この記事では慣用句「御釈迦様でも気がつくまい」について解説する。

端的に言えば御釈迦様でも気がつくまいの意味は「誰も気が付かないでしょう」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元予備校校舎長で教育系ライターのみゆなを呼んです。一緒に「御釈迦様でも気がつくまい」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「御釈迦様でも気がつくまい」の意味や語源・使い方まとめ

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御釈迦様(おしゃかさま)でも気がつくまい」という慣用句は、もしかしたら「御釈迦様でも気がつくめぇ」と舞台がかかった言い回しにしたほうが聞いたことがあるかもしれませんね。「お釈迦様」はあのお釈迦様のことですが、でも「お釈迦様が気づかない」とはどういうことでしょう?そして「お釈迦様が気づかない」という表現に込められた真意とは何なのでしょうか?

今回は「御釈迦様でも気がつくまい」をさまざまな角度から解説していきます。意外と日常会話でも使える表現なので、意味や語源・使い方を正しく押さえておきましょう。それでは始めます。

「御釈迦様でも気がつくまい」の意味は?

「御釈迦様でも気がつくまい」には、次のような意味があります。

だれも気がつかないだろう。御釈迦様でも御存じあるまい。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「御釈迦様でも気がつくまい」

「御釈迦様でも気がつくまい」とは、文字通り「お釈迦様でもご存知あるまい、知られることはないだろう」という意味です。お釈迦様というのは過去・現在・未来にわたって、この世からあの世まですべてを見通す存在ですよね。そんな存在ですら気がつくことはないほど、絶対に知れ渡ることはないだろう、知られることはないと強調して言うときに使う慣用句です。

「御釈迦様でも気がつくまい」の由来は?

次に「御釈迦様でも気がつくまい」の由来を確認しておきましょう。

そもそもの始まりは正確には分かっていませんが、「お釈迦様でも気がつくまい」という表現を有名にしたのは歌舞伎の人気演目である「与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)」だといわれています。『切られ与三』(きられよさ)、『お富与三郎』(おとみよさぶろう)、『源氏店』(げんやだな)といった通称でも知られていますよ。

許されぬ相手に一目ぼれし合ったものの、仲を引き裂かれた男女。男は追われて満身創痍、女は自殺未遂をします。お互いが生きているとは知らぬまま別の人生を歩んでいた二人が、ふとしたきっかけで再会した、そのときに男が言ったセリフが「死んだと思ったお富が生きていたとは、お釈迦様でも気がつくめえ」だというわけです。

\次のページで「「御釈迦様でも気がつくまい」の使い方・例文」を解説!/

「御釈迦様でも気がつくまい」の使い方・例文

「御釈迦様でも気がつくまい」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.天才マジシャンのステージを見に行ったら、この世のものとは思えないイリュージョンの連続だった。トリックはあるんだろうが、一つひとつにはお釈迦様でも気がつくまい
2.昨日の商談であの話をしていたのは、今日確実に契約をいただく伏線だったんですね。あの話にそんな意味があったなんで、お釈迦様でも気がつきませんよ
3.ヒッヒッヒ、お宝はここに隠したぜ。まさかご本尊の真下に隠したとは、それこそお釈迦さまでも気がつくめぇ

「お釈迦様でも気がつくまい」は、絶対に気づかれるはずがない/誰も気がつかないという意味を強めたいときに使えます。

例文1はマジシャンのトリックに対して、例文2は契約の伏線になっていた話について、それぞれ「絶対に誰も気がつくわけながい」というニュアンスを加えるために使っていますね。

例文3は盗賊でしょうか、お寺のご本尊の下にお宝を隠したようです。まさか自分の下が隠し場所に使われるとは、それこそお釈迦様でも気がつかないかもしれませんね。

「お釈迦様でも気がつくまい」の類義語は?違いは?

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「お釈迦様でも気がつくまい」と同じ意味を持つ表現を見てみましょう。ことわざと四字熟語から1つずつご紹介します。

その1「灯台もと暗し」

灯台もと暗し」は聞いたことがある人も多いでしょう。遠くを照らす灯台でも、その真下は真っ暗です。このことから、身近なことはかえって気づかない、事情が分からないものだという場合に使われます。

「お釈迦様は気がつくまい」はどんな事柄に対しても使えますが、身近なことに限った場合は「灯台もと暗し」と代用することもできますから押さえておきましょう。

\次のページで「その2「白河夜船」」を解説!/

その2「白河夜船」

白河夜船(しらかわよふね)」は、よく眠っていて全く気づかないというときに使えます。夜、あるいは寝ている間に起きた出来事を全く知らなかった、という場面で使ってみてください。

「御釈迦様でも気がつくまい」の対義語は?

「お釈迦様でも気がつくまい」と対義になる表現を見てみましょう。

「壁に耳あり、障子に目あり」

壁には聞き耳を立てている人がおり、障子からは覗いている人がいる、という状況から「どんなことも必ず知れ渡る」という意味で使われます。とくに「悪事は必ずバレる」という文脈で使われることが多いですね。「お釈迦様は気づくまい」は誰も気づかない、バレないという意味でしたから対義にあることわざと言って良いでしょう。

「御釈迦様でも気がつくまい」の英訳は?

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「お釈迦様」を引き合いに出すのは仏教文化のある日本ならではですが、英語では「God」を使うと同じ意味を表すことができますよ。見てみましょう。

「even God [ Heaven ] doesn't know」

「God」は「神」、「Heaven」は「天、天国」を意味する単語です。「even God [ Heaven ] doesn't know」とすると、「神(天)ですらご存じあるまい」という意味になります。使い方は次の通り。

Even God doesn't know where he went.
「神ですら、彼がどこに行ったかご存じあるまい」

\次のページで「「御釈迦様でも気がつくまい」を使いこなそう」を解説!/

「御釈迦様でも気がつくまい」を使いこなそう

この記事では「御釈迦様でも気がつくまい」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「お釈迦様でも気がつくまい」は、すべてを見通せる万能のお釈迦さまですら見つけられないほど、誰も気づかないという意味でしたね。日常的にも使えることに驚いた人も多いのではないでしょうか。

嘘や隠し事は好ましいものではありませんが、マジックのトリックや人のうわさ話など「知らない方が良いこと」も世の中にはたくさんあります。「お釈迦様でもきがつくまい」を、ぜひ今日から「絶対に誰も気づかないさ」と言いたいときに使ってみてくださいね。

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【慣用句】「御釈迦様でも気がつくまい」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校校舎長がわかりやすく解説!

この記事では慣用句「御釈迦様でも気がつくまい」について解説する。

端的に言えば御釈迦様でも気がつくまいの意味は「誰も気が付かないでしょう」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元予備校校舎長で教育系ライターのみゆなを呼んです。一緒に「御釈迦様でも気がつくまい」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「御釈迦様でも気がつくまい」の意味や語源・使い方まとめ

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御釈迦様(おしゃかさま)でも気がつくまい」という慣用句は、もしかしたら「御釈迦様でも気がつくめぇ」と舞台がかかった言い回しにしたほうが聞いたことがあるかもしれませんね。「お釈迦様」はあのお釈迦様のことですが、でも「お釈迦様が気づかない」とはどういうことでしょう?そして「お釈迦様が気づかない」という表現に込められた真意とは何なのでしょうか?

今回は「御釈迦様でも気がつくまい」をさまざまな角度から解説していきます。意外と日常会話でも使える表現なので、意味や語源・使い方を正しく押さえておきましょう。それでは始めます。

「御釈迦様でも気がつくまい」の意味は?

「御釈迦様でも気がつくまい」には、次のような意味があります。

だれも気がつかないだろう。御釈迦様でも御存じあるまい。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「御釈迦様でも気がつくまい」

「御釈迦様でも気がつくまい」とは、文字通り「お釈迦様でもご存知あるまい、知られることはないだろう」という意味です。お釈迦様というのは過去・現在・未来にわたって、この世からあの世まですべてを見通す存在ですよね。そんな存在ですら気がつくことはないほど、絶対に知れ渡ることはないだろう、知られることはないと強調して言うときに使う慣用句です。

「御釈迦様でも気がつくまい」の由来は?

次に「御釈迦様でも気がつくまい」の由来を確認しておきましょう。

そもそもの始まりは正確には分かっていませんが、「お釈迦様でも気がつくまい」という表現を有名にしたのは歌舞伎の人気演目である「与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)」だといわれています。『切られ与三』(きられよさ)、『お富与三郎』(おとみよさぶろう)、『源氏店』(げんやだな)といった通称でも知られていますよ。

許されぬ相手に一目ぼれし合ったものの、仲を引き裂かれた男女。男は追われて満身創痍、女は自殺未遂をします。お互いが生きているとは知らぬまま別の人生を歩んでいた二人が、ふとしたきっかけで再会した、そのときに男が言ったセリフが「死んだと思ったお富が生きていたとは、お釈迦様でも気がつくめえ」だというわけです。

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