この記事では「霞に千鳥(かすみにちどり)」について解説する。

端的に言えば霞に千鳥の意味は「ふさわしくない、ありえない」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国語力だけでこれまでの社会人生活を乗り切ってきたライター、ヤザワナオコに、「霞に千鳥」の意味や例文、類語などを説明してもらおう。

ライター/ヤザワナオコ

コールセンターの電話応対指導やマナー講師、テレビ番組の字幕製作経験もあるライター、ヤザワナオコ。

千鳥というと、手ぬぐいなど和風の布の柄「波に千鳥」をイメージするとか。砂浜にいる千鳥にいかにも似合う波ではなく、「霞に千鳥」とはどんなときに使うのか、解説してもらう。

「霞に千鳥」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「霞に千鳥」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「霞に千鳥」の意味は?

「霞に千鳥」には、次のような意味があります。

霞は春のもの、千鳥は冬のものということで、ふさわしくないこと、または、実際にはないことのたとえ。

真夏なのに夕飯が鍋物だったり、冬にそうめんが出てきたりと、食べ物一つをとっても季節外れなものには違和感がありますね。また、高級ホテルにあまりにもカジュアルな服装だった理、真夏のビーチにスーツ姿など、見た目で「場にそぐわない」と感じることもあるでしょう。このように、場面から通常想定される範囲を超えている場合に使うのが「霞に千鳥」です。状況と実際との食い違いだけでなく、あまりにも家柄や地位に差がある者同士の恋愛など、人と人との関係が釣り合わないと感じられるケースでも用いられます。

「霞に千鳥」の語源は?

次に「霞に千鳥」の語源を確認しておきましょう。まず「霞」は空気中の細かい粒子のために遠くがはっきり見えない現象のうち、春に見られるもののこと。同じ現象が秋に見られる場合は「霧(きり)」と呼ばれ、俳句でも「霞」は春、「霧」は秋の季語になっていますよ。次に「千鳥」は、動物の分類としては鳥類チドリ目チドリ科の鳥を指しますが、日本では昔から、野山や水辺に生息する小鳥たちを広く「千鳥」と呼んでいます。季語は冬ですが、実際に冬しか見られないというわけではありません。

この2つが合わさって、春見られる霞と冬の千鳥では似合わない、同時に見ることなどありえないというニュアンスを表します。

\次のページで「「霞に千鳥」の使い方・例文」を解説!/

「霞に千鳥」の使い方・例文

「霞に千鳥」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・プロ野球選手の移籍交渉に母親が口を出すなんて、霞に千鳥だよ。プロに任せておけばいいのに。

・片や日本を代表する研究会のトップ、片やアルバイトの店員では、霞に千鳥でたとえ結婚できたとしてもうまくいきそうにない。

1つ目の例文は、似つかわしくない状況、2つ目は人と人が釣り合わないという意味で使われているものを挙げました。日常会話の中で登場することは多くはない「霞に千鳥」ですが、耳にしたら意味が分かるようにはしておきたいですね。

「霞に千鳥」の類義語は?違いは?

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「霞に千鳥」と似た意味で使える用語を見ていきましょう。

「石に花」

普通、石から植物が生えて花が咲くとは思えませんね。ですから「石に花」の意味は「現実にはあり得ないこと」。「石に花咲く」といわれることもありますが、意味は同じです。

「花」は多くのことわざや四字熟語、慣用句に使われる言葉。「両手に花」や「花も恥じらう」のように女性を指すことも多いのですが、「石に花」の場合はそうした例えではなく、文字どおりの植物を指しています。

また、同じく「花」を使う「高嶺の花(たかねのはな)」は、遠くから眺めるだけで自分のものにはできない存在のこと。人と人の関係が似つかわしくないケースでは「霞に千鳥」と似たニュアンスを持ちますね。

\次のページで「「霞に千鳥」の対義語は?」を解説!/

・漢字について議論する集まりなのに、懇親会のメニューがフレンチというのは石に花ではないだろうか。

「霞に千鳥」の対義語は?

「霞に千鳥」と反対のニュアンスを持つ言葉を紹介します。

「波に千鳥」

同じ「千鳥」を使う表現でも、「波に千鳥」は絵になるような調和の良いもの、組み合わせの良いものを表します。冒頭に筆者が書いたように、奈良時代から使われている伝統的な文様で、かき氷ののぼりで見かけることもありますよ。

また、「波を一緒に乗り越えていく」イメージから、夫婦円満や家内安全を表す柄として用いられることも。昔からある柄だけに、波も千鳥もいろいろな描かれ方をしているので、見比べても楽しめます。

同様に、「梅に鶯(うめにうぐいす)」や「牡丹に唐獅子(ぼたんにからじし)」も、良い取り合わせを表す際に使える表現です。

・ネットで簡単に週間人気ワードなどを調べられる時代だが、着物姿が似合う彼は書籍をめくっているほうが波に千鳥で絵になるなぁ。

・現代っ子向けに開発されたアプリだけあって、若者に使ってもらうと梅に鶯でしっくりくるね。

・昨日の披露宴では新郎新婦があまりにもお似合いで、牡丹に唐獅子という言葉が浮かびました。

「霞に千鳥」の英訳は?

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「霞に千鳥」を英語で表現するときはどんな単語を用いたらよいのでしょうか。

「not work out」

日本語でワークアウトというとトレーニングのイメージが強いかもしれませんね。否定のnotをつけた表現で、「うまくいかない、ふさわしくない」といった意味を表せます。

また、「適切な、ふさわしい」という意味のsuitableを否定した「not suitable」も、「彼には私なんてふさわしくない」といったニュアンスで用いることができますよ。

「It's impossible.」

「霞に千鳥」を「ありえない、不可能」という意味で使うなら、単純に「It's impossible.」が使えます。「impossible.」には「信じがたい、我慢ならない」という意味もあるので、いろいろなシーンで役立ちそうですね。

「霞に千鳥」を使いこなそう

この記事では「霞に千鳥」の意味・使い方・類語などを説明しました。「霞に千鳥」はテレビやラジオでもそう聞くことがない表現なので、皆さんが自ら口に出さなければならないシチュエーションはあまり想像できません。でも、ふとしたときに「それじゃ霞に千鳥だね」と言えると、人とは少し違う語彙力を感じさせられるのではないでしょうか。

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【慣用句】「霞に千鳥」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「霞に千鳥(かすみにちどり)」について解説する。

端的に言えば霞に千鳥の意味は「ふさわしくない、ありえない」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国語力だけでこれまでの社会人生活を乗り切ってきたライター、ヤザワナオコに、「霞に千鳥」の意味や例文、類語などを説明してもらおう。

ライター/ヤザワナオコ

コールセンターの電話応対指導やマナー講師、テレビ番組の字幕製作経験もあるライター、ヤザワナオコ。

千鳥というと、手ぬぐいなど和風の布の柄「波に千鳥」をイメージするとか。砂浜にいる千鳥にいかにも似合う波ではなく、「霞に千鳥」とはどんなときに使うのか、解説してもらう。

「霞に千鳥」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「霞に千鳥」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「霞に千鳥」の意味は?

「霞に千鳥」には、次のような意味があります。

霞は春のもの、千鳥は冬のものということで、ふさわしくないこと、または、実際にはないことのたとえ。

真夏なのに夕飯が鍋物だったり、冬にそうめんが出てきたりと、食べ物一つをとっても季節外れなものには違和感がありますね。また、高級ホテルにあまりにもカジュアルな服装だった理、真夏のビーチにスーツ姿など、見た目で「場にそぐわない」と感じることもあるでしょう。このように、場面から通常想定される範囲を超えている場合に使うのが「霞に千鳥」です。状況と実際との食い違いだけでなく、あまりにも家柄や地位に差がある者同士の恋愛など、人と人との関係が釣り合わないと感じられるケースでも用いられます。

「霞に千鳥」の語源は?

次に「霞に千鳥」の語源を確認しておきましょう。まず「霞」は空気中の細かい粒子のために遠くがはっきり見えない現象のうち、春に見られるもののこと。同じ現象が秋に見られる場合は「霧(きり)」と呼ばれ、俳句でも「霞」は春、「霧」は秋の季語になっていますよ。次に「千鳥」は、動物の分類としては鳥類チドリ目チドリ科の鳥を指しますが、日本では昔から、野山や水辺に生息する小鳥たちを広く「千鳥」と呼んでいます。季語は冬ですが、実際に冬しか見られないというわけではありません。

この2つが合わさって、春見られる霞と冬の千鳥では似合わない、同時に見ることなどありえないというニュアンスを表します。

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