この記事では「懐を痛める」について解説する。

端的に言えば懐を痛めるの意味は「自分のお金を使う」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役のオンライン塾講師でライターのななを呼んです。一緒に「懐を痛める」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/なな

現役のオンライン塾講師であり、現在はライターとしても活動している。作文の添削をする際にひたすら辞書を引いた経験から、正しい日本語について常に考えるようになった。日本語の奥深さを伝えたいという熱い思いをもっている。

「懐を痛める」の意味や使い方まとめ

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それでは早速「懐を痛める」の意味や使い方を見ていきましょう。

「懐を痛める」の意味は?

「懐を痛める」には、次のような意味があります。

自分の金を使う。身銭を切る。「ー・めてまで見ず知らずの他人に施しをする」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「懐を痛める」

「懐を痛める」は「ふところをいためる」と読み、「自分のお金を使う」という意味の慣用句です。「懐」の意味も辞典で確認してみましょう。

1.衣服を着たときの、胸のあたりの内側の部分。懐中。「受け取った金をーにしまう」

2.前に出した両腕と胸とで囲まれる空間。「横綱のーに入り込む」

3.周りを山などに囲まれた奥深い場所。「山のーを切り開く」

4.外界から隔てられた安心できる場所。「親のーで不自由なく育つ」「大自然のーに抱かれる」

5.物の内部。内幕。「敵のーに飛び込む」

6.持っている金。所持金。「他人のーをあてにする」「ーと相談する」

7.胸の内の考え。胸中。「ーを見透かす」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「懐」

6つ目に「持っているお金」という意味が出てきます。このことから、「懐を痛める」は「自分が持っているお金を使う」という意味になるのですね。

「懐を痛める」の使い方・例文

「懐を痛める」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「懐を痛める」の類義語は?違いは?」を解説!/

1.部長が懐を痛めてまで企画を進めた結果、会員登録者数が大幅に増加した。

2.彼は、他人のために懐を痛めることを決してしない。

3.今日はご馳走するつもりだったのに財布を忘れてしまい、結局母の懐を痛めることになってしまった。

1の例文では、当初の予算が足りなかったのでしょうか、部長が自分のお金を出してまで企画を進めて成功したという内容です。2番目は、他人を助けるために自分のお金を使うことを、決してしない人物だという例文ですね。最後の例文は、自分がおごるつもりで出かけたのに財布を忘れ、母親の所持金を使うことになってしまったということです。

「懐を痛める」の類義語は?違いは?

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次に、「懐を痛める」の類義語を確認していきます。

その1「身銭を切る」

「身銭を切る」は「自分のお金で支払いをすること」を表し、「懐を痛める」の類語としてあげられるでしょう。分かりやすい辞典の解説があったので紹介します。

本来私的な用向きに当てるための自分のお金。「ーを切る(=公用などに自分のお金を使う)」

出典:新明解国語辞典 第六版(三省堂)「身銭」

辞典の解説から「身銭を切る」とは、本来であれば自分の用事で使うお金を、それ以外に使用するという意味であると分かります。「研究開発のために身銭を切った」などと使えるでしょう。

その2「自腹を切る」

「自腹を切る」は日常的に使う表現ですね。「公的な経費など、本来負担する必要のないものを自分のお金で支払うこと」を意味します。「会社の出張で使った交通費なのに、経費として認められずに自腹を切ることになった」などと使えるでしょう。

\次のページで「その3「手弁当」」を解説!/

その3「手弁当」

「手弁当」は「てべんとう」と読み、「自分で弁当を持っていくこと」から「他人や公共のために、自費で働くこと」も意味します。「友人が町おこしの事業を立ちあげるというから手弁当で手伝った」などと言えるでしょう。

また「自弁」(じべん)という言葉があり、「費用を自分で出すこと」を表します。

その4「持ち出し」

「持ち出し」にあるいくつかの意味の中に、「足りない費用を自己負担すること」というものがあります。「遠回りした分、交通費が持ち出しになった」などと使えますね。

「懐を痛める」の対義語は?

「懐を痛める」について特定の対義語は見つかりませんでした。ここでは参考に、「利益を得る」という意味の言葉をいくつか見ていきましょう。

その1「懐を肥やす」

「懐を痛める」と同じく「懐」を使った、「懐を肥やす」という慣用句があります。「不正な方法を用いて利益を得る」という意味です。「嘘をついて会員からお金を集め、懐を肥やしていたそうだ」などと使えますね。また、「懐を暖める」は「懐を肥やす」と同様の意味を持ちます。

その2「甘い汁を吸う」

「甘い汁を吸う」は「自分は苦労することなく、他人を動かして利益を得ること」を表します。利益だけを吸いとっておいしい思いをしている様子が目に浮かぶ表現ですね。「組織の幹部という立場を利用して、甘い汁を吸っているらしい」などと使います。

その3「濡れ手で粟」

「濡れ手で粟」は「ぬれてであわ」と読むことわざで、「苦労をせずに儲けること」のたとえです。濡れた手で粟をつかむと簡単にたくさんくっついてくることからきています。「濡れ手で粟だという仕事に誘われたが、そんなうまい話があるのかと疑っている」などと使えるでしょう。「粟」を「泡」とするのは誤字ですので注意してくださいね。

その4「焼け太り」

「焼け太り」は、漢字だけを見ると利益を得ることと関係のない言葉のように思えますよね。辞典で意味を確認してみましょう。

1.火災にあったあと、保険金や見舞金によって、以前よりも生活や事業が豊かになること。

2.転じて、危機や災難を逆に利用して利益を得たり、事業規模を大きくしたりすること。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「焼け太り」

「焼けて太る」、つまり、「火災にあったにもかかわらず、それにより得た金銭などで生活や事業が以前よりうるおうこと」を表すのですね。自分が所有する家や会社が焼けた結果豊かになるとは、皮肉のある言葉といえそうです。

「懐を痛める」の英訳は?

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「懐を痛める」を英訳するとどのような表現になるのでしょうか?

「pay out of one's own pocket」

「pocket」は、日本語でも「ポケット」とカタカナ表記で訳される英単語ですね。加えて「pocket」には「持ち金、財力という意味があり、たとえば「a deep pocket」で「十分な財力」となります。「懐を痛める」を表すには、「pay out of one's own pocket」とするのがよいでしょう。

「She paid out of her own pocket to help Tom.」というと、「彼女はトムを助けるために懐を痛めた」となります。

「懐を痛める」を使いこなそう

この記事では「懐を痛める」の意味・使い方・類語などを説明しました。「懐を痛める」は「自分のお金を使うこと」を表すのでしたね。あなたも不覚にも自分のお金を出すことになったとき、「懐を痛めた」と使ってみましょう。

「お金」に関する慣用句やことわざは、皮肉も含めた興味深い表現が多いので、まとめてチェックしてみるのもおすすめです。まずは、今回出てきた「自分のお金を使うこと」、「利益を得ること」に関する慣用句を覚え、語彙力アップを目指しましょう!

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国語言葉の意味

【慣用句】「懐を痛める」の意味や使い方は?例文や類語を現役塾講師ライターがわかりやすく解説!

この記事では「懐を痛める」について解説する。

端的に言えば懐を痛めるの意味は「自分のお金を使う」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役のオンライン塾講師でライターのななを呼んです。一緒に「懐を痛める」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/なな

現役のオンライン塾講師であり、現在はライターとしても活動している。作文の添削をする際にひたすら辞書を引いた経験から、正しい日本語について常に考えるようになった。日本語の奥深さを伝えたいという熱い思いをもっている。

「懐を痛める」の意味や使い方まとめ

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それでは早速「懐を痛める」の意味や使い方を見ていきましょう。

「懐を痛める」の意味は?

「懐を痛める」には、次のような意味があります。

自分の金を使う。身銭を切る。「ー・めてまで見ず知らずの他人に施しをする」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「懐を痛める」

「懐を痛める」は「ふところをいためる」と読み、「自分のお金を使う」という意味の慣用句です。「懐」の意味も辞典で確認してみましょう。

1.衣服を着たときの、胸のあたりの内側の部分。懐中。「受け取った金をーにしまう」

2.前に出した両腕と胸とで囲まれる空間。「横綱のーに入り込む」

3.周りを山などに囲まれた奥深い場所。「山のーを切り開く」

4.外界から隔てられた安心できる場所。「親のーで不自由なく育つ」「大自然のーに抱かれる」

5.物の内部。内幕。「敵のーに飛び込む」

6.持っている金。所持金。「他人のーをあてにする」「ーと相談する」

7.胸の内の考え。胸中。「ーを見透かす」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「懐」

6つ目に「持っているお金」という意味が出てきます。このことから、「懐を痛める」は「自分が持っているお金を使う」という意味になるのですね。

「懐を痛める」の使い方・例文

「懐を痛める」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

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