この記事では「鶯の谷渡り」について解説する。

端的に言えば鶯の谷渡りの意味は「移り渡る」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国立大で国語学を学んだライターのタケルを呼んです。言葉の解説を得意としていて、大学時代はクイズサークルに所属していたので雑学にも詳しい。一緒に「鶯の谷渡り」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タケル

某国立大で日本語学を専攻。以前は自然や風景に全く興味はなかったが、ここ数年で身近なものの美しさに惹きつけられるようになった。花の色や鳥のさえずりなどが気になるこの頃だ。

「鶯の谷渡り」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「鶯の谷渡り」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「鶯の谷渡り」の意味は?

「鶯の谷渡り」には、次のような意味があります。

1.鶯が谷から谷へ、また、枝から枝へ鳴きながら渡ること。また、そのときの声。
2.曲芸などで、物の一方から他方へ移ること。また、物を一方から他方へ移すこと。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「鶯(うぐいす)の谷渡(たにわた)り」

「鶯」は「ウグイス」と読みます。あの鳥のウグイスのことです。

鶯の谷渡り」(うぐいすのたにわたり)には2つの意味があります。1つは「ウグイスが谷から谷へと鳴きながら移って行くさま」です。飛び回るさまだけでなく、鳴くことも意味に含まれていることに注目しましょう。

そこから派生したもう1つの意味が、「物が一方から他方に移る」あるいは「物を一方から他方に移す」ことです。物などが次々に移動するさまを、ウグイスが枝から枝へと飛び移る様子に例えて使います。

「鶯の谷渡り」の語源は?

次に「鶯の谷渡り」の語源を確認しておきましょう。

もちろんこの言葉が出来た理由は、ウグイスの生態にあります。ウグイスが「ホーホケキョ」と鳴くのはオスの役割です。メスは巣に餌を運び、オスは外敵を警戒しながら縄張りを見張るという役割分担ができていて、外敵が近付いたときには威嚇のために鳴き方を変えたりします。そうして鳴きながらウグイスが移動していく様子を、「鶯の谷渡り」という言葉で表すようになりました。

\次のページで「「鶯の谷渡り」の使い方・例文」を解説!/

「鶯の谷渡り」の使い方・例文

「鶯の谷渡り」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.雑誌の特集や動画でしか見たことがなかった鶯の谷渡りを仲間と観察することができた。
2.あたかも鶯の谷渡りのように、ジャック松田とかいう無名の若い男のマジシャンが持つ小さな赤い玉があらゆる場所に移動していく。
3.さっきまで受付で来客の相手をしていた植田君が、いつの間にか資料室で社史をチェックしてから公式ブログを修正する作業に取り掛かっていて、まるで鶯の谷渡りみたいに社内を動き回っている。

例文1が「ウグイスの鳴き渡るさま」、例文2と3が「物を一方から他方に移す」または「物が一方から他方に移る」という意味で「鶯の谷渡り」を使っています

前掲した辞書にもありますが、「鶯の谷渡り」は曲芸などで使われる言葉です。あなたは1月初旬に行われる出初め式を見たことはあるでしょうか。消防車による一斉放水も見どころの1つですが、その他に、曲芸にも見えるはしご乗りも出初め式の花形です。そのはしご乗りの技には、「鶯の谷渡り」というものがあります。両足をはしごに引っ掛けて、手を離して仰向けの状態になって身を乗り出すという、なんとも豪快なものです。春うららかな時期だけでなく、新春にも「鶯の谷渡り」という言葉が使われるのは、春を待つ人々の心情が表れているとも感じられるでしょう。

「鶯の谷渡り」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

ところで、「鶯の谷渡り」の類義語は何でしょうか。違いとともに見ていきましょう。

「転々」「たらい回し」

「次々と移り変わるさま」という意味の言葉に「転々」(てんてん)があります。「転々とする」という形で使われることの多い言葉です。「サーカスが巡業で地方を転々とする」などと聞いたことはあるでしょう。しかし、「転々」にはもう1つ、「転がっていくさま」という意味もあります。もちろん「鶯の谷渡り」にその意味はありません。

また、「たらい回し」という言葉も聞いたことはあるでしょう。「入院先をたらい回しにされる」などと使います。「鶯の谷渡り」のように場所を変える意味合いはありますが、「たらい回し」は良い意味では使われません。あまり関わりたくはない案件を順送りにする場合などに「たらい回し」は使われます

\次のページで「「鶯の谷渡り」の対義語は?」を解説!/

「鶯の谷渡り」の対義語は?

