この記事では「胡坐をかく」を勉強していきます。

「胡坐をかく」は「あぐらをかく」と読む。意味は「のんきにかまえる」です。男が座るときは、一般的に正座するより胡坐をかくことが多いと思う。この座り方が慣用句になると、新たな意味合いを持つことになるから日本語は面白いな。

正しく自信を持って使えるように、「胡坐をかく」の使い方や言葉の意味について、現役日本語教師のスヨメナと一緒に解説していきます。

ライター/スヨメナ

現役日本語教師。対面、オンライン問わず、世界中の国の人に日本語を教えている。ブログでも相手の立場に立って考え、わかりやすく発信していく。

「胡坐をかく」の意味・語源は?

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ここでは「胡坐をかく」の言葉の正しい意味と語源をしっかり押さえましょう。

「胡坐をかく」の意味は「いい気になること」

まずは辞書で意味を確認してみましょう。

1 あぐらを組んで座る。
2 のんきにかまえて、何の努力もしないことのたとえ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「胡坐をかく」

「胡座(あぐら)をかく」には、”両足を前に組んで、楽に座る”といういわゆる座り方の一つである”あぐらで座る”という意味はもちろん、”のんきにかまえて努力しないこと”や”いい気になること”のたとえとしても使われる慣用句です。

「胡坐をかく」が座り方を指しているのか、たとえとして用いられているのか、会話や文章で遭遇したときは、前後の状況や文脈によって判断するのが良いでしょう。

茶道であぐらをかいても良い?

「あぐら」はもともと、貴族などの高貴な人が座るための座席や腰掛けのことを指していました。そして「あぐら」に座ることを「あぐむ」と呼び、それらが混同されて座り方が「あぐら」になっていったと言われています。

茶道は本来、「正座」で行うことが一般的です。しかし、古くは「あぐら」をかいて茶道をしていたという説があります。茶を広めたことで有名な千利休(せんのりきゅう)の江戸時代に彫られた肖像画で、彼はなんと「あぐら」をかいているのです。「正座」が普及したのは最近で「あぐら」のほうが正式な座り方だったのかもしれませんね。

\次のページで「「胡坐をかく」の使い方は?」を解説!/

「胡坐をかく」の使い方は?

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「胡坐をかく」の意味がわかったところで、使い方を解説していきます。

例文で「胡坐をかく」の使い方をチェック!

いくつか「胡坐をかく」を使った例文に触れていきましょう。

1.泥酔してステージで歌う大御所は、胡坐をかいているように見える
2.いつまでも胡坐をかいていては、結果がついてこない
3.新築マンションに引っ越してからというもの、主人は胡坐をかいて子どもの面倒を全く見なくなった

1は、酒に酔ってライブをする大御所のミュージシャンがいい気になっているように見えるという意味。ステージ上で自分の務めを果たせないほど、飲んでしまったら大問題ですね。胡坐をかいているように見えるでしょう。自ら自分の価値を下げてしまうことになります。

2は、いつまでもダラダラとのんきに過ごしていたら、なにも掴むことはできないという意味。目標を成し遂げるには努力しなければなりません。3は、引っ越しして新しい環境を手に入れて余裕ができたのでしょう。ご主人はのんきにかまえて子どもの相手をしなくなったのです。

「胡坐をかく」と似たような意味を持つ言葉は?

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「胡坐をかく」と似たような言葉があるので、一緒に覚えてしまいましょう。

\次のページで「「自惚れる」:自分を過大評価し、得意になる」を解説!/

「自惚れる」:自分を過大評価し、得意になる

「自惚れる(うぬぼれる)」は、”自分にほれる”という漢字で”自分の外見や才能などが優れていると思い込んで得意になること”です。思い込む、つまり錯覚すること。例えば「少し若い女性に声を掛けられたからといって自惚れてはいけない」であれば、たまたま女性から話しかけられただけで調子に乗らないほうがいいの意味になります。

得意になるという点で、「胡坐をかく」の類義語と言えるでしょう。

「大きな顔をする」:偉そうにする

「大きな顔をする」の意味は、”偉そうにすること”です。例えば「普段仕事をしない上司は、社長が来るときだけ大きな顔をする」の場合、社内では社長が来るときにだけ威厳を見せるの意味になります。いつもは頼りないくせに、都合よく態度を変えるのは良くないですね。

「天狗になる」:得意になって自慢する

「天狗になる(てんぐになる)」の「天狗」は、みなさんご存知の赤い顔に高い鼻、翼をもった伝説における生き物のこと。天狗はなんといっても鼻が高いです。鼻高々というように、「天狗になる」は”得意になって自慢すること”のたとえとして使われます。

例えば「SNSの投稿が支持を集め、彼はますます天狗になっている」であれば、SNSで注目され彼はさらにいい気になっているという意味になるでしょう。

「胡坐をかく」と反対の意味を持つ言葉は?

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「胡坐をかく」と反対の意味を持つ言葉は何があるのでしょうか。いくつか見ていきましょう。

「精進する」:一生懸命に努力する

「精進する(しょうじんする)」の意味は”一つのことに集中して努力すること”です。よくビジネスの場面において使います。例えば、何か成果を出して上司から褒められた際に「今後も精進してまいります」と使うと、これからも一生懸命努力しますという気持ちを硬く誠実に表すのです。のんきでも、いい気になっている様子でもありません。「胡坐をかく」とは反対の言葉と言えますね。

「尽力する」:力の限り頑張る

「尽力する(じんりょくする)」は、”力の限り精一杯頑張る”の意味。自分のことには使わず、誰かのために尽くすときに使う言葉ですので注意しましょう。例えば「先生のお願いとなれば、尽力するだけです」の場合、先生からの頼まれごとなので精一杯頑張るだけですという意味を表します。

\次のページで「「粉骨砕身する」:精一杯努力する」を解説!/

「粉骨砕身する」:精一杯努力する

「粉骨砕身する(ふんこつさいしんする)」は、”精一杯努力する”の意味。漢字は「骨を粉にし、身を砕く」です。そのくらいの強い気持ちで物事に打ち込むということが表れています。例えば「目標に向かって、粉骨砕身の気持ちで臨みます」であれば、目標達成に向けて精一杯頑張りますの意味になるでしょう。

「胡坐をかく」の意味を理解して正しく使ってみよう!

この記事では「胡坐をかく」の意味や語源・使い方・類語・対義語などを説明しました。「胡坐をかく」は、現在における楽な姿勢で座り方「あぐら」のたとえから”のんきにかまえる・いい気になる”の意味でした。

人間であれば自惚れたり、天狗になったりすることもあるでしょう。それは決して悪いことではありません。気づかずにいつまでも続くことがまずいですね。反対の言葉「精進する」「尽力する」はポジティブで使用場面も多いので覚えておくことをおすすめします。

いずれにせよ、どのようなときも胡坐をかかずに粉骨砕身の気持ちで取り組んでいきましょう。

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国語言葉の意味

正座よりも正しい座り方?「胡坐をかく」の正しい意味や語源・使い方・類語など現役日本語教師がわかりやすく解説

この記事では「胡坐をかく」を勉強していきます。

「胡坐をかく」は「あぐらをかく」と読む。意味は「のんきにかまえる」です。男が座るときは、一般的に正座するより胡坐をかくことが多いと思う。この座り方が慣用句になると、新たな意味合いを持つことになるから日本語は面白いな。

正しく自信を持って使えるように、「胡坐をかく」の使い方や言葉の意味について、現役日本語教師のスヨメナと一緒に解説していきます。

ライター/スヨメナ

現役日本語教師。対面、オンライン問わず、世界中の国の人に日本語を教えている。ブログでも相手の立場に立って考え、わかりやすく発信していく。

「胡坐をかく」の意味・語源は?

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ここでは「胡坐をかく」の言葉の正しい意味と語源をしっかり押さえましょう。

「胡坐をかく」の意味は「いい気になること」

まずは辞書で意味を確認してみましょう。

1 あぐらを組んで座る。
2 のんきにかまえて、何の努力もしないことのたとえ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「胡坐をかく」

「胡座(あぐら)をかく」には、”両足を前に組んで、楽に座る”といういわゆる座り方の一つである”あぐらで座る”という意味はもちろん、”のんきにかまえて努力しないこと”や”いい気になること”のたとえとしても使われる慣用句です。

「胡坐をかく」が座り方を指しているのか、たとえとして用いられているのか、会話や文章で遭遇したときは、前後の状況や文脈によって判断するのが良いでしょう。

茶道であぐらをかいても良い?

「あぐら」はもともと、貴族などの高貴な人が座るための座席や腰掛けのことを指していました。そして「あぐら」に座ることを「あぐむ」と呼び、それらが混同されて座り方が「あぐら」になっていったと言われています。

茶道は本来、「正座」で行うことが一般的です。しかし、古くは「あぐら」をかいて茶道をしていたという説があります。茶を広めたことで有名な千利休(せんのりきゅう)の江戸時代に彫られた肖像画で、彼はなんと「あぐら」をかいているのです。「正座」が普及したのは最近で「あぐら」のほうが正式な座り方だったのかもしれませんね。

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