この記事では「火に入る虫」について解説する。

端的に言えば火に入る虫の意味は「自分から進んで災いの中に飛び込んでいくこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、ロシアで2年間日本語教師として働いた大学院生ライターの「むかいひろき」を呼んです。一緒に「火に入る虫」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間日本語教師として働いた経験を持つ大学院生。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「火に入る虫」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「火に入る虫」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「飛んで火に入る夏の虫」の意味は?

火に入る虫」は「飛んで火に入る夏の虫ということわざの略語です。よって「飛んで火に入る夏の虫」の意味をまずは確認していきましょう。「飛んで火にいる夏の虫」には次のような意味が国語辞典に掲載されています。

明るさにつられて飛んで来た夏の虫が、火で焼け死ぬ意から、自分から進んで災いの中に飛び込むことのたとえ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「飛(と)んで火(ひ)に入(い)る夏(なつ)の虫(むし)」

「飛んで火にいる夏の虫」の略語表現である「火に入る虫」は、「自分から進んで災いの中に飛び込んでいくこと」という意味のことわざです。「ひにはいるむし」ではありません。「ひにいるむし」と読むので気をつけましょう。

「火に入る虫」の語源は?

次に「火に入る虫」の語源を確認しておきましょう。「火に入る虫」は「飛んで火に入る夏の虫」の略語表現と紹介しましたが、両者の語源はどうなのでしょうか。

皆さんは夏の夜の公園などで、青白い光を放つ街灯を見たことはありませんか?この街灯は「誘蛾灯」といって、蛾などの有害な昆虫や害虫をおびき寄せ、やってきたところを電圧などで殺し駆除してしまう装置です。この装置は、虫の光に集まるという習性を利用して作られています虫はどんなに後で危険なことがあっても習性には逆らえません。ですので、誘蛾灯でほかの虫が殺されていても、どんどん入ってしまうのですね。

そして、かつて電気がない時代はどうだったかというと、夜は明かりを得るために当然ながら火を燃やします。その明るい火に虫がおびき寄せられ、勝手に飛び込んで行って死んでしまう…ということが由来となって「飛んで火に入る夏の虫」「火に入る虫」ということわざが誕生しました。

\次のページで「「火に入る虫」の使い方・例文」を解説!/

「火に入る虫」の使い方・例文

「火に入る虫」の使い方を例文を使って見ていきましょう。

1.(友人に対して)素人が力士に喧嘩を挑むなんて火に入る虫だよ。やめな。
2.今日は課長の機嫌が悪かったのに、不必要なミスを犯してしまった…。めちゃくちゃ怒られるだろうなぁ。火に入る虫だよ
3.Aさんが電車の中で私服の女性警官に痴漢をして現行犯逮捕されたらしい。まさに火に入る虫だよなぁ…。

「火に入る虫」は、「自分から進んで災いの中に飛び込んでいくこと」という意味のことわざでした。実際の文脈では「無謀だから止めなよ!」と誰かの無謀な行為を止める場合や、「やっちゃったよ…」と無謀で危険なことを冒してしまったことについて呆れたり後悔したりする場面で使用されることが多いです。

例文1では、相撲の力士に喧嘩を挑もうとしている友人を、「無謀だから止めておけ」と止めている文脈で「火に入る虫」が使用されています。力士に喧嘩を挑んでも、素人なら簡単に吹っ飛ばされてしまいますよね。

例文2では、「課長の機嫌が悪いのに、ミスまでしてしまった。余計に怒られるだろうな」と後悔している文脈で「火に入る虫」が使用されています。機嫌が悪い上司の前でミス…無謀で危険な行為ですね…。

例文3では「女性警官に痴漢をするなんてなんて危険で無謀なんだ」と呆れている文脈で「火に入る虫」が使用されています。女性警官に痴漢をしたら、当然即刻逮捕されますよね。

「火に入る虫」の類義語は?違いは?

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「火に入る虫」の類義語は「年寄りの冷や水」です。意味や違いを確認していきましょう。

「年寄りの冷や水」

年寄りの冷や水」は「老人が冷水を浴びるような、高齢に不相応な危ない行為や差し出がましい振る舞いをするのを、警告したり冷やかしたりする時に使う表現」です。お年寄りが何の準備もなしにいきなり冷たい水を浴びると、心臓に大きな負担がかかり、最悪の場合死に至ります。このようにお年寄りが、年に相応しくない無謀な行いや危険な行いをする場合に使われるのが、この「年寄りの冷や水」です。「自分から進んで危険な行動をすること」という意味では、「飛んで火に入る夏の虫」と似ていますね。

「年寄りの冷や水」と「火に入る虫」の違いは、その対象です。「年寄りの冷や水」は当然ながらお年寄りしか主語になりません。一方の「火に入る虫」は、お年寄りだけでなく、様々な人や生き物が主語になります。

例文を確認してみましょう。

\次のページで「「火に入る虫」の対義語は?」を解説!/

・認知症の疑いがあるのにまだ運転をしたいだなんて年寄りの冷や水だよ!誰かを殺してしまう前に運転を止めて!
・田中さんは、年寄りの冷や水だという周囲の声など全く気にせず、90歳になった今年もマラソンを続けている。

「火に入る虫」の対義語は?

「火に入る虫」の対義語は「君子危うきに近寄らず」です。意味や例文を確認していきましょう。

「君子危うきに近寄らず」

君子危うきに近寄らず」は「くんし・あやうきに・ちかよらず」と読みます。「賢い人は身を慎み、自ら危険なことは冒さない」という意味のことわざです。「自分から進んで災いの中に飛び込んでいくこと」という意味の「火に入る虫」とは反対の意味だと言えるでしょう。

「君子は危うきに居らず」「賢人危うきを見ず」ということわざもありますが、意味は一緒です。

例文を確認しましょう。

・りょうくん、確かに顔は良いけどよくない噂も聞くよ。君子危うきに近寄らず、付き合うのはやめたほうがいいよ。
・SNSで見かける高額な情報商材とか絶対に買わないほうがいいぞ。君子危うきに近寄らずだ。

「火に入る虫」の英訳は?

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「火に入る虫」を英語で表現すると、「moth flying into the flame」になります。意味や例文を確認していきましょう。

「moth flying into the flame」

moth flying into the flame」は、日本語に直訳すると「炎に飛び込む蛾」という意味になる英語のことわざです。意味は日本語の「火に入る虫」と同じになります。

flame」は「」を意味する英単語です。日本語では「虫」と虫の種類までは特定していませんが、英語では「蛾」になっています。しかし、日本語でも英語でも似たようなことわざが存在するのは面白いですね。

例文を確認していきましょう。

\次のページで「「火に入る虫」を使いこなそう」を解説!/

・It is like a moth flying into the flame.

それは火に入る虫だよ。

「火に入る虫」を使いこなそう

この記事では「火に入る虫」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「火に入る虫」は、「自分から進んで災いの中に飛び込んでいくこと」という意味のことわざで、「飛んで火に入る夏の虫」の略語です。

「無謀だから止めなよ!」と誰かの無謀な行為を止める場合や、「やっちゃったよ…」と無謀で危険なことを冒してしまったことについて呆れたり後悔したりする場面で主に使用されます。

火に入る虫にならないように、無謀なことや危険なことはできる限り避けましょう。

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国語言葉の意味

【ことわざ】「火に入る虫」の意味や使い方は?例文や類語を元日本語教師の大学院生がわかりやすく解説!

この記事では「火に入る虫」について解説する。

端的に言えば火に入る虫の意味は「自分から進んで災いの中に飛び込んでいくこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、ロシアで2年間日本語教師として働いた大学院生ライターの「むかいひろき」を呼んです。一緒に「火に入る虫」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間日本語教師として働いた経験を持つ大学院生。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「火に入る虫」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「火に入る虫」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「飛んで火に入る夏の虫」の意味は?

火に入る虫」は「飛んで火に入る夏の虫ということわざの略語です。よって「飛んで火に入る夏の虫」の意味をまずは確認していきましょう。「飛んで火にいる夏の虫」には次のような意味が国語辞典に掲載されています。

明るさにつられて飛んで来た夏の虫が、火で焼け死ぬ意から、自分から進んで災いの中に飛び込むことのたとえ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「飛(と)んで火(ひ)に入(い)る夏(なつ)の虫(むし)」

「飛んで火にいる夏の虫」の略語表現である「火に入る虫」は、「自分から進んで災いの中に飛び込んでいくこと」という意味のことわざです。「ひにはいるむし」ではありません。「ひにいるむし」と読むので気をつけましょう。

「火に入る虫」の語源は?

次に「火に入る虫」の語源を確認しておきましょう。「火に入る虫」は「飛んで火に入る夏の虫」の略語表現と紹介しましたが、両者の語源はどうなのでしょうか。

皆さんは夏の夜の公園などで、青白い光を放つ街灯を見たことはありませんか?この街灯は「誘蛾灯」といって、蛾などの有害な昆虫や害虫をおびき寄せ、やってきたところを電圧などで殺し駆除してしまう装置です。この装置は、虫の光に集まるという習性を利用して作られています虫はどんなに後で危険なことがあっても習性には逆らえません。ですので、誘蛾灯でほかの虫が殺されていても、どんどん入ってしまうのですね。

そして、かつて電気がない時代はどうだったかというと、夜は明かりを得るために当然ながら火を燃やします。その明るい火に虫がおびき寄せられ、勝手に飛び込んで行って死んでしまう…ということが由来となって「飛んで火に入る夏の虫」「火に入る虫」ということわざが誕生しました。

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