さらに「鶯の谷渡り」の対義語も見てみましょう。

「梃子でも動かない」「泰然自若」

「鶯の谷渡り」の対義語として定義されている言葉はありません。よって、「鶯の谷渡り」の意味から対義語になりえるものを探す必要があります。

「鶯の谷渡り」とは「鳴きながら飛び回る」や「一方から他方に移す」という意味があることは前述しました。ならば、「動かない、動かさない」といった意味の言葉が対義語になりえます。たとえば「梃子でも動かない」(てこでもうごかない)という言葉はその可能性があるでしょう。「どうやってもその場から動かない」という意味のある慣用句です。

四字熟語から探すとすれば、「泰然自若」(たいぜんじじゃく)というものがあります。「何事にも動じず落ち着いている」という意味です。心理状態だけではなく、その態度も表しますので、やはり対義語になりえるでしょう。

「鶯の谷渡り」の英訳は?

image by iStockphoto

では、「鶯の谷渡り」は英語で何と言うでしょうか。

「flight of a bush warbler from valley to valley」「the song of a bush warbler in flight」

直訳のようになりますが、「鶯の谷渡り」は英語で「flight of a bush warbler from valley to valley」と言います。「flight of a bush warbler」が「ウグイスの飛行」、「from valley to valley」で「谷から谷へ」です。

また、「鶯の谷渡り」はウグイスが谷から谷へと渡るときに鳴く声という意味であることも忘れてはなりません。「flight of a bush warbler from valley to valley」がウグイスの飛び回るさまを表した言葉であるならば、鳴き声を強調させるためには「the song of a bush warbler in flight」などといった表現にすると良いでしょう。

「鶯の谷渡り」を使いこなそう

この記事では「鶯の谷渡り」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「鶯の谷渡り」は、ウグイスが飛んだり鳴いたりする様子を表すだけではありません。一方から他方に物を移すときにも使います。「たらい回し」や「バケツリレー」など、その他にも物事を次々に移していくさまを表す言葉がありますが、たまには「鶯の谷渡り」という表現も使ってみましょう。趣深い言葉を使うことで、普段の暮らしがほんの少しでも彩り深くなるはずです。

" /> 【慣用句】「鶯の谷渡り」の意味や使い方は?例文や類語を雑学大好きwebライターがわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

【慣用句】「鶯の谷渡り」の意味や使い方は?例文や類語を雑学大好きwebライターがわかりやすく解説!

この記事では「鶯の谷渡り」について解説する。

端的に言えば鶯の谷渡りの意味は「移り渡る」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国立大で国語学を学んだライターのタケルを呼んです。言葉の解説を得意としていて、大学時代はクイズサークルに所属していたので雑学にも詳しい。一緒に「鶯の谷渡り」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タケル

某国立大で日本語学を専攻。以前は自然や風景に全く興味はなかったが、ここ数年で身近なものの美しさに惹きつけられるようになった。花の色や鳥のさえずりなどが気になるこの頃だ。

「鶯の谷渡り」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「鶯の谷渡り」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「鶯の谷渡り」の意味は?

「鶯の谷渡り」には、次のような意味があります。

1.鶯が谷から谷へ、また、枝から枝へ鳴きながら渡ること。また、そのときの声。
2.曲芸などで、物の一方から他方へ移ること。また、物を一方から他方へ移すこと。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「鶯(うぐいす)の谷渡(たにわた)り」

「鶯」は「ウグイス」と読みます。あの鳥のウグイスのことです。

鶯の谷渡り」(うぐいすのたにわたり)には2つの意味があります。1つは「ウグイスが谷から谷へと鳴きながら移って行くさま」です。飛び回るさまだけでなく、鳴くことも意味に含まれていることに注目しましょう。

そこから派生したもう1つの意味が、「物が一方から他方に移る」あるいは「物を一方から他方に移す」ことです。物などが次々に移動するさまを、ウグイスが枝から枝へと飛び移る様子に例えて使います。

「鶯の谷渡り」の語源は?

次に「鶯の谷渡り」の語源を確認しておきましょう。

もちろんこの言葉が出来た理由は、ウグイスの生態にあります。ウグイスが「ホーホケキョ」と鳴くのはオスの役割です。メスは巣に餌を運び、オスは外敵を警戒しながら縄張りを見張るという役割分担ができていて、外敵が近付いたときには威嚇のために鳴き方を変えたりします。そうして鳴きながらウグイスが移動していく様子を、「鶯の谷渡り」という言葉で表すようになりました。

\次のページで「「鶯の谷渡り」の使い方・例文」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: