端的に言えば英雄人を欺くの意味は「優れた人は普通の人が思いもよらない手段や行動をとる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
早稲田大学文学部で日本文学・日本語学を学んだぽん太を呼んです。一緒に「英雄人を欺く」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/ぽん太
早稲田大学文学部で日本語学と日本文学を学び、中高国語科の教員免許も取得している。これまで学んだ知識を生かして、難解な言葉をわかりやすく解説していく。
「英雄人を欺く」の意味は?
「英雄人を欺く」には、次のような意味があります。
卓抜した能力をもつ人は、そのすぐれたはかりごとで、普通の人が思いもよらない手段や行動をとるものであるということ。
出典:三省堂 新明解四字熟語辞典「英雄欺人」
「えいゆうひとをあざむく」と読みます。これは元の漢文の「英雄欺人」を書き下し文にしたものです。
「欺く」には「言葉巧みにうそを言って相手に本当だと思い込ませる、だます」という意味がありますが、この場合は「普通こうやるだろう」という人々の思考を裏切るような行動をすることを「欺く」で表現していると考えられます。
「英雄人を欺く〜」「英雄擬人の〜」という風に手段や行動を装飾する形で使う言葉です。
「英雄人を欺く」の語源は?
次に「英雄人を欺く」の語源を確認しておきましょう。
『唐詩選』の序文に記載がある「英雄欺人(えいゆうひとをあざむくのみ)」が語源の故事成語です。『唐詩選』は明の李攀竜(リハンリョウ)が唐の時代の詩を集めて編纂したもので、主に盛唐期の詩がまとめられています。盛唐といえば、杜甫や李白、孟浩然など学校でも習うくらい有名な人たちが活躍した時期ですね。
序文では、杜甫の詩が変わらず素晴らしい風格であることを讃える一方で、李白の詩には冗長が少し混じっていることを「英雄欺人」であると述べています。つまり、優れた人が普通の人の目をくらましているに過ぎないのだということを表しているのです。語源は「人をだます」という意味合いが強い「英雄欺人」ですが、だんだんと現在の意味に変化して定着していったのではないでしょうか。
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