この記事では「ピンを撥ねる」について解説する。

端的に言えばピンを撥ねるの意味は「ピンはねをする」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

日本語が好きで日本文学科を卒業したハルを呼んです。一緒に「ピンを撥ねる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ハル

日本語が大好きで日本文学科を卒業。現在は子供が言葉を覚えていく様子を見ながら日本語の奥深さを実感中。多くの人にそのよいところを紹介したいとの思いを込めて丁寧に解説する。

「ピンを撥ねる」の意味や語源・使い方まとめ

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「ピンを撥ねる」という表現をご存知ですか。なんとなく聞いたことがあるような、ちょっと違うようなと思うかもしれませんね。どんな意味を持つ言葉でしょうか。それでは早速「ピンを撥ねる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「ピンを撥ねる」の意味は?

まず初めに、国語辞典で「ピンを撥ねる」の意味を確認してみましょう。「ピンを撥ねる」には、次のような意味があります。

ピンはねをする。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「ピンを撥ねる」

 

取り次いで人に渡すべき金品から、その一部を取って自分のものとすること。上前をはねること。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「ピン撥ね」

「ピンを撥ねる」は「ピンをはねる」と読みます。「ピンを撥ねる」の意味は「ピンはねをする」であると辞書に載っていますね。多くの方が、この「ピン撥ね(ピンはね、ピンハネ)」という言葉の方がなじみがあるのではないでしょうか。「ピン撥ね」とは、「他人に取り次ぐはずの資金や代金の一部を不正にかすめ取ること」を意味します。「上前を撥ねる」と表現されることもありますね。「ピンを撥ねる」は、他人の利益を横取りする、暴利をむさぼるといった悪いイメージ、阿漕(アコギ)なイメージを伴って使われることの多い慣用句です。

「ピンを撥ねる」の語源は?

次に「ピンを撥ねる」の語源を確認しておきましょう。

「ピンを撥ねる」の「ピン」は、「」や「」を意味するポルトガル語の「pinta(ピンタ)」に由来すると言われています。日本では、かるたやサイコロの目で「一」を意味する言葉として「ピンタ」が使われました。そこから転じて「一割」や「一部」を「ピン」と言うようになったのです。賭博用語でも「一」を「ピン」と言うのですよ。

また「撥ねる」は、跳躍することを意味する「跳ねる」と同語源なのですが、少し難しい漢字が使われていますね。この漢字を使った「撥ねる」には「はじき飛ばす」「取り除く」「かすめ取る」「断る、はねつける」といった意味があります。ですから「ピンを撥ねる」は「一部をかすめ取る」という意味を表し、これを略して「ピン撥ね」と言われるようになりました。

\次のページで「「ピンを撥ねる」の使い方・例文」を解説!/

「ピンを撥ねる」の使い方・例文

「ピンを撥ねる」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.提供された情報から、あの財団が組織的にピンを撥ねていたことが明らかになった。
2.移民支援機構などと言いながら、入国審査官とグルになってピンを撥ねていたことが発覚した。
3.登録期限をほんの少し過ぎただけなのに、サービス手数料という名目でピンを撥ねられた。
4.パスポート発行に関する新システム開発に関連して、何層にも渡って下請け会社がピンを撥ねていたことが報じられた。

「ピンを撥ねる」は、取り次いで他人に渡さなければならない金銭などから、一部をとって自分のものにしてしまうことを表現する時に用いられます。一般的な、いわゆる手数料なども「ピンを撥ねる」に当たるという考え方もありますが、利益が少ない場合や事前に契約に盛り込まれているような場合にはこれに当たるとはいえません。多くは、常識の範囲を超えて「搾取」と言っても過言でないような手数料をとることや、悪意を持って横領するような場合に用いられる表現です。自分では何もせずに他人の利益を横取りするといったような、悪いイメージで用いられる慣用句なのですね。

「ピンを撥ねる」の類義語は?違いは?

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「ピンを撥ねる」の類義語を見ていきましょう。

その1「上前を撥ねる」

「上前を撥ねる(うわまえをはねる)」は「他人に取り次ぐ賃金や代金の一部を自分のものとする」ことを意味する言葉です。まさに「ピンを撥ねる」と同じ意味を持っています。「上前」は「上米(うわまい)」が転じたものです。「上米」は、古くは寺社へ奉納する米のことを指しました。江戸時代には通行税の一種を指すものとなり、後に仲介業者が取る手数料を指すようになったのです。仲介業者が手数料を取るというシステムは現在も健在であるため、この言葉は今でもよく使われているのですね。

\次のページで「その2「頭を撥ねる」」を解説!/

その2「頭を撥ねる」

「頭を撥ねる(あたまをはねる)」は「人の取り分の一部を自分のものにする」ことを意味する言葉です。この言葉もまさに「ピンを撥ねる」と同じ意味を持っています。もとは興行師仲間の用語で、「頭を張る」「頭を割る」とも言うのですよ。

その3「搾取」

「搾取(さくしゅ)」とは「階級社会で、生産手段の所有者が生産手段を持たない直接生産者を必要労働時間以上に働かせ、そこから発生する剰余労働の生産物を無償で取得すること」を意味する言葉です。資本家、地主等が、労働者、農民等の労働に対し、それに価するだけの支払いをせず、利益をわがものにすること、搾り取ることを表すのですね。

その4「詐取」

「詐取(さしゅ)」とは「金品をだまして取ること」を意味する言葉です。「搾取」は権力や地位などを利用して利益を「搾り取る」ことを意味するのに対し、「詐取」は「だまし取る」ことを意味します。つまり「詐欺(さぎ)」のことなのですね。

「ピンを撥ねる」の対義語は?

「ピンを撥ねる」と反対の意味を持つ言葉を見ていきましょう。

その1「提供」

「ピンを撥ねる」の明確な対義語はありません。強いてあげるとすれば「提供(ていきょう)」が考えられます。「提供」は「金品・技能などを相手に役立ててもらうために差し出すこと」を意味する言葉です。相手に役に立つように差し出すというのは、「ピンを撥ねる」とは反対の行為ですね。

その2「律儀」

もうひとつ「律儀(りちぎ)」もあげてみます。「律儀」は「きわめて義理堅いこと、実直なこと」を意味する言葉です。自分は何もせずに他人の利益をかすめ取るような、詐欺的な行為、搾取とはまさに対極にある言葉であると言えるのではないでしょうか。

\次のページで「「ピンを撥ねる」の英訳は?」を解説!/

「ピンを撥ねる」の英訳は?

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「ピンを撥ねる」を英語に訳すとどのように表現できるか見ていきましょう。

その1「to get/take a rake-off」

「rake」とは落ち葉を集めたり、地面をならしたりするのに用いる「熊手」のことを意味する単語です。そこから「rake-off」は「リベート、手数料、分け前を取る」という意味を表します。多くは軽蔑的な意味で使われる表現です。そこから「to get/take a rake-off」で「ピンを撥ねる」を表現することができるのですよ。

その2「to get/take a kickback」

「kickback」は「リベート、見返り、割戻金」を意味する単語です。これを用いて「ピンを撥ねる」を表現することができます。なお「kick back」は「リベートとして払う」という意味もあるのですが、実は「くつろぐ、休憩する」という意味もあるのです。文脈によって判断する必要がありそうですね。

The mayor quickly resigned after it was discovered he was taking a rake-off from the local cartel's drug sales.
市長は地元カルテルの麻薬販売組織からピンを撥ねていたことが発覚し、すぐに辞任しました。

He took kickbacks on government contracts.
彼は政府との契約でピンを撥ねていた。

「ピンを撥ねる」を使いこなそう

この記事では「ピンを撥ねる」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「ピンを撥ねる」は「他人に取り次ぐはずの資金や代金の一部を不正にかすめ取ること」を意味する言葉でしたね。せっかくがんばって出した利益を有無を言わせずかすめ取られてしまうなんて、なんだか辛いことです。そんな悪徳な商売をしている人たちに出会いたくはありませんね。そうならないことを願いつつ、「ピンを撥ねる」という言葉、機会がありましたら是非使ってみてくださいね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「ピンを撥ねる」の意味や使い方は?例文や類語を日本文学科卒Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「ピンを撥ねる」について解説する。

端的に言えばピンを撥ねるの意味は「ピンはねをする」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

日本語が好きで日本文学科を卒業したハルを呼んです。一緒に「ピンを撥ねる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ハル

日本語が大好きで日本文学科を卒業。現在は子供が言葉を覚えていく様子を見ながら日本語の奥深さを実感中。多くの人にそのよいところを紹介したいとの思いを込めて丁寧に解説する。

「ピンを撥ねる」の意味や語源・使い方まとめ

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「ピンを撥ねる」という表現をご存知ですか。なんとなく聞いたことがあるような、ちょっと違うようなと思うかもしれませんね。どんな意味を持つ言葉でしょうか。それでは早速「ピンを撥ねる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「ピンを撥ねる」の意味は?

まず初めに、国語辞典で「ピンを撥ねる」の意味を確認してみましょう。「ピンを撥ねる」には、次のような意味があります。

ピンはねをする。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「ピンを撥ねる」

 

取り次いで人に渡すべき金品から、その一部を取って自分のものとすること。上前をはねること。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「ピン撥ね」

「ピンを撥ねる」は「ピンをはねる」と読みます。「ピンを撥ねる」の意味は「ピンはねをする」であると辞書に載っていますね。多くの方が、この「ピン撥ね(ピンはね、ピンハネ)」という言葉の方がなじみがあるのではないでしょうか。「ピン撥ね」とは、「他人に取り次ぐはずの資金や代金の一部を不正にかすめ取ること」を意味します。「上前を撥ねる」と表現されることもありますね。「ピンを撥ねる」は、他人の利益を横取りする、暴利をむさぼるといった悪いイメージ、阿漕(アコギ)なイメージを伴って使われることの多い慣用句です。

「ピンを撥ねる」の語源は?

次に「ピンを撥ねる」の語源を確認しておきましょう。

「ピンを撥ねる」の「ピン」は、「」や「」を意味するポルトガル語の「pinta(ピンタ)」に由来すると言われています。日本では、かるたやサイコロの目で「一」を意味する言葉として「ピンタ」が使われました。そこから転じて「一割」や「一部」を「ピン」と言うようになったのです。賭博用語でも「一」を「ピン」と言うのですよ。

また「撥ねる」は、跳躍することを意味する「跳ねる」と同語源なのですが、少し難しい漢字が使われていますね。この漢字を使った「撥ねる」には「はじき飛ばす」「取り除く」「かすめ取る」「断る、はねつける」といった意味があります。ですから「ピンを撥ねる」は「一部をかすめ取る」という意味を表し、これを略して「ピン撥ね」と言われるようになりました。

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