この記事では「烏賊の甲より年の劫」について解説する。

端的に言えば烏賊の甲より年の劫の意味は「年長者の経験は役に立つ」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

自治体広報紙の編集を8年経験した弘毅を呼んです。一緒に「烏賊の甲より年の劫」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/八嶋弘毅

自治体広報紙の編集に8年携わった。正確な語句や慣用句の使い方が求められるので、正しい日本語の使い方には人一倍敏感。

「烏賊の甲より年の劫」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「烏賊の甲より年の劫」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「烏賊の甲より年の劫」の意味は?

「烏賊の甲より年の劫」には、次のような意味があります。

年功は積めば積むだけ価値がある。年長者の経験は重んじなければならないということ。亀の甲より年の功。

出典:広辞苑(岩波書店)「烏賊の甲より年の劫」

「烏賊の甲より年の劫」「いかのこうよりとしのこう」と読みます。「劫」「ごう」という読み方が普通ですが「こう」とも読み、「長い時間」を意味する漢字です。ほとんどの人が「烏賊の甲より年の劫」よりも「亀の甲より年の功」ということわざのほうがおなじみではないでしょうか。どちらも意味は同じで、お年寄りは豊富な経験を積んでおり、その知恵は決して軽んじてはならないという戒めの意味があるのです。

あなたが新入社員として会社に就職しても、ベテランの行動力は若い人に劣るかもしれませんが仕事のコツをよく心得ており、あなたの先生として教科書的存在の人もたくさんいます。トラブルが起こっても安心して処理を任せることができる貴重な存在です。その経験値は新入社員とは比較になりません。

「烏賊の甲より年の劫」の語源は?

次に「烏賊の甲より年の劫」の語源を確認しておきましょう。「烏賊の甲」とはイカが体内に持つ舟形の部位のことです。石灰質のため堅く、この部分を乾燥させてインコなどの餌にします。一般に「いかのふね」と呼ばれる部分です。イカの寿命は1年前後程度だそうですから、あまり人間の寿命と比べても意味がありません。それよりも1万年生きると言われる亀と比較した「亀の甲より年の功」のほうが適当ではないでしょうか。

いずれにしても、亀やイカの甲よりも経験を重ねたお年寄りの知恵のほうが役に立つということを表現しています。「烏賊の甲」「亀の甲」「年の劫(功)」「こう」とのリズム感からくるおもしろさから発生した一種の言葉遊びです。現在人気のディスコクラブでのラップミュージックのようなものと同じ韻を踏んだものと考えればいいでしょう。

\次のページで「「烏賊の甲より年の劫」の使い方・例文」を解説!/

「烏賊の甲より年の劫」の使い方・例文

「烏賊の甲より年の劫」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、例えば以下のように用いられます。

1.どんな仕事も長くやっていれば達人になれる。烏賊の甲より年の劫だよ。
2.あの女性は以前保険の外交員を長年経験していたらしいけど、転職してきてすぐに月間契約ランキングのトップだよ。やっぱり烏賊の甲より年の劫だね。
3.不動産の買取・売却サイトは、烏賊の甲より年の劫で長年運営しているところが信用できるよ。

「烏賊の甲より年の劫」は多分に言葉遊びの傾向があり、キーワードとなるのは「年の劫」でしょう。仕事の現場では、年齢を重ねるにつれインターネットの普及に伴う各種IT用語の氾濫についていけなかったり、メールのやり取りが苦手な人も出てくるものです。

しかし、そのようなマイナス面を長年培ってきた経験や知識でカバーし、リーダーとして部下をゼロから教育していく必要があります。たまにはポケットマネーでみんなに食事をおごってあげることも大切です。それが日本のビジネスライフと考え行動すれば、若手社員はあなたのサポーターとしてしっかり働いてくれるでしょう。

「烏賊の甲より年の劫」の類義語は?違いは?

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ここでは「烏賊の甲より年の劫」の類義語を見ていきましょう。

その1「松笠より年嵩」

「松笠より年嵩」「烏賊の甲より年の劫」の類義語です。「年嵩」とは年数を重ねたことを言い、「年の劫」と同じ意味を持っています。「松笠」「烏賊の甲」同様語呂合わせに使われたもので、深い意味はありません。

\次のページで「その2「老いたる馬は道を忘れず」」を解説!/

その2「老いたる馬は道を忘れず」

「老いたる馬は道を忘れず」「烏賊の甲より年の劫」の類義語に挙げてもいいでしょう。「老いたる馬は道を忘れず」は中国戦国時代の法家・韓非の著書『韓非子』説林(ぜいりん)篇の一節が由来となっています。春秋時代の斉の君主・桓公(かんこう)に仕えていた管仲(かんちゅう)が道に迷ったときに、老馬を放してそのあとについていったら、無事故国に帰ることができたという故事から生まれた言葉です。

その3「医者と味噌は古いほどよい」

「医者と味噌は古いほどよい」「烏賊の甲より年の劫」の類義語です。医者は経験を積んだお年寄りのほうが診断が正しくて治療も安心して任せられるし、味噌も年月を経たもののほうが熟成していてよりおいしいということを意味しています。

「烏賊の甲より年の劫」の対義語は?

次に「烏賊の甲より年の劫」の対義語を見ていきましょう。

その1「麒麟も老いては駑馬に劣る」

「烏賊の甲より年の劫」の対義語として最初に「麒麟(きりん)も老いては駑馬(どば)に劣る」を挙げておきましょう。「麒麟」は伝説上の生き物で、1日に千里を走る優秀な馬とされています。一方「駑馬」とは年を取って歩みの遅い馬のことです。いかに優れた麒麟でも、年を取ると駑馬より足が遅くなるという意味で、優秀な人物でも年を取ると普通の人にも劣ることの例えとして使われます。

その2「出藍の誉れ」

「出藍の誉れ(しゅつらんのほまれ)」は弟子の才能が師匠より優れていることを表しており、必ずしも年功が優劣を決定するわけではないという意味で「烏賊の甲より年の劫」の対義語と言えます。青色の染料は藍(あい)から取りますが、藍よりさらに青くなるところから出た言葉です。別の言い方で「青は藍より出でて藍より青し」とも言います。

「烏賊の甲より年の劫」の英訳は?

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最後に「烏賊の甲より年の劫」の英訳を見ていきましょう。

\次のページで「その1「sense comes with age」」を解説!/

その1「sense comes with age」

「sense comes with age」「sense」という単語は、普通「感覚」とかそのまま「センス」を意味しますが、「思慮・分別」という意味もあります。したがって「sense comes with age」「年齢を重ねるごとに思慮・分別がつく」となり「烏賊の甲より年の劫」の英語訳と言えるでしょう。

その2「years bring wisdom」

「years bring wisdom」「年齢は知恵をもたらす」となり、やはり「烏賊の甲より年の劫」の英語訳と言えます。

その3「age and experience teach wisdom」

「age and experience teach wisdom」を直訳すると「年齢と経験は知識を教えてくれる」となり、「烏賊の甲より年の劫」の英訳に挙げられます。そのほか「the older the wiser」「烏賊の甲より年の劫」の英語訳として挙げてもいいでしょう。

「烏賊の甲より年の劫」を使いこなそう

この記事では「烏賊の甲より年の劫」の意味・使い方・類語などを説明しました。やはり年とともに熟練した技が鍛えられ、名人と言われる人はいます。いつまでたっても同じ失敗を繰り返しているようでは、そのうち誰からも相手にされなくなるでしょう。どんな世界であれ、一生懸命努力して一人前と認められるように努力を欠かさないようにしたいものです。

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【ことわざ】「烏賊の甲より年の劫」の意味や使い方は?例文や類語を元広報紙編集者がわかりやすく解説!

この記事では「烏賊の甲より年の劫」について解説する。

端的に言えば烏賊の甲より年の劫の意味は「年長者の経験は役に立つ」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

自治体広報紙の編集を8年経験した弘毅を呼んです。一緒に「烏賊の甲より年の劫」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/八嶋弘毅

自治体広報紙の編集に8年携わった。正確な語句や慣用句の使い方が求められるので、正しい日本語の使い方には人一倍敏感。

「烏賊の甲より年の劫」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「烏賊の甲より年の劫」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「烏賊の甲より年の劫」の意味は?

「烏賊の甲より年の劫」には、次のような意味があります。

年功は積めば積むだけ価値がある。年長者の経験は重んじなければならないということ。亀の甲より年の功。

出典:広辞苑(岩波書店)「烏賊の甲より年の劫」

「烏賊の甲より年の劫」「いかのこうよりとしのこう」と読みます。「劫」「ごう」という読み方が普通ですが「こう」とも読み、「長い時間」を意味する漢字です。ほとんどの人が「烏賊の甲より年の劫」よりも「亀の甲より年の功」ということわざのほうがおなじみではないでしょうか。どちらも意味は同じで、お年寄りは豊富な経験を積んでおり、その知恵は決して軽んじてはならないという戒めの意味があるのです。

あなたが新入社員として会社に就職しても、ベテランの行動力は若い人に劣るかもしれませんが仕事のコツをよく心得ており、あなたの先生として教科書的存在の人もたくさんいます。トラブルが起こっても安心して処理を任せることができる貴重な存在です。その経験値は新入社員とは比較になりません。

「烏賊の甲より年の劫」の語源は?

次に「烏賊の甲より年の劫」の語源を確認しておきましょう。「烏賊の甲」とはイカが体内に持つ舟形の部位のことです。石灰質のため堅く、この部分を乾燥させてインコなどの餌にします。一般に「いかのふね」と呼ばれる部分です。イカの寿命は1年前後程度だそうですから、あまり人間の寿命と比べても意味がありません。それよりも1万年生きると言われる亀と比較した「亀の甲より年の功」のほうが適当ではないでしょうか。

いずれにしても、亀やイカの甲よりも経験を重ねたお年寄りの知恵のほうが役に立つということを表現しています。「烏賊の甲」「亀の甲」「年の劫(功)」「こう」とのリズム感からくるおもしろさから発生した一種の言葉遊びです。現在人気のディスコクラブでのラップミュージックのようなものと同じ韻を踏んだものと考えればいいでしょう。

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