この記事では「口を滑らす」について解説する。

端的に言えば口を滑らすの意味は「うっかり言ってしまう」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、ロシアで2年間日本語教師として働いた大学院生ライターの「むかいひろき」を呼んです。一緒に「口を滑らす」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間日本語教師として働いた経験を持つ大学院生。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「口を滑らす」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「口を滑らす」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「口を滑らす」の意味は?

「口を滑らす」には、次のような意味が国語辞典に掲載されています。

言ってはならないことをうっかり口に出して言う。「酒席でつい―・してしまった」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「口(くち)を滑ら・す」

口を滑らす」は、「言ってはならないことをうっかり言ってしまう」という意味の慣用句です。何か秘密にしていることや、他の人に言ってはいけないことを、誤って他の人に言ってしまった場合に主に使われます。「うっかり」や「思わず」といった単語とセットで使われることが多いですね。

「口を滑らす」の語源は?

次に「口を滑らす」の語源を確認しておきましょう。

「口を滑らす」の語源はよく分かっていません。ただ、「滑る」という言葉自体に「調子に乗ったまま、事が望ましくないところにまで至る。余計なことを言ったり書いたりしてしまう」という意味が古文からあり、「口が滑る」という言葉も、江戸時代初期(1603~1604年頃)にイエズス会が作った『日葡辞書』に掲載されているので、かなり古くから使用されている表現だと推定できます。

\次のページで「「口を滑らす」の使い方・例文」を解説!/

「口を滑らす」の使い方・例文

「口を滑らす」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.俺がさつきのことを好きなのは内緒だからな!絶対にみんなに口を滑らすなよ!
2.家でお酒を飲んでいて、酔っぱらって浮気相手のことをうっかり口を滑らしてしまった。
3.田中容疑者は共犯者について黙秘を続けていたが、石井刑事の巧みな質問によって、ついに共犯者の名前について思わず口を滑らした

例文1では、「絶対みんなに俺がさつきのこと好きだって言うなよ!」という文脈で「口を滑らす」が使用されています。高校生くらいまでは、自分の好きな人を他人にバラされると恥ずかしいですよね。ただ、「口を滑らすな」と念を押しても、あっという間にうわさになって広がってしまうんですがね…。

例文2では、「酔っぱらって浮気相手のことを間違って言ってしまった」という文脈で「口を滑らす」が使用されています。お酒を飲んで酔っ払ってしまうと、無意識のうちに秘密や言ってはならないことを言ってしまいますよね。気をつけましょう。そもそも浮気はダメです。

例文3では、「ついに隠していた共犯者の名前について言及した」という文脈で「口を滑らす」が使用されています。刑事さんは尋問のプロですからね。ちょっとやそっとの嘘はバレて、核心を突かれてしまうでしょう。

「口を滑らす」の類義語は?違いは?

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「口を滑らす」の類義語は「口が滑る」です。意味や違いを確認していきましょう。

「口が滑る」

口が滑る」は、「言ってはならないことをうっかり言ってしまう」という意味の慣用句です。「口を滑らす」と全く同じ意味ですね。「口が滑る」と「口を滑らす」な間に、ニュアンスや使われ方の違いは特にありません。「口が滑る」と「口を滑らす」は共に言い換え可能です。

例文を見てみましょう。

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・明日はわたしが担当している中文読解初級と初中級のクラスの試験なのだが、今日学生の質問に対して、うっかりテストの問題の答えを1つ口が滑って言ってしまった。
・B氏のYouTubeの動画を見たけど、口が滑ってとんでもない差別的な内容を話しているね。低評価の数もすごい。これは炎上するだろうなぁ。

「口を滑らす」の対義語は?

「口を滑らす」の対義語は「口が堅い」です。意味や使い方を確認していきましょう。

「口が堅い」

口が堅い」は「言うべきでないことをむやみに他言しない」という意味の慣用句です。「言ってはならないことをうっかり言ってしまう」という意味の「口を滑らす」とは、まさに反対の意味の言葉だと言えるでしょう。

なお、漢字は「固い」や「硬い」ではなく、「堅い」が正しいです。

例文を確認してみましょう。

・藤木さんはとても口が堅いし真面目なので、機密情報の管理の仕事は彼女に一任している。
・この会議の内容は絶対に漏れてはならない。よって、口が堅いメンバーしか呼ばなかった。

「口を滑らす」の英訳は?

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「口を滑らす」の英語表現は「a slip of the tongue」です。意味や使い方を確認していきましょう。

「a slip of the tongue」

a slip of the tongue」は、直訳すると「舌が滑る」となります。意味は日本語の「口を滑らす」や「口が滑る」と同じです。日本語では「口」ですが、英語では「舌」になるのは面白いですね。

例文を確認してみましょう。

\次のページで「「口を滑らす」を使いこなそう」を解説!/

A slip of the tongue often brings about unexpected results.
・うっかり口を滑らしてしまうと、とんでもない結果を招くことが多い。

・We are careful not to get drunk and have a slip of the tongue.
・私たちは酔っ払って口を滑らさないように気をつけます。

「口を滑らす」を使いこなそう

この記事では「口を滑らす」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「口を滑らす」は、「言ってはならないことをうっかり言ってしまう」という意味の慣用句です。何か秘密にしていることや、他の人に言ってはいけないことを、誤って他の人に言ってしまった場合に主に使われます。

類義語で紹介した「口が滑る」は同じ意味・ニュアンスの言葉です。

皆さんも、うっかり口を滑らすことがないよう、気をつけてくださいね!

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国語言葉の意味

【慣用句】「口を滑らす」の意味や使い方は?例文や類語を元日本語教師の大学院生がわかりやすく解説!

この記事では「口を滑らす」について解説する。

端的に言えば口を滑らすの意味は「うっかり言ってしまう」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、ロシアで2年間日本語教師として働いた大学院生ライターの「むかいひろき」を呼んです。一緒に「口を滑らす」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間日本語教師として働いた経験を持つ大学院生。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「口を滑らす」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「口を滑らす」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「口を滑らす」の意味は?

「口を滑らす」には、次のような意味が国語辞典に掲載されています。

言ってはならないことをうっかり口に出して言う。「酒席でつい―・してしまった」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「口(くち)を滑ら・す」

口を滑らす」は、「言ってはならないことをうっかり言ってしまう」という意味の慣用句です。何か秘密にしていることや、他の人に言ってはいけないことを、誤って他の人に言ってしまった場合に主に使われます。「うっかり」や「思わず」といった単語とセットで使われることが多いですね。

「口を滑らす」の語源は?

次に「口を滑らす」の語源を確認しておきましょう。

「口を滑らす」の語源はよく分かっていません。ただ、「滑る」という言葉自体に「調子に乗ったまま、事が望ましくないところにまで至る。余計なことを言ったり書いたりしてしまう」という意味が古文からあり、「口が滑る」という言葉も、江戸時代初期(1603~1604年頃)にイエズス会が作った『日葡辞書』に掲載されているので、かなり古くから使用されている表現だと推定できます。

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