この記事では「煙幕を張る」について解説する。

端的に言えば煙幕を張るの意味は「味方の位置や行動を隠す」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

自治体広報紙の編集を8年経験した弘毅を呼んです。一緒に「煙幕を張る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/八嶋弘毅

自治体広報紙の編集に8年携わった。正確な語句や慣用句の使い方が求められるので、正しい日本語の使い方には人一倍敏感。

「煙幕を張る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「煙幕を張る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「煙幕を張る」の意味は?

「煙幕を張る」には、次のような意味があります。

1.煙幕を用いて味方を敵の目から隠す。
2.真意を隠すために、巧みに言いのがれる。

出典:新明解国語辞典第七版(三省堂)「煙幕を張る」

「煙幕を張る」「煙幕(えんまく)」とは、戦闘の最前線で敵の視界を遮って攻撃しにくくしたり、味方の行動を隠すために放散させる人工の煙のことです。煙幕は、古くは相手から身を隠すことが主な目的でした。しかし現代の戦闘では、センサーや暗視装置によって発見されることを防ぎ、兵器や兵士に対する攻撃を防ぐことが主な機能になっています。

「煙幕を張る」という言葉は、このようにもともとは戦闘に関連した言葉でした。しかし最近はさまざまな方法であやふやな言い方に終始して、相手に真意を悟られないようにするという意味で使われることが多くなっています。

「煙幕を張る」の語源は?

次に「煙幕を張る」の語源を確認しておきましょう。先に解説したように、戦闘で敵にこちらの行動をわからなくするための道具として煙幕を使い、それを一面に張り巡らすことが「煙幕を張る」の由来です。

それが転じて、こちらの言動をあやふやな態度でごまかして、相手に弱みを握られないようにするという意味に変わってきました。

\次のページで「「煙幕を張る」の使い方・例文」を解説!/

「煙幕を張る」の使い方・例文

「煙幕を張る」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、例えば以下のように用いられます。

1.秋霖は時として日本列島に停滞する前線により大雨になり、煙幕を張ったように周りが見えなくなる。
2.お見合いの席で着物を着てきた女性があまりにきれいだったので、僕は照れ隠しのつもりで煙草を吸って煙幕を張ったよ。
3.今度会社で発売する商品の価格があまりに早く知られては困るので、出版社に知られないよう煙幕を張る。

「煙幕を張る」のは、なにもライバルなどに対してだけとは限りません。自分が取った行動の結果、自社に不利益をもたらすようになった場合は、一部の関係者に箝口令(かんこうれい)を敷いて自分の失敗を覆いかくすようなこともします。そして誰かに見つかりそうになったら言を左右してごまかすものです。

しかし、そのようなことは決して自分のためにも相手のためにもなりません。そのようなときは、下手に「煙幕を張る」ようなことはしないで、正直にすべてを打ち明けて二度と同じ過ちを繰り返さないようにすることが大切です。

「煙幕を張る」の類義語は?違いは?

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ここでは「煙幕を張る」の類義語を見ていきましょう。

その1「幻惑する」

「幻惑する」は、人の目を惑わすことです。相手の目標をそらすという意味で「煙幕を張る」の類義語と言えます。手品師がよく手先を動かして、自分が本当に行おうとすることから目をそらすことがあるのはご存じでしょう。これも手品師が観客の目を「幻惑する」ために行っているのです。

似た言葉に「眩惑」がありますが、こちらは目がくらんで正常な判断を失ったり、あるいは失わせたりすることを言います。

\次のページで「その2「目をくらます」」を解説!/

その2「目をくらます」

「目をくらます」「煙幕を張る」の類義語の一つに挙げてもいいでしょう。先に挙げた「眩惑」に似た意味を持っています。相手から本来の目的を隠すために便利な方法です。

その3「煙に巻く」

「煙(けむ)に巻く」とは、相手の知らないようなことを大袈裟に言い立て、圧倒させたりごまかしたりすることです。言葉巧みに人を騙す点では「煙幕を張る」の類義語と言えます。あまりに人を「煙に巻く」ことが多い人は、その回数が多ければ多いほど人に信用されなくなるでしょう。

「煙幕を張る」の対義語は?

