この記事では「一掬の涙」について解説する。

端的に言えば一掬の涙の意味は「わずかな涙、または両手ですくうほどたくさんの涙」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

早稲田大学文学部で日本文学・日本語学を学んだぽん太を呼んです。一緒に「一掬の涙」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ぽん太

早稲田大学文学部で日本語学と日本文学を学び、中高国語科の教員免許も取得している。これまで学んだ知識を生かして、難解な言葉をわかりやすく解説していく。

「一掬の涙」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「一掬の涙」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「一掬の涙」の意味は?

「一掬の涙」には、次のような意味があります。

1.両手ですくうほどのたくさんの涙
2.少しの涙、わずかな涙

出典:コトバンク ー デジタル大辞泉(小学館)「一掬の涙」

「いっきくのなみだ」と読みます。

「掬(きく)」は「掬う(すくう)」とも読み、水などを手ですくいとることを表す言葉です。したがって、「一掬」ひとすくいの量を表します。手のひらでひとすくいできる水の量は少ないため、わずかな量を表す意味も生まれました。

水で考えると両手ですくいとれる量はわずかですが、涙と考えると両手ですくいとるほどの涙を流すというのは相当なものです。そのため「一掬の涙」には、たくさんの涙という意味と、従来の「一掬」の意味を反映したわずかな涙という意味の二つがあります。

「一掬の涙」の使い方・例文

「一掬の涙」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「一掬の涙」の類義語は?違いは?」を解説!/

1.彼女の壮絶な生涯を聞いて、そこにいた全員が彼女に一掬の涙を注いだ
2.彼らが流してくれた一掬の涙は、私に希望を与えてくれた。
3.鬼と呼ばれた田中監督が引退試合で見せた一掬の涙は、選手達の心を大いに揺さぶった。

それぞれの例文について解説していきましょう。

1つめの例文では、話し手の壮絶な過去に対して一掬の涙を注ぐという表現をしました。「一掬の涙を注ぐ」「(対象に対して、)わずかな(またはたくさんの)涙を流す」という意味を表す典型表現なので覚えておくと便利です。ちなみに今回の一掬の涙は「たくさんの涙」をイメージしています。

2つめの例文では、一掬の涙を「彼らが流してくれた」で修飾して使いました。このような使い方をする場合も多いので、ぜひ覚えてみてください。

3つめの例文では、使い方は2つめのものと同じですが、一掬の涙を「わずかな涙」のイメージで使ってみました。どちらの意味でも解釈できるので、前後の文脈やその人の性格などから想像して読むのが良さそうですね。

「一掬の涙」の類義語は?違いは?

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次に「一掬の涙」の類義語を紹介しましょう。

ただ「一掬の涙」には、「わずか」と「たくさん」という相反する意味がすでに含まれているため、今回は「わずかな」の意味に対する類義語を紹介していきます。

その1「雀の涙」

「すずめのなみだ」と読みます。「雀の流す涙ほどのもの、ごくわずかなもののたとえ」(出典:デジタル大辞泉)という意味の慣用句です。小さな体の雀から流れる涙はほんの僅かであることが語源となって生まれました。

「雀の涙ほどの〜」のようにあるものの少なさを大げさに表現したいときに使います。一掬の涙とほぼ同義語ですが、「雀の涙」の方がより少なさを表せそうですね。

その2「蚊の涙」

「極めて分量の少ないたとえ」(出典:精選版 日本国語大辞典)として使います。こちらも語源は「雀の涙」と同じで、蚊のような小さな体から流す涙はごくわずかであることから生まれた言葉です。ちなみに「蚊の鳴くような声」といって、「弱々しいかすかな声」を表す言葉もありますよ。

\次のページで「「一掬の涙」の対義語は?」を解説!/

「一掬の涙」の対義語は?

次に「一掬の涙」の対義語を紹介しましょう。類義語と同様、「一掬の涙」を「わずかな」の意とし、その反対となる言葉を紹介していきます。

その1「万斛の涙」

「ばんこくのなみだ」と読みます。

「万斛」「はかりきれないほどに多い分量」という意味の言葉で、「斛」「石」という意味です。「加賀百万石」という言葉を聞いたことがある人も多いと思いますが、その「石」と同じですね。江戸時代には領地が一万石以上あれば大名と呼ばれていたので、「万斛」がいかに多いものかは想像しやすいでしょう。

その2「いっぱいの涙」

副詞・形容動詞の「いっぱい」には、たくさんの意味があります。「物が満ちているさま」「できる限り、ありったけ」「限度すれすれになっているさま、ぎりぎり」の3つです。これらの意味は文脈によっていろいろ解釈できますね。「いっぱい」とひらがな表記にすることで、名詞の「一杯」と区別することができますよ。

「一掬の涙」の英訳は?

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最後に「一掬の涙」の英訳を紹介しましょう。ここでは、「わずかな」「たくさん」のそれぞれの英訳を紹介します。

その1「a few tears」

「a few」「少しの」という意味になります。「tear」なので、「a few tears」「少しの涙」という意味です。

ちなみに「few」は可算名詞に使いますが、不可算名詞には「little」を使います。対象のものが数えられるかどうかの違いですね。「tear」は可算名詞なので、今回は「few」を使いました。これは基礎中の基礎の英文法なのでしっかり覚えておきましょうね。

その2「shed many tears」

「たくさん涙を流す」という意味です。それぞれキーワードごとに説明していきましょう。

「shed」には「流す、こぼす、(自然に)落とす」(出典:ウェブリオ英和辞典)などの意味があります。「shed tears」「涙を流す」という熟語になるので、覚えておくといいでしょう。先述したように「tear」は可算名詞なので、「たくさんの」を表す単語に「many」を使っています。

\次のページで「「一掬の涙」を使いこなそう」を解説!/

「一掬の涙」を使いこなそう

この記事では「一掬の涙」の意味・使い方・類語などを説明しました。読み方も難しく聞き慣れない言葉かと思いますが、一つ一つ検索したり辞書で調べたりするとしっかり意味もわかりますよね。わからないものは、すぐに自分から調べる癖をつけていきましょう。これは勉強でも仕事でも同じですが、なかなかできている人は少ないものです。蓄えた知識は次にわからない言葉を見つけたときの判断材料になるので、必ず自分のレベルアップにつながりますよ。

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国語言葉の意味

「一掬の涙」の意味や使い方は?例文や類語を早稲田文学部卒Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「一掬の涙」について解説する。

端的に言えば一掬の涙の意味は「わずかな涙、または両手ですくうほどたくさんの涙」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

早稲田大学文学部で日本文学・日本語学を学んだぽん太を呼んです。一緒に「一掬の涙」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ぽん太

早稲田大学文学部で日本語学と日本文学を学び、中高国語科の教員免許も取得している。これまで学んだ知識を生かして、難解な言葉をわかりやすく解説していく。

「一掬の涙」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「一掬の涙」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「一掬の涙」の意味は?

「一掬の涙」には、次のような意味があります。

1.両手ですくうほどのたくさんの涙
2.少しの涙、わずかな涙

出典:コトバンク ー デジタル大辞泉(小学館)「一掬の涙」

「いっきくのなみだ」と読みます。

「掬(きく)」は「掬う(すくう)」とも読み、水などを手ですくいとることを表す言葉です。したがって、「一掬」ひとすくいの量を表します。手のひらでひとすくいできる水の量は少ないため、わずかな量を表す意味も生まれました。

水で考えると両手ですくいとれる量はわずかですが、涙と考えると両手ですくいとるほどの涙を流すというのは相当なものです。そのため「一掬の涙」には、たくさんの涙という意味と、従来の「一掬」の意味を反映したわずかな涙という意味の二つがあります。

「一掬の涙」の使い方・例文

「一掬の涙」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

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