この記事では「鬼籍に入る」について解説する。

端的に言えば鬼籍に入るの意味は「人が亡くなる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元予備校校舎長で教育系ライターのみゆなを呼んです。一緒に「鬼籍に入る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「鬼籍に入る」の意味や語源・使い方まとめ

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「鬼籍に入る」、読み方は「きせきにいる」です。「はいる」と読むのは誤りなので、はじめに押さえておきましょう。さて「鬼籍に入る」という慣用句は「鬼」という字が使われていますが、一体どういう意味なのでしょう?実は日常的にも使える表現である「鬼籍に入る」を、由来にまでさかのぼって解説します。正しい意味をおさえ、ぜひあなたのボキャブラリーに加えてくださいね。

それでは早速「鬼籍に入る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「鬼籍に入る」の意味は?

「鬼籍に入る」には、次のような意味があります。

死んで鬼籍に名を記入される。死亡する。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「鬼籍に入る」

「鬼籍に入る」は、平易な言い方をすると「人が亡くなる、死亡する」という意味です。人の死というのはとてもデリケートな話題ですから、「死ぬ」という直接的な表現を避けたい場面の方が多いですよね。しかも格式ばった場ではなおさら、亡くなった人に敬意を込め、残された方にもお悔やみを伝えられるようなかしこまった言い回しが欲しくなります。

そんな場面で使える表現が「鬼籍に入る」です。次に解説する「由来」を見ると、「鬼籍に入る」という表現がどんなシチュエーションで使えるかより理解できますよ。

「鬼籍に入る」の由来は?

「鬼籍に入る」の「鬼籍」とは、死者の名前が書かれている台帳のことです。といっても戸籍のように実際に存在するものではありません。仏教や民間信仰で言い伝えられてきたもので、地獄の閻魔大王が持っているとされています。

」は昔話などに登場する「赤鬼、青鬼」ではなく、死者の霊魂を一般的に指す表現です。「死者の霊魂が記されている籍(書物)」が「鬼籍」で、「鬼籍に入る」とは名前が鬼籍に記されること、つまり死ぬことを意味します。

平安時代以降の説話では、たまたま近くに同姓同名の者が住んでいたために、閻魔大王の手元で鬼籍記録の不備があり、本来ではない別の人が死んでしまった…、という話もよく見られました。

\次のページで「「鬼籍に入る」の使い方・例文」を解説!/

「鬼籍に入る」の使い方・例文

「鬼籍に入る」は実際の使い方を見てみると、使う場面がイメージしやすいかもしれませんね。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.あの凄惨な体験を生き延びた方も、大半が鬼籍に入られた。今後、証言を聞くことは難しくなるだろう。
2.昨夜、弊社の会長が鬼籍に入りました。通夜は近親者のみで執り行い、告別式は明後日となる予定です。
3.伝説のスーパースターが鬼籍に入ってから、早いもので今年で20年になる。

例文を見るとわかるように、「亡くなる」という言い方では故人や関係者への思いが表現し切れない場面で使えるのが「鬼籍に入る」です。かしこまった言い回しでもありますので、フォーマルな場面でも使えますよ。

たとえば戦争体験がある方も、年々少なくなっています。あの戦争を生き延びた方が無くなったということを敬意を込めて表現しているのが、例文1ですね。例文2は謙譲的なニュアンスを込めて使っている例です。告別式に参列することになる会社の関係者に対して、故人に代わって謝意を表したい気持ちが伝わりますね。

「鬼籍に入る」は直接の知り合いではなくても使えます。例文3がその使用例です。

「鬼籍に入る」の類義語は?違いは?

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「鬼籍に入る」と同じ意味を持つ言葉を見てみましょう。1つの言葉だけではなく同義語をまとめて覚えてしまうと、語彙力が一気にアップしますよ。

その1「鬼録に登る」

「鬼籍に入る」と同じ意味構造をしているのが、「鬼録に登る」です。また「鬼籍に上る」という言い方もします。いずれも死者の情報が書かれている台帳に名前が載る、つまり「亡くなる」という意味です。

\次のページで「その2「白玉楼中の人となる」」を解説!/

その2「白玉楼中の人となる」

とくにすぐれた文人が亡くなったときに使いたいのが「白玉楼中の人となる(はくぎょくろうちゅうのひととなる)」です。

古代中国のすぐれた詩人が病に伏せっていたときに、天から使いがきていうことには「白玉楼という素晴らしい建物が天上に完成したから、お前も来なさい」とお召しがあったと。そして詩人は天に召された、という話からきています。

その3「仏になる」

仏になる」は「亡くなる、死亡する」の婉曲表現ですね。浄土宗の教えでは、あの世からお迎えに来るのは「仏さま(阿弥陀如来)」だとされていました。このことから、死ぬことを「仏になる」と言うようになったと言われています。

「鬼籍に入る」の対義語は?

慣用句やことわざで「鬼籍に入る」と対義になる表現はありません。ここでは「亡くなる」という意味と対義になる言葉を見てみましょう。

その1「誕生する」

「鬼籍に入る」は人が亡くなる、死亡するという意味でしたね。その対極にあるのは「誕生」です。その他、「産まれる」「生誕」「降誕」なども同じように使えます。

その2「生存している」

「亡くなる」と対義になる言葉には「生存している」もあげられますね。「生きている」「命ある」なども押さえておきましょう。

「鬼籍に入る」の英訳は?

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「鬼籍」は仏教概念なので、直訳はできません。「亡くなる」を英語で婉曲的に表現したものを見てみましょう。

\次のページで「その1「join the majority」」を解説!/

その1「join the majority」

英語で「亡くなる」を婉曲的に言いたいときは、「join the majority」と言いましょう。あるいは「go over to the majority」と言ってもOKです。「majority」は「多数派」という意味ですが、生きている人より亡くなった人の数の方が圧倒的に多いことからきていると考えられています。

その2「to pass away」

to pass away」も「亡くなる」を遠回しに言いたいときに役立ちます。ここでの「pass」は「通り過ぎる、消え去る」という意味、「away」は「どこか遠くへ」という意味です。この2つの単語が組み合わさったことで、「どこか知らない遠くに消えて行ってしまう=死ぬ」という意味になります。

「鬼籍に入る」を使いこなそう

この記事では「鬼籍に入る」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「鬼籍に入る」は「亡くなる」の婉曲表現で、格式ばった場面や直接的に「死ぬ」と言うのがふさわしくない場面で使えることが分かりましたね。また「鬼」の由来や日本人とのつながりも意外なものがありましたね。

教養ある大人は、直接的な言い回しを避けるさまざまな表現を知っているもの。「鬼籍に入る」もぜひ今日から、語彙に加え活用してみてくださいね。

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【慣用句】「鬼籍に入る」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校校舎長がわかりやすく解説!

この記事では「鬼籍に入る」について解説する。

端的に言えば鬼籍に入るの意味は「人が亡くなる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元予備校校舎長で教育系ライターのみゆなを呼んです。一緒に「鬼籍に入る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「鬼籍に入る」の意味や語源・使い方まとめ

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「鬼籍に入る」、読み方は「きせきにいる」です。「はいる」と読むのは誤りなので、はじめに押さえておきましょう。さて「鬼籍に入る」という慣用句は「鬼」という字が使われていますが、一体どういう意味なのでしょう?実は日常的にも使える表現である「鬼籍に入る」を、由来にまでさかのぼって解説します。正しい意味をおさえ、ぜひあなたのボキャブラリーに加えてくださいね。

それでは早速「鬼籍に入る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「鬼籍に入る」の意味は?

「鬼籍に入る」には、次のような意味があります。

死んで鬼籍に名を記入される。死亡する。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「鬼籍に入る」

「鬼籍に入る」は、平易な言い方をすると「人が亡くなる、死亡する」という意味です。人の死というのはとてもデリケートな話題ですから、「死ぬ」という直接的な表現を避けたい場面の方が多いですよね。しかも格式ばった場ではなおさら、亡くなった人に敬意を込め、残された方にもお悔やみを伝えられるようなかしこまった言い回しが欲しくなります。

そんな場面で使える表現が「鬼籍に入る」です。次に解説する「由来」を見ると、「鬼籍に入る」という表現がどんなシチュエーションで使えるかより理解できますよ。

「鬼籍に入る」の由来は?

「鬼籍に入る」の「鬼籍」とは、死者の名前が書かれている台帳のことです。といっても戸籍のように実際に存在するものではありません。仏教や民間信仰で言い伝えられてきたもので、地獄の閻魔大王が持っているとされています。

」は昔話などに登場する「赤鬼、青鬼」ではなく、死者の霊魂を一般的に指す表現です。「死者の霊魂が記されている籍(書物)」が「鬼籍」で、「鬼籍に入る」とは名前が鬼籍に記されること、つまり死ぬことを意味します。

平安時代以降の説話では、たまたま近くに同姓同名の者が住んでいたために、閻魔大王の手元で鬼籍記録の不備があり、本来ではない別の人が死んでしまった…、という話もよく見られました。

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