この記事では「劫臈を経る」について解説する。

端的に言えば劫臈を経るの意味は「年を重ねて、巧くなる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元予備校校舎長で、現在は教育系ライターのみゆなを呼んです。一緒に「劫臈を経る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「劫臈を経る」の意味や語源・使い方まとめ

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慣用句「劫臈を経る」は、一見しただけでは読めない、難しい言い回しですね。読み方は「こうろうをへる」です。やや格式ばった印象もありますが、大人の教養としてはこうした表現も知っておきたいところ。また類義語を見ていくと日常的にも使えるものも出てきますから、まとめて押さえて語彙力を一気にアップさせましょう!

それでは早速「劫臈を経る」の意味や語源・使い方を解説していきます。

「劫臈を経る」の意味は?

「劫臈を経る」には、次のような意味があります。

年功を積んで巧みになる。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「劫臈を経る」

「劫臈を経る」とは、年齢や経験を重ねて物事が上手にこなせるようになる、という意味です。

職人技や専門スキル、また趣味や工芸、さらには人間関係まで、どんなことでもはじめから上手くできるものではありませんよね。失敗し、苦労を重ねることで、徐々に巧みになっていくものです。そんなプロセスを一言で表したのが「劫臈を経る」という慣用表現なのですね。

「劫臈を経る」の由来は?

次に「劫臈を経る」の由来を、漢字1文字ずつの意味から紐解いていきましょう。

まず「劫」は「非常に長い時間」を表しています。仏教も含まれる古代インド哲学における時間の単位で最長のものを指し、その長さは「1つの宇宙が誕生し、消滅するまでの期間」にもなるそうです。

「臈」も仏教の言葉で、年功を積んだ僧、最上位の僧を指しています。転じて年功を積んで長老となった人や、最長老を指すようにもなりました。

この2つの漢字が組み合わさった「劫臈」はとても長い年月という意味になり、「劫臈を経る」はそれだけの長い時間を過ごすということを表しているのですね。

\次のページで「「劫臈を経る」の使い方・例文」を解説!/

「劫臈を経る」の使い方・例文

「劫臈を経る」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.宮大工の修行は10年かかる。まさに劫臈を経て一人前になる世界だ。
2.「猫又」は、飼い猫が劫臈を経て化けた妖怪だと言われている。
3.あの人も若いころは朴訥(ぼくとつ)とした人だったよ。劫臈を経て、すっかり世間ずれしちまったな。

例文1は「年月や経験を積んで巧みになる」、という最もオーソドックスな意味で使われている「劫臈を経る」ですね。職人技の世界というのは、経験を積み、さまざまな方法を知ることが大事。ちょっとやそっとで一人前になれるものではありません。

「劫臈を経る」は、「年月を経てあやしさを帯びてくる」という意味で使われる場合もあります。この意味で使われているのが例文2ですね。「猫又」をはじめ、年老いたり古くなったりしたものは妖怪になると昔の人は考えていたそうです。

また例文3は「年月や経験を経ることで、ずるがしこくなる」というニュアンスが加えられた例になります。「朴訥」とは実直で素朴という意味ですが、歳をとると世間慣れして悪賢くなるというのはよくあることですよね。

「劫臈を経る」の類義語は?違いは?

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「劫臈を経る」と同じ意味を持つ、別の表現を見てみましょう。

その1「甲羅を経る」

甲羅を経る」とは、年数を経て老練になる、経験を重ねるといった意味で、「劫臈を経る」と入れ替えて使える表現です。

「甲羅」は亀の背中にあるものと考えがちですが、実は「こう+ら」と分解できる別の言葉なので注意しましょう。「ら」は接尾語で、「甲」に「功/劫」といった意味合いがかかっています。

\次のページで「その2「亀の甲より年の功」」を解説!/

その2「亀の甲より年の功」

このことわざは聞いたことがある人も多いでしょう。「年の功」は、「年の劫」と書く場合もあります。「劫臈を経る」の「劫」ですね。

亀は長生きする動物として知られていますが、何十年生きたとしても立派になるのは甲羅だけです。一方、人間は長生きして歳や経験を積み重ねるごとに、知恵や知見が広がり、人間的に成熟していきます。このことから「経験を積んでいる年長者には、それだけの知恵や技能がある」と年長者を敬い称賛する表現が、「亀の甲より年の功」です。

「劫臈を経る」の対義語は?

