この記事では「狐と狸」について解説する。

端的に言えば、狐と狸の意味は「くせ者同士」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元新聞記者で、ライター歴20年のトラコを呼んです。一緒に「狐と狸」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/トラコ

全国紙の記者を7年。その後、雑誌や書籍、Webでフリーの記者などとして活動中。文字の正確さ、使い方に対するこだわりは強い。

「狐と狸」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速、「狐と狸」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「狐と狸」の意味は?

「狐と狸」は、ことわざや慣用句に分類されます。この狐と狸は、誰もが知る通り、いずれも動物です。しかし、ただ単に、動物である狐と狸、という意味では、もちろんありません。

この「狐と狸」の意味を知るには、「狐と狸の化かし合い」が言葉の由来です。次のような意味があります。

《狐も狸も人を化かすといわれるところから》悪賢い者どうしが互いにだまし合うことのたとえ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「狐(きつね)と狸(たぬき)の化かし合い」

「狐と狸の化かし合い」の、この狐(きつね)と狸(たぬき)は、いずれも、人間をだます生き物である動物、つまり、悪知恵の働く者同士が、お互いにだまし合うという意味の故事ことわざです。

狐も狸も、昔から、事あるごとに変身したり、幻覚などの特殊能力を使ったりすると信じられてきました。それで、狐と狸は、ずる賢い者、曲者、悪巧みをする者といった人のたとえで、今も使われています。

「狐と狸」の語源は?

次に「狐と狸」の語源を、確認しておきましょう。

日本では古来から、狐と狸は、悪賢くて人間をだましたり、ウソをついたりする動物と、昔話などに登場してきました。そのため、狐と狸というと、悪賢くて人をだます者のたとえで使われるようになったと考えられます。「狐と狸の化かし合い」も同様。

「狐七化け、狸は八化け」ということわざもあります。いずれも化ける数であり、狐より狸のほうが化けるのが上手という意味です。

\次のページで「「狐と狸」の使い方・例文」を解説!/

「狐と狸」の使い方・例文

「狐と狸」の使い方を、例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.人気スターのチケット販売当日、情報が錯そうしたのに加え、行列をちゃんと守らず、たくさんのファン同士がまるで狐と狸の化かし合いのようだった。
2.過去にテレホンサービスの仕事をやっていた時、運営者とグループ会社の仲がとても悪く、狐と狸のようにけちのつけ合いで、毎日が地獄の体験をした。
3.魚釣りの場所取りは、まるで狐と狸の化かし合いのごとく、正直者がばかを見る。本当におすすめの場所は、みんなには絶対教えない。

それでは、それぞれの例文について、解説していきます。

例文1は、「狐と狸の化かし合い」というおなじみの故事ことわざがそのまま使われている文章。例文2は、狐と狸が動物ではなく、だまし合いや裏でこそこそと悪だくみをする者たちといった意味で用いられている文章です。

例文3も、お互いをだまし合うという意味の「狐と狸の化かし合い」が文章で用いられています。

「狐と狸」の類義語は?違いは?

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次に、「狐と狸」の類義語(類語)を見てみましょう。

「狐と狸」の類義語として考えられる言葉として、共犯者、くせ者同士、同じ穴の狢、狐狸、ペテン師、やり方が汚い、詐欺的な、だまし合い、陰謀、どっちもどっち、似たり寄ったりなど。

その1「くせ者」

「狐と狸」は、くせ者同士という意味もあります。この「くせ者」とは、そもそもいったいどういう意味なのでしょうか。

くせ者は、漢字で「曲者」「癖者」と書きます。意味は、盗賊などの怪しい者のほか、ひと癖あるしたたかな人物、表に現れていない何かを秘めて油断できない人、普通と違う並々ならぬ人物など。

「狐と狸」に近い意味は、ひと癖ある人物が該当します。「くせ者ぞろい」といった使い方が一般的です。

\次のページで「その2「同じ穴の狢」」を解説!/

その2「同じ穴の狢」

「同じ穴の狢」は、おなじあなのむじな、と読み、「狐と狸」と同じ、故事ことわざです。

意味は、一見すると違うように見えても、同類や仲間であることのたとえ。特に、通常は悪事を働く同類、つまり悪党同士という意味で使われます。この貉(むじな)は、狸に似たアナグマの異名で、山林に深い穴を掘って生息する動物です。

ちなみに、「同じ穴の狐」「同じ穴の狸」も同じ意味なので、合わせて覚えておきましょう。

その3「狐狸」

「狐狸」は、こり、と読みます。きつねたぬき、とは読まないので注意しましょう。

この「狐狸」の意味はずばり、狐と狸です。特に、「狐狸妖怪」という四字熟語でおなじみ。狐狸妖怪の意味は、人をだましたり、恐れさせたりする化け物ののことだったり、悪事を働く者たちのこと。

また、「狐狸の輩」という言葉もあります。人をだまして裏で悪事を行う者という意味。「狐と狸」と同じ意味です。

「狐と狸」の対義語は?

続いて、「狐と狸」の対義語(反対語)について。

そもそも「狐」と「狸」は、同義語であると同時に、対義語でもあります。そのため、「狐と狸」と正反対の意味を持つ対義語がピンポイントであるかというと、きわめて厳しいです。

あえて、逆の意味を持つ言葉を考えてみると、正直者、真面目、真っすぐ、率直、お人よし、真人間、誠実、などが該当するでしょう。

「狐と狸」の英訳は?

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さらに、「狐と狸」の英訳も、確認しておきましょう。

「狐と狸」をそのまま日本語から英語に翻訳すると、fox and badgerfox and racoon dog などですが、これはただの直訳。

「狐と狸の化かし合い」は、例えば、try to out fox each other などとなります。

「try to out fox each other」

「狐と狸」は、悪賢い者同士、という意味の場合、英語で表現すると、try to out fox each other が正しいです。

「try to」は、~しようとする。「out」はここでは動詞で、暴露するという意味。「fox」は狐(キツネ)で、「each other」はお互いという意味です。

狐がお互いを暴露しようとする、つまり、だまし合い、という意味になります。その他にも、さまざまな英語表現があるので、例文を見てみましょう。

・two people outfoxing each other

狐と狸の化かし合い

・to outsmart / outfox each other

お互いに裏をかく(狐と狸の化かし合い)

・Trying to out fox each other, were tricked some persons.

狐と狸の化かし合いにより、何人かの人々がたぶらかされた(だまされた)

\次のページで「「狐と狸」を使いこなそう」を解説!/

「狐と狸」を使いこなそう

この記事では、「狐と狸」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「狐と狸」は、「狐と狸の化かし合い」という故事ことわざが語源で、狐と狸はいずれも、人をだましたり嘘をついたりする動物として昔からおなじみでした。そのため現在も、悪賢い者のたとえで、「狐と狸」が使われます。

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【ことわざ】「狐と狸」の意味や使い方は?例文や類語を元新聞記者がわかりやすく解説!

この記事では「狐と狸」について解説する。

端的に言えば、狐と狸の意味は「くせ者同士」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元新聞記者で、ライター歴20年のトラコを呼んです。一緒に「狐と狸」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/トラコ

全国紙の記者を7年。その後、雑誌や書籍、Webでフリーの記者などとして活動中。文字の正確さ、使い方に対するこだわりは強い。

「狐と狸」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速、「狐と狸」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「狐と狸」の意味は?

「狐と狸」は、ことわざや慣用句に分類されます。この狐と狸は、誰もが知る通り、いずれも動物です。しかし、ただ単に、動物である狐と狸、という意味では、もちろんありません。

この「狐と狸」の意味を知るには、「狐と狸の化かし合い」が言葉の由来です。次のような意味があります。

《狐も狸も人を化かすといわれるところから》悪賢い者どうしが互いにだまし合うことのたとえ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「狐(きつね)と狸(たぬき)の化かし合い」

「狐と狸の化かし合い」の、この狐(きつね)と狸(たぬき)は、いずれも、人間をだます生き物である動物、つまり、悪知恵の働く者同士が、お互いにだまし合うという意味の故事ことわざです。

狐も狸も、昔から、事あるごとに変身したり、幻覚などの特殊能力を使ったりすると信じられてきました。それで、狐と狸は、ずる賢い者、曲者、悪巧みをする者といった人のたとえで、今も使われています。

「狐と狸」の語源は?

次に「狐と狸」の語源を、確認しておきましょう。

日本では古来から、狐と狸は、悪賢くて人間をだましたり、ウソをついたりする動物と、昔話などに登場してきました。そのため、狐と狸というと、悪賢くて人をだます者のたとえで使われるようになったと考えられます。「狐と狸の化かし合い」も同様。

「狐七化け、狸は八化け」ということわざもあります。いずれも化ける数であり、狐より狸のほうが化けるのが上手という意味です。

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