説!/

1.親思う心にまさる親心というように、子供が親の心配をするよりも親の方がずっと我が子を心配しているものです。
2.親思う心にまさる親心というのだから、親を悲しませることは決してしてはいけないよ。
3.地方に住む母が心配で電話を掛けるが、母はその度に自分の心配よりも私の心配ばかりする。これが親思う心にまさる親心なのだろう。

その2「子を持って知る親の恩」

「子を持って知る親の恩」は「こをもってしるおやのおん」と読むことわざです。自分が子供を授かって親になり、子育てなどの苦労をして初めて親のありがたさがわかるという意味を持ちます。自身が親になってみないと親の気持ちは理解できないという意味で用いられる「親の心子知らず」と非常に似た意味と考えられるでしょう。

1.子を持って知る親の恩というように、自分の娘を育てて大変さを味わってはじめて親のありがたみを知った。
2.私が子供のために毎日働いているように、父も私のために毎日汗水流して働いてくれていたに違いない。まさに、子を持って知る親の恩だ。
3.子を持って知る親の恩というが、父がなぜあんなに厳しく私を叱ったのか、同じく息子に手を焼く父親になってはじめてわかった。

「親の心子知らず」の対義語は?

image by PIXTA / 36823648

子供は親の気持ちがわからず勝手な振る舞いばかりするという意味の「親の心子知らず」の反対の意味を持つ言葉として、「子の心親知らず」が考えられます。このことわざは、親は子供の気持ちを汲み取ることはできない、親はいつまでも子供を幼いままだと思ってしまうが、子供は様々なことを考えどんどん成長するためなかなか理解することが難しいという意味を持つのであわせて覚えておきましょう。

「親の心子知らず」を使いこなそう

この記事では「親の心子知らず」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「親の心子知らず」は、子供を思う親の心を子供は察しないで勝手な振る舞いをする自身が親になってみないと親の気持ちはわからないという意味を持ちます。基本的には親子間で使用されることが多いですが、先生と生徒や師匠と弟子などの親子の関係のように親しい場合でも使用できるので覚えておきましょう。

類義語として「親思う心にまさる親心」、「子を持って知る親の恩」の2つを挙げました、いづれも「親の心子知らず」と似た意味を持ちますが、「親思う心にまさる親心」には親から子供への思いに気づかずに子供が勝手に振る舞うというニュアンスは含まれないため、使い分けに注意してください。

" /> 【ことわざ】「親の心子知らず」の意味や使い方は?例文や類語を文学部卒現役ライターがわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

【ことわざ】「親の心子知らず」の意味や使い方は?例文や類語を文学部卒現役ライターがわかりやすく解説!

この記事では「親の心子知らず」について解説する。

端的に言えば「親の心子知らず」の意味は「子供は親の気持ちに気づかず勝手な振る舞いばかりする」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

高校で国語教師をしていた経歴を持つ、現役ライターのhiyoriを呼んです。一緒に「親の心子知らず」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/hiyori

大学で近現代日本文学を専攻し、その知識を生かして国語教師として教壇に立っていた経歴を持つ。現在はライターとして様々な情報を発信している。難しい言葉もわかりやすい説明で解説していく。

「親の心子知らず」の意味や語源・使い方まとめ

image by PIXTA / 60855388

「親の心子知らず」は誰しもが一度は聞いたことがある有名なことわざなので、当たり前に意味を知ってるよ!なんて人も多いはず。意味を知っている人が多いぶん、間違えた意味で使っていたり意味を知らないでいると恥ずかしい目にあってしまうことも。今回はそんな「親子心子知らず」について解説していきたいと思います。語源などや類義語も紹介するので意味をすでに知っている人も必読です!
それでは早速「親の心子知らず」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「親の心子知らず」の意味は?

「親の心子知らず」には、次のような意味があります。

子を思う親の心を子は察しないで勝手な振る舞いをする。

出典:大辞林 第3版(三省堂)

「親の心子知らず」は「おやのこころこしらず」と読むことわざです。みなさんは、「勉強しなさいなど」と親からあれこれ言われたり叱られたりしたことはありませんか?そんな時、子供からすると何でこんなに口うるさくするんだろう?と突っぱねたり反抗したりすることもありますよね。「親の心子知らず」はそんな状況を表します。子供は親の気持ちを理解できず、つい反発してしまいますが、勉強しなさいなどと親が子供へあれこれ言うのは子供の将来を願ってのこと。「親の心子知らず」は子供は親の心からの愛情を理解せず勝手に振る舞うことを意味することわざなのです。また、自身が親になってみないと親の気持ちは理解できないという意味でも用いられるのであわせて覚えておきましょう。
また、「親の心子知らず」は主に親子間で用いられることが多いですが、親子と同じくらい親しいと考えられる場合には、師匠と弟子、先生と生徒、上司と部下などの間柄でも使用することが可能です。

「親の心子知らず」の語源は?

次に「親の心子知らず」の語源を確認しておきましょう。「親の心子知らず」の由来は、室町時代前記に成立し、源義経の悲劇的な生涯を描いた一代記である「義経記」です。この「義経記」では、源義経の従者として有名な弁慶が登場し、「あはれや殿、おやのこころを子しらずとて、人の心は知り難し」というセリフがあります。現代語訳すると「親の心子知らずと申して、人の心は知り難いものです」になり、この弁慶のセリフが転じて、現在も使われる「親の心子知らず」になったと考えられているのです。

\次のページで「「親の心子知らず」の使い方・例文」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: