

端的に言えば「衣食足れば則ち栄辱を知る」の意味は「生活に余裕ができて初めて礼儀を重んじるようになる」だが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
大学で中国文学を専攻していた現役校正者の朱月を呼んだ。一緒に「衣食足れば則ち栄辱を知る」の意味や例文、類語などを見ていくぞ。

解説/桜木建二
「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

ライター/朱月
大学で中国文学を専攻した、漢文好きの校正者。13年の校正経験を生かし、丁寧に解説する。
「衣食足れば則ち栄辱を知る」の意味や語源・使い方まとめ

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「衣食足れば則ち栄辱を知る(いしょくたればすなわちえいじょくをしる)」という故事成語を知っていますか?普段の生活の中であまり聞かない単語も入っているため、聞いたことがない、あるいは今ひとつピンとこないという人もいるかもしれません。
それでは早速「衣食足れば則ち栄辱を知る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。
「衣食足れば則ち栄辱を知る」の意味は?
「衣食足れば則ち栄辱を知る」には、次のような意味があります。
衣食の心配のない生活になって、はじめて、人は自然に身を修め、名誉と不名誉とをわきまえるようになる。衣食足りて礼節を知る。
出典:新漢語林(大修館書店)「衣」の用例「衣食足則知栄辱」より
「衣食」とは「着るものと食べるもの」をいい、そこから「生活」を意味する言葉にもなっています。「栄辱」は「誉れ(ほまれ)と辱め(はずかしめ)、名誉と不名誉」という意味です。「足りる」は「過不足なく必要なだけある、十分である」、「則ち」は「〜してようやく」という意味ですから、「十分な生活が送れるようになってようやく、名誉や不名誉について考えるようになる」となります。
「衣食足れば則ち栄辱を知る」の語源は?
次に「衣食足れば則ち栄辱を知る」の語源を確認しておきましょう。
この言葉の由来は、古代中国の政治論集『管子(かんし)』の牧民(ぼくみん)篇にある一節です。『管子』は、春秋時代の政治家・管仲(かんちゅう)が中心になって著した書物といわれています。
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