

端的に言えば一波纔かに動いて万波随うの意味は「小さな出来事が、さまざまな方面に影響する」だが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
元大手予備校校舎長で大学入試の国語指導歴が長いライターのみゆなを呼んだ。一緒に「一波纔かに動いて万波随う」の意味や例文、類語などを見ていくぞ。

解説/桜木建二
「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。
ライター/みゆな
元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。
「一波纔かに動いて万波随う」の意味や語源・使い方まとめ

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「一波纔かに動いて万波随う」とは、漢字も言い回しも難しいことわざですね。読み方は「いっぱわずかにうごいて まんぱしたがう」となります。日常で見かける機会は少ないかもしれませんが、格式のあることわざを知っていると「語彙が豊かな人」と太鼓判を押してもらえること間違いなし!この機会に由来や正しい意味、使い方をマスターしてしまいましょう。
それでは早速「一波纔かに動いて万波随う」の解説を始めます。
「一波纔かに動いて万波随う」の意味は?
「一波纔かに動いて万波随う」には、次のような意味があります。
一つの事件の影響が多方面に及ぶことのたとえ。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「一波纔かに動いて万波随う」
「一波纔かに動いて万波随う」は、はじめは小さな事件だったものが、影響がどんどん広がり、最終的に各方面に影響を及ぼすことになるという現象を表したことわざです。「一波」という部分からわかるように、影響の広がり方を「波」にたとえています。
小さなさざ波も、その動きが他の波に伝わり、波が集まり、やがて大きな波になって打ち寄せますよね。この自然現象を見た昔の人が、「小さなことがさまざまな方面に影響する」ことを表現したのが、「一波纔かに動いて万波随う」です。
「纔かに(わずかに)」は「僅かに」という漢字と同義で「ほんの少し」という意味ですね。「万波」は「幾重にも寄せる波、多くの波」という意味、「ばんぱ」と読まないようにしましょう。「随う(したがう)」は「目上の人、力が強い人につきしたがう」という意味です。
「一波纔かに動いて万波随う」の由来は?
次に「一波纔かに動いて万波随う」の由来を確認しておきましょう。
「一波纔かに動いて万波随う」は、元々は中国・宋時代の評論集である「冷斎夜話」に収められていたものです。「冷斎夜話」は詩人の逸話とその作品の評論集で、鎌倉末期から江戸初期にかけて成熟した「五山文学」にも大きな影響を与えました。元々の漢語では「一波纔动万波随」と表記していますよ。
現代の日本では「一波纔かに動いて万波随う」と表記するほか、「一波万波」という四字熟語にもなっています。意味はどちらも同じなので、あわせて押さえておきましょう。