「劫臈を経る」と対義になる表現を見てみましょう。対になる表現はありませんが、意味の上で反対になるものを探してみました。

「浅学非才」

浅学非才(せんがくひさい)」とは、「学問や知識が浅い、才能が乏しいなどの理由から、まだ未熟である」という意味を表します。学問や知識が浅いのは、年月や経験が不足していることが原因なことが多いですから、「劫臈を経る」と対になる四字熟語と言えますね。

「劫臈を経る」の英訳は?

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「劫臈を経る」とはいかにも日本語的な表現だという気もしますが、英語で言いたいときはどのように表現すればよいのでしょうか。

その1「to become skilled through years of experience」

to become skilled through years of experience」は「年月を経て巧みになる」という意味合いを直訳したものです。「劫臈を経る」という難しい言い回しを使わずとも、説明的に表現するだけで英語圏の方には伝わりますよ。

その2「Years know more than books」

直訳ではなく、洗練された言い回しをしたいときは英語のことわざを使ってみましょう。「Years know more than books.」は、「本より年月のほうが沢山知っている」と訳せますが、つまり「年齢を重ねた方が、知識や経験をより多く得られる」という意味を表しています。まさに「劫臈を経る」ですね。

また「Experience is the best teacher.」(経験は最高の先生だ)も同じように使えます。

\次のページで「「劫臈を経る」を使いこなそう」を解説!/

「劫臈を経る」を使いこなそう

この記事では「劫臈を経る」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「劫臈を経る」は年月や年齢、経験を重ねて巧みになるという意味でしたね。若さには若さの、年長者には年長者の良さがあります。若く未熟だからと言ってひけめを感じる必要はありませんし、年長者の声を無視するというのも勿体ないものです。お互いに歩み寄り、上手に付き合っていきたいものですね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「劫臈を経る」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校校舎長がわかりやすく解説!

この記事では「劫臈を経る」について解説する。

端的に言えば劫臈を経るの意味は「年を重ねて、巧くなる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元予備校校舎長で、現在は教育系ライターのみゆなを呼んです。一緒に「劫臈を経る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「劫臈を経る」の意味や語源・使い方まとめ

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慣用句「劫臈を経る」は、一見しただけでは読めない、難しい言い回しですね。読み方は「こうろうをへる」です。やや格式ばった印象もありますが、大人の教養としてはこうした表現も知っておきたいところ。また類義語を見ていくと日常的にも使えるものも出てきますから、まとめて押さえて語彙力を一気にアップさせましょう!

それでは早速「劫臈を経る」の意味や語源・使い方を解説していきます。

「劫臈を経る」の意味は?

「劫臈を経る」には、次のような意味があります。

年功を積んで巧みになる。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「劫臈を経る」

「劫臈を経る」とは、年齢や経験を重ねて物事が上手にこなせるようになる、という意味です。

職人技や専門スキル、また趣味や工芸、さらには人間関係まで、どんなことでもはじめから上手くできるものではありませんよね。失敗し、苦労を重ねることで、徐々に巧みになっていくものです。そんなプロセスを一言で表したのが「劫臈を経る」という慣用表現なのですね。

「劫臈を経る」の由来は?

次に「劫臈を経る」の由来を、漢字1文字ずつの意味から紐解いていきましょう。

まず「劫」は「非常に長い時間」を表しています。仏教も含まれる古代インド哲学における時間の単位で最長のものを指し、その長さは「1つの宇宙が誕生し、消滅するまでの期間」にもなるそうです。

「臈」も仏教の言葉で、年功を積んだ僧、最上位の僧を指しています。転じて年功を積んで長老となった人や、最長老を指すようにもなりました。

この2つの漢字が組み合わさった「劫臈」はとても長い年月という意味になり、「劫臈を経る」はそれだけの長い時間を過ごすということを表しているのですね。

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