この記事では「国を売る」について解説する。

端的に言えば、国を売るの意味は「自国の安全を犠牲にして他国に有利な行為をする」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元新聞記者で、ライター歴20年のトラコを呼んです。一緒に「国を売る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/トラコ

全国紙の記者を7年。その後、雑誌や書籍、Webでフリーの記者などとして活動中。文字の正確さ、使い方に対するこだわりは強い。

「国を売る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速、「国を売る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「国を売る」の意味は?

「国を売る」には、次のような意味があります。

自分の利益のために、自国の安全などを犠牲にして、他国に有利な行為をする。
[補説]「国」は、国都(長安)の意とも、国家(の組織)の意ともいう。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「国(くに)を売(う)る」

「国を売る」の意味は、自らが利益を得るため、自分の国の利益や安全などを犠牲にし、他の国や敵国などの利益になるよう、有利な行為をすることです。故郷である国を追われたり棄てたりして他国に出るという意味も。

この「国」は、中国の国都だった長安を意味する、また、国家そのものや国家の組織という意味など、諸説があります。

似たような言葉に「売国」があり、この意味は、祖国に対するスパイ行為などをさすので、覚えておきましょう。

「国を売る」の語源は?

次に、「国を売る」の語源を確認しておきましょう。

「国を売る」という言葉の由来はよくわかりません。ただ、日本を含むどの国においても、争いごとが起きると、自国を害して敵国を利する、つまり利敵行為を行う人たち、いわゆるスパイが現れます。この人たちは、私利私欲を満たして満足感を得ることが主な目的です。売国奴と呼ばれることも。

福沢諭吉が記した有名な『学問のすゝめ』の中で「国民に独立の気力愈少なければ、国を売るの禍も随て益大なる可し」との一文も出てきます。

\次のページで「「国を売る」の使い方・例文」を解説!/

「国を売る」の使い方・例文

「国を売る」の使い方を、例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.彼らは身分を偽り、旅人の武家一家を装い、国を売る行為に手を染めた。誰から聞いても、人情のかけらもない奴らだった。
2.国を売ろうとした武士は結局、脱藩しても度胸なくただの浪人になったので、身内は誰も文句を言えない。
3.東映の映画『次郎長三国志』で演歌「旅姿三人男」の作詞に「なんで大政、なんで大政、国を売る」とあり、森の石松、大政、小政のことを歌にしている。

それでは、それぞれの例文について、解説していきます。

例文1は、自分の利益のために自国の安全などを犠牲にして他国に有利な行為をするという、まさに「国を売る」行為の意味で使われている文章。例文2は、故郷である国を棄てて他国に出る脱藩、浪人という意味で「国を売る」との言葉が用いられています。

例文3は、清水の次郎長で有名な歌について。宮本旅人さんの作詞、鈴木哲夫さんが作曲した歌の「清水港の港はお茶の香りと」で始まる歌詞に、「国を売る」との文言が出てきます。これについて説明した文章です。

「国を売る」の類義語は?違いは?

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次に、「国を売る」について、類義語(類語)を見ていきましょう。

類義語として、売国、売国行為、祖国を売る、裏切り、内通する、敵方に寝返る、密通、背信行為、味方を欺く、密告する、恩を仇で返す、不忠実、脱法行為、後足で砂をかける、煮え湯を飲ませる、庇を貸して母屋を取られるなどが考えられます。

いくつかの類義語について確認しておきましょう。

その1「売国」

「国を売る」を漢字だけで表現すると「売国」となります。この「売国」の意味を今一度、確認しておきましょう。

「売国」とは、祖国や自国民に対するスパイ行為、背信行為のこと。いわゆる反逆者、非国民を意味します。戦争が起きると必ずと言ってよいほど売国行為に手を染める人たちが現れては処刑されることが後を絶ちません。

一方、国家の利益に害を与える「国賊」は、日本では、反日や反国家的な行為を行う、天皇や皇室を冒涜する行為などが国賊と見なされることも。いずれにしても、これらの用語を使う際はくれぐれも注意が必要です。

\次のページで「その2「後足で砂をかける」」を解説!/

その2「後足で砂をかける」

「後足で砂をかける」は、あとあしですなをかける、と読みます。

意味は、恩義がある人を平気で裏切るだけでなく、さらにひどい迷惑をかけて去っていくことのたとえです。例えば、「あいつは、後足で砂をかけていきやがって」といった使い方をします。

語源は、犬や馬などの動物。走り始めた時に後ろ足で砂や土をかけて蹴散らす様子を言葉で表現しています。

その3「庇を貸して母屋を取られる」

「庇を貸して母屋を取られる」についても、意味を確認しておきましょう。読み方は、ひさしをかしておもやをとられる、です。

意味は2つあり、1つがを貸していたためにやがて全部を奪われる、つまり軒先を貸したところ母屋を乗っ取られることで、もう1つが保護してやった相手に恩を仇で返されること。「国を売る」に近い意味は、後者です。

「恩を仇で返す」も類義語なので、合わせて覚えておきましょう。

「国を売る」の対義語は?

続いて、「国を売る」の対義語(反対語)について。

「国を売る」の対義語は、売国の対義語が愛国、救国であることから、「国を愛する」「国を救う」などが当てはまるでしょう。

「救国」

「救国」は、きゅうこく、と読みます。意味は、国の危機、難儀、応急を救うこと。使い方は、例えば「救国の志士」など。

作家・菊池寛が記した『話の屑籠』で「古来救国の大業を為した英雄偉人必ずしも少くはない」といった一文が出てきます。昔から国を救う大きな仕事を行った英雄や偉人は必ずしも少なくはないという意味です。

「国を売る」の英訳は?

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さらに、「国を売る」について、英訳も確認しておきましょう。

「国を売る」を日本語から英語に翻訳すると、sell one\'s countrybetray one\'s countryturn traitor to one\'s country などが当てはまります。

「sell one's country」

「国を売る」について、そのまま英語に訳したのが、sell one's country です。

一方、betray one's countryturn traitor to one's country も、「国を売る」という意味。「betray」は、裏切る、背く、敵を売る、だます、密告するといった意味を持つ動詞の英単語。「traitor」は、裏切り者、内通者、反逆者、売国奴といった意味の名詞です。

その他の英語表現も含め、例文を見てみましょう。

\次のページで「「国を売る」を使いこなそう」を解説!/

・Though they were poor, above selling their country.

彼らは貧しくても、決して国を売るようなことはしなかった。

・In order to gain power, some politicians would be happy to sell their country.

力を手に入れるためなら、いくらかの政治家たちは喜んで国を売るだろう。

「国を売る」を使いこなそう

この記事では、「国を売る」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「国を売る」の意味は、自分の利益のために、自国の安全などを犠牲にして、他国に有利な行為をすること。昔からいつの時代も、国を売るような行為をする人間が必ずいます。正しい意味と使い方をしっかりマスターしましょう。

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国語言葉の意味

【慣用句】「国を売る」の意味や使い方は?例文や類語を元新聞記者がわかりやすく解説!

この記事では「国を売る」について解説する。

端的に言えば、国を売るの意味は「自国の安全を犠牲にして他国に有利な行為をする」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元新聞記者で、ライター歴20年のトラコを呼んです。一緒に「国を売る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/トラコ

全国紙の記者を7年。その後、雑誌や書籍、Webでフリーの記者などとして活動中。文字の正確さ、使い方に対するこだわりは強い。

「国を売る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速、「国を売る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「国を売る」の意味は?

「国を売る」には、次のような意味があります。

自分の利益のために、自国の安全などを犠牲にして、他国に有利な行為をする。
[補説]「国」は、国都(長安)の意とも、国家(の組織)の意ともいう。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「国(くに)を売(う)る」

「国を売る」の意味は、自らが利益を得るため、自分の国の利益や安全などを犠牲にし、他の国や敵国などの利益になるよう、有利な行為をすることです。故郷である国を追われたり棄てたりして他国に出るという意味も。

この「国」は、中国の国都だった長安を意味する、また、国家そのものや国家の組織という意味など、諸説があります。

似たような言葉に「売国」があり、この意味は、祖国に対するスパイ行為などをさすので、覚えておきましょう。

「国を売る」の語源は?

次に、「国を売る」の語源を確認しておきましょう。

「国を売る」という言葉の由来はよくわかりません。ただ、日本を含むどの国においても、争いごとが起きると、自国を害して敵国を利する、つまり利敵行為を行う人たち、いわゆるスパイが現れます。この人たちは、私利私欲を満たして満足感を得ることが主な目的です。売国奴と呼ばれることも。

福沢諭吉が記した有名な『学問のすゝめ』の中で「国民に独立の気力愈少なければ、国を売るの禍も随て益大なる可し」との一文も出てきます。

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