今回のテーマは「太陽系外縁天体」です。

太陽系外縁天体とは簡単に言うと「海王星よりも太陽から遠いところを公転している天体」のことです。太陽系の惑星や準惑星が太陽を中心に公転していることはみんな知っているでしょう。海王星は太陽系でもっとも太陽から離れたところにある惑星です。そして太陽系外縁天体は、それよりもずっと遠くに存在している。

今回は太陽系外縁天体について勉強する。解説はこの前初めて流星を見たという、星座について勉強中の科学館職員のたかはしふみかです。

ライター/たかはし ふみか

理科教育に興味があり、理系に進んだリケジョ。実験や科学工作が大好きで、科学館の仕事が楽しくてしょうがない。最近、星空の撮影に興味を持ち始めデジタルカメラを片手に夜空を見あげている。

定義から確認!太陽系外縁天体とは

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最初に桜木先生が説明してくれましたが太陽系外縁天体とは「海王星よりも遠い平均距離で太陽の周りを公転している天体の総称」です。太陽系には8つの惑星があります。

太陽から順に

水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星

です。

海王星は太陽系で最も地球から遠い惑星になります。海王星の平均公転半径は約4,495,060,000 km(45億㎞)です。ちなみに地球の平均公転半径は149,600,000万㎞(1億5千万㎞)。太陽から見て海王星は、地球の30倍近くも遠いのですね。そして太陽系外縁天体は、その海王星はそれよりもさらに遠くにある天体なのです。太陽外縁天体とは単に外縁天体という場合もあります。

太陽系と惑星に関連する記事はこちらです。

海王星のデータ

ボイジャー2号が撮影した海王星の画像。中央に大暗斑とそれに付随した明るい模様が見え、西側の周縁には「スクーター」と呼ばれる、移動速度が速い明るい模様と小さな暗点が見られる。
Justin Cowart - https://www.flickr.com/photos/132160802@N06/29347980845/, パブリック・ドメイン, リンクによる

半径 24,622km

質量 1.02413 ×1026 ㎏

公転周期 約164年

平均公転半径 約4,495,060,000 km(45億㎞)

宇宙の話をする前に

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途方もない宇宙の話に入る前に、天文距離についての紹介です。

宇宙の話をするときに何億㎞と言われてもピンときませんね。そこで天文学で使われている単位のひとつに「天文単位」というものがあります。これは地球と太陽の平均距離を1天文単位としたもので、1天文単位=約1億4960万㎞となるのです。単位は言語によって変わりますが、ここでは英語のAUで解説していきます。

ということは先ほどでてきた海王星。海王星は太陽から4,495,060,000 km(45億㎞)程離れたところにあり、天文単位で表すと30.1AUとなります。

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太陽系外縁天体~遠い惑星たち

太陽系外縁天体についてわかったところで、太陽系外縁天体の種類について確認していきましょう。

冥王星と冥王星型惑星

ニュー・ホライズンズが撮影した冥王星
NASA/JHUAPL/SWRI - solarsystem.nasa.gov, パブリック・ドメイン, リンクによる

最初に発見された太陽系外縁天体は冥王星です。冥王星は楕円形の公転軌道をしていて太陽からの平均距離は39.5AU、59億㎞程になります。

冥王星は1930年に発見され、当初は太陽系9番目の惑星とされていました。しかし2006年にチェコのプラハで開催された国際天文学連合(IAU)の総会によって準惑星と定義されたのです。ちなみにこの会議で 、太陽系外縁天体も定義されました。

太陽系外縁天体の中で大きな準惑星は「冥王星型天体」と呼ばれています。

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2019年2月までに確認されている冥王星型天体は、冥王星の他にエリスマケマケハウメアの3つです。この3つの天体は準惑星になります。準惑星は冥王星型惑星以外にはメインベルト(火星と木星の間の小惑星が集中している領域)にあるケレスしかありません。ただし、セドナという小惑星が将来、冥王星型天体になる可能性があると言われています。

ちょっとわかりづらい天体の種類、惑星・準惑星についてはこちらの記事を参考にして下さいね。

エッジワース・カイパーベルト

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エッジワース・カイパーベルトとは太陽系の海王星軌道 より外側にある、天体が密集したドーナッツのような円盤型の領域のことです。太陽から約30AUのところにある海王星の軌道から 50 AUあたりを指します。

エッジワース・カイパーベルトというこのちょっと覚えづらい名前。これは天文学者の名前が由来となっています。由来となったのはオランダおよびアメリカ合衆国の天文学者ジェラルド・カイパーとアイルランドの天文学者ケネス・エッジワースです。このエッジワース・カイパーベルトにある天体はエッジワース・カイパーベルト天体イパーベルト天体)と呼ばれます。

ふたりがそれぞれエッジワース・カイパーベルトに関する論文を発表したのは1943年、1951年ですが、実際に天王星よりも遠くの天体が見つかったのは1992年のことでした。カイパーベルトで冥王星とその衛星、カロン以外で最初に見つかった天体は先程ちらっと紹介した1992 QB1アルビオンです。その後、カイパーベルト天体は次々と発見され、その数は2018年に2000個を超しています。

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散乱円盤天体

エッジワース・カイパーベルトより外側にあるのは「散乱円盤天体」です。ここにある天体は遠すぎてるため、まだ解明があまり進んでいません。それもそのはず、散乱円盤天体は太陽に近づいた時で約30〜40AU、遠いときだと100AUを超すほど遠くにあるのです。散乱円盤天体は太陽からあまりにも遠く、暗くて見つかっていないものもまだたくさんあると考えられています。

オールトの雲

コトバンクによるとオールトの雲とは「太陽系の最も外側の惑星である海王星の軌道の 1000倍以上の距離を周回していると推測される、球状に分布して存在する膨大な数の氷でできた天体群」とされています。簡単に言うとオールトの雲とは、小さな天体が無数に分布していると予想されている領域のことです。オールトの雲は理論上のものであり、本当に存在するかはまだわかっていません。そのため現在は仮説ではあるものの、否定する根拠もないと言われています。もしかしたらそのうち、オールトの雲の存在が証明される日が来るかもしれませんね。

オールトの雲は太陽系を取り囲むように太陽から1万~10万 AUも離れたところにあると仮定されています。ちなみにこのオールトという名前、この名前の由来も提唱した天文学者です。

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オールトの雲に存在するのは水、一酸化炭素、二酸化炭素、メタンなどの氷が主成分の天体だと考えられています。天体の主成分が氷?と思う人もいるかもしれません。例えば冥王星は内側は水の、表面は一酸化炭素や窒素、メタンの氷でできた惑星です。このような組成であることから天王星型惑星は、巨大氷惑星アイスジャイアント)と呼ばれています。

ここで補足。天体には主成分がガスという惑星もあります。水素やヘリウムからできた天体は巨大ガス惑星ガスジャイアント)と呼ばれ、木星や土星が分類されいているのです。この惑星は木星型惑星ともいいます。さらに地球・水星・金星・火星は岩石や金属などの難揮発性物質から構成され、地球型惑星に分類されえているのです。

この木星型惑星、広い意味では冥王星型惑星も含まれるので注意してください。詳しくはこちらの記事でどうぞ。

遠くにある星、太陽系外縁天体

太陽系外縁天体は最も遠い惑星、海王星よりもずっと遠くにあります。そのため分かっていないことが多く、名前が付けられているものもわずかです。また、まだ仮説の域を出ていない理論もあります。それだけ宇宙は広いのですね。

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地学宇宙理科

太陽系外縁天体って何?最初に発見されたのは冥王星?科学館職員がわかりやすく解説

今回のテーマは「太陽系外縁天体」です。

太陽系外縁天体とは簡単に言うと「海王星よりも太陽から遠いところを公転している天体」のことです。太陽系の惑星や準惑星が太陽を中心に公転していることはみんな知っているでしょう。海王星は太陽系でもっとも太陽から離れたところにある惑星です。そして太陽系外縁天体は、それよりもずっと遠くに存在している。

今回は太陽系外縁天体について勉強する。解説はこの前初めて流星を見たという、星座について勉強中の科学館職員のたかはしふみかです。

ライター/たかはし ふみか

理科教育に興味があり、理系に進んだリケジョ。実験や科学工作が大好きで、科学館の仕事が楽しくてしょうがない。最近、星空の撮影に興味を持ち始めデジタルカメラを片手に夜空を見あげている。

定義から確認!太陽系外縁天体とは

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最初に桜木先生が説明してくれましたが太陽系外縁天体とは「海王星よりも遠い平均距離で太陽の周りを公転している天体の総称」です。太陽系には8つの惑星があります。

太陽から順に

水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星

です。

海王星は太陽系で最も地球から遠い惑星になります。海王星の平均公転半径は約4,495,060,000 km(45億㎞)です。ちなみに地球の平均公転半径は149,600,000万㎞(1億5千万㎞)。太陽から見て海王星は、地球の30倍近くも遠いのですね。そして太陽系外縁天体は、その海王星はそれよりもさらに遠くにある天体なのです。太陽外縁天体とは単に外縁天体という場合もあります。

太陽系と惑星に関連する記事はこちらです。

海王星のデータ

半径 24,622km

質量 1.02413 ×1026 ㎏

公転周期 約164年

平均公転半径 約4,495,060,000 km(45億㎞)

宇宙の話をする前に

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途方もない宇宙の話に入る前に、天文距離についての紹介です。

宇宙の話をするときに何億㎞と言われてもピンときませんね。そこで天文学で使われている単位のひとつに「天文単位」というものがあります。これは地球と太陽の平均距離を1天文単位としたもので、1天文単位=約1億4960万㎞となるのです。単位は言語によって変わりますが、ここでは英語のAUで解説していきます。

ということは先ほどでてきた海王星。海王星は太陽から4,495,060,000 km(45億㎞)程離れたところにあり、天文単位で表すと30.1AUとなります。

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