
端的に言えば、口を酸っぱくするの意味は「忠告などを何度も繰り返して言うこと」ことですが、「口を酸っぱくする」のはどんな時かわかるか?
日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。一緒に「口を酸っぱくする」の意味や例文、類義語などを見ていきます。

ライター/ユーリ
日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。時代によって変化する言葉の面白さ、奥深さをやさしく解説する。
「口を酸っぱくする」の意味・語源・例文

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「口を酸っぱくする」はさほど難しい言葉ではありませんが、まず辞書で意味をチェックし、語源と例文についても見ていきましょう。
「口を酸っぱくする」の意味
まずは辞書で「口を酸っぱくする」の意味をチェックしましょう。
忠告などを何度も繰り返して言う。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「口を酸っぱくする」
同じことを繰り返して言うさま、念を入れて何度も繰り返し述べる様子を形容する表現。注意や訓戒の言葉などを指すことが多い。「口を酸っぱくする」「口が酸っぱくなる」などとも言う。
出典:実用日本語表現辞典「口を酸っぱくして言う」
「口を酸っぱくする」は「忠告などを何度も繰り返して言うこと」です。どちらの辞書を見ても、「口を酸っぱくする」のは注意や忠告をするときで、同じことを繰り返して言うのがポイントですね。
「口を酸っぱくする」の語源
「口を酸っぱくする」の語源については諸説あるようです。
まず「口が酸っぱい」と感じるのはどんなときでしょう。口の中は通常中性に保たれていますが、起床したときや緊張したときなど、唾液の分泌量が減って口内が酸性になり、口臭が気になることがあるそうです。ずっと話し続けていると口の中が乾燥して酸性に傾くから、という説があります。
まったく逆の説もありますよ。梅干しを見たり食べたりすると口の中に唾液がわいてきませんか。ずっと話していると口の中が唾液でいっぱいになり、梅干しを食べたときと同じようになるから、という説です。「酸っぱい」という単語を辞書で見ると次のような説明が書いてありました。
[形]酸味がある。口を窄(つぼ)めたくなるような味だ。すい。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「酸っぱい」
「窄める」は「つぼめる」または「すぼめる」と読みます。「狭く小さくする」とか、「開いていたものを閉じる」という意味です。梅干しを食べたときや、レモンをかじったときに思わずしてしまう口の形といったほうがわかりやすいかもしれません。
「口を酸っぱく」して話すときはたいてい小言を言っているときですから、つい梅干しを食べたときのような酸っぱそうな表情になってしまうのかもしれませんね。よく使われる言葉のわりに、語源ははっきりしていないのです。
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「口を酸っぱくする」の例文
次は「口を酸っぱくする」の例文を見ていきましょう。
1.指導係の私があれだけ口を酸っぱくして取扱い方法を説明したのに、あの新人はまた同じミスをやってしまった。
2.先生はA君に「授業中に私語は慎みなさい」と口を酸っぱくして注意したのに、A君には、「馬の耳に念仏」だ。
3.社長は「会社のために何ができるか考えろ」と口を酸っぱくして社員に問いかけているつもりだったが、社員のほうは「耳に胼胝(たこ)ができる」と思うだけだった。
最初の例文は、何度も注意したのに効果がなかったということです。2番目の例文も効果がなかったようですね。「馬の耳に念仏」は「馬にいくらありがたい念仏を聞かせてもまったく無駄」、つまり「いくら意見をしても、耳を傾ける気がなく、まったく効果がない」ことです。
3番目の例文も、社長が口を酸っぱくした効果は出ていないようですね。「胼胝(たこ)」は「凧(たこ)」や「蛸(たこ)」ではなく、絶えず擦れる部分の皮膚が角質化して堅く厚くなったもの。指にできるのはペンだこですね。「耳に胼胝ができる」は「何度も同じことを聞かされて嫌になる」という意味です。
「口を酸っぱくする」に明確な反対語はありませんが、言われた側の否定的な反応としては、「馬の耳に念仏」か「耳に胼胝ができる」といったところでしょう。
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「口やかましい」「口うるさい」:いちいち文句を言う
「口やかましい」は「盛んにしゃべってうるさい」という意味もありますが、「細かいことまでいちいち小言や文句を言う」という意味があります。「口うるさい」も「口やかましい」と同じ意味ですよ。
「念仏のように」「お題目のように」:同じ言葉を何度も言う
「念仏」は「仏の名を唱えること」。「念仏のように」は「同じ言葉を何度も言う」ことです。「お題目」には、「本の題名」や「物事の主題」という意味もありますが、この場合は日蓮宗で唱える「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」のこと。「念仏のように」も「お題目のように」もお経を唱えるように、「何度も同じ言葉を繰り返す」ことを意味しています。
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