次に「煙幕を張る」の対義語を見ていきましょう。

その1「包み隠さず」

「包み隠さず」とは、どのようなことも秘密にしないで、洗いざらい打ち明けることですから、ごまかす意味のある「煙幕を張る」の対義語と言えます。会社の不祥事や政治家の汚職など、今日では隠したいことがいっぱいあるでしょう。しかし、それらを「包み隠さず」打ち明けることが信頼回復のための一番の方法ではないでしょうか。

その2「公にする」

「公にする」「包み隠さず」同様、世間一般に知らせることです。その方法は書籍を刊行したり、ニュースで知らせたりなどいろいろあります。ごまかすのではなく正直にありのままを公表するわけですから「煙幕を張る」の対義語と言えるでしょう。

その3「明らかにする」

「明らかにする」「煙幕を張る」の対義語の一つに挙げてもいいでしょう。「明らかにする」とは「はっきりとさせる」とか「解明する」という意味があります。一つの事柄について何度も試験を実施し、原因を究明する先人の努力は、現代の病気を診断するうえでも大いに役立っているのではないでしょうか。

\次のページで「「煙幕を張る」の英訳は?」を解説!/

「煙幕を張る」の英訳は?

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最後に「煙幕を張る」の英訳を見ていきましょう。

その1「to throw up a smoke screen」

「throw」という単語には「投げる」という意味がありますが、「throw up」とすると「舞い上げる」を表すようになります。つまり「to throw up a smoke screen」「煙幕を舞い上げる」となり、日本語の「煙幕を張る」と同じような意味になるのです。ただしこの場合は、舞台の演出効果のために「煙幕を張る」のであり、言葉巧みにごまかすという意味はありません。

その2「to purposely mislead」

「mislead」は日本語でもよく「ミスリード」というフレーズがよく使われますから、ご存じでしょう。「誤解を招く」という意味です。「purposely」「わざと」を意味しますから「to purposely mislead」で「わざと誤解を招くような言動をする」となり、「煙幕を張る」と同様の意味になります。この使い方は、言葉巧みに人をごまかす意味での「煙幕を張る」に似た使用法です。

「煙幕を張る」を使いこなそう

この記事では「煙幕を張る」の意味・使い方・類語などを説明しました。この頃ではストレートに言いたいことが言えないケースも増加しています。そのようなときは「煙幕を張る」ことにより、角の立たない言い方を考えてみてはいかがでしょうか。

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【慣用句】「煙幕を張る」の意味や使い方は?例文や類語を元広報紙編集者がわかりやすく解説!

この記事では「煙幕を張る」について解説する。

端的に言えば煙幕を張るの意味は「味方の位置や行動を隠す」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

自治体広報紙の編集を8年経験した弘毅を呼んです。一緒に「煙幕を張る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/八嶋弘毅

自治体広報紙の編集に8年携わった。正確な語句や慣用句の使い方が求められるので、正しい日本語の使い方には人一倍敏感。

「煙幕を張る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「煙幕を張る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「煙幕を張る」の意味は?

「煙幕を張る」には、次のような意味があります。

1.煙幕を用いて味方を敵の目から隠す。
2.真意を隠すために、巧みに言いのがれる。

出典:新明解国語辞典第七版(三省堂)「煙幕を張る」

「煙幕を張る」「煙幕(えんまく)」とは、戦闘の最前線で敵の視界を遮って攻撃しにくくしたり、味方の行動を隠すために放散させる人工の煙のことです。煙幕は、古くは相手から身を隠すことが主な目的でした。しかし現代の戦闘では、センサーや暗視装置によって発見されることを防ぎ、兵器や兵士に対する攻撃を防ぐことが主な機能になっています。

「煙幕を張る」という言葉は、このようにもともとは戦闘に関連した言葉でした。しかし最近はさまざまな方法であやふやな言い方に終始して、相手に真意を悟られないようにするという意味で使われることが多くなっています。

「煙幕を張る」の語源は?

次に「煙幕を張る」の語源を確認しておきましょう。先に解説したように、戦闘で敵にこちらの行動をわからなくするための道具として煙幕を使い、それを一面に張り巡らすことが「煙幕を張る」の由来です。

それが転じて、こちらの言動をあやふやな態度でごまかして、相手に弱みを握られないようにするという意味に変わってきました。

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