この記事では「一寸した」について解説する。

端的に言えば一寸したの意味は「ほんの少し」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

自治体広報紙の編集を8年経験した弘毅を呼んです。一緒に「一寸した」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/八嶋弘毅

自治体広報紙の編集に8年携わった。正確な語句や慣用句の使い方が求められるので、正しい日本語の使い方には人一倍敏感。

「一寸した」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「一寸した」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「一寸した」の意味は?

「一寸した」には、次のような意味があります。

1.大したことではない。わずかな。
2.かなりの。なかなかの。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「一寸した」

「一寸した」の読み方は「ちょっとした」です。「いっすんした」ではありませんから注意してください。「一寸」は尺貫法による長さの単位で、約3.03センチです。それほどわずかなものという意味を持っています。

「一寸」と書いて「ちょっと」と読むのは当て字で、ほとんどの国語辞典では漢字を使わずにひらがなで表記されているのが普通です。今日では漢字で「一寸した」と書いても読むことが困難な人が増えています。よほどこだわりがない限りは「ちょっとした」と書いたほうがいいでしょう。

「一寸した」の語源は?

次に「一寸した」の語源を確認しておきましょう。先ほど説明したとおり、「一寸」には「ほんのわずか」という意味があります。測る対象は時間、スポーツ競技の距離などいろいろです。

また「一寸の虫にも五分の魂(たましい)」とか「一寸の光陰軽んずべからず」といったことわざや警句もあります。「一寸の虫にも五分の魂」とはどんなに小さな弱者にも、それなりの意地があるという意味です。また「一寸の光陰軽んずべからず」とは、時間が過ぎ去るのは早いから、少しの時間も無駄にしてはいけないという意味があります。これらに関連して「一寸した」と表示されるようになったのが由来です。

\次のページで「「一寸した」の使い方・例文」を解説!/

「一寸した」の使い方・例文

「一寸した」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、例えば以下のように用いられます。

1.一寸したおみやげをお客さんから受け取ったけど、気持ちだけもらっておいたよ。
2.こんな一寸した質問にも答えられないなんてレベルが低すぎる。君の部下は物事を判断する力がないのか。
3.彼はヨーロッパでは一寸した名士で通っていて、ちょっとやそっとの意見で行動させるのは不可能だ。

例文の最初の二つは、普通に「わずかな」とか「簡単な」という意味で「一寸した」を使っていますが、最後の例文は「一寸した」の逆説的な使用方法です。

つまり「一寸した」には文字どおり「些細な」という意味もありますが、それなりの地位にある人物を指して使うような用法もあります。例えば文章力に定評のある作家やアマチュアレスリングの競技者などで、ある程度名が知られた人に対して、一種尊敬の意味を込めて使うこともあるのです。

「一寸した」の類義語は?違いは?

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ここでは「一寸した」の類義語を見ていきましょう。

その1「わずかな」

「わずかな」「ほんの少し」を意味しており、「一寸した」の類義語と言えます。文章の内容を極限まで省略して五・七・五や五・七・五・七・七の形式で相手に伝えようとした俳句や短歌はそのいい例でしょう。そのような優れた文学作品は、いくら時代が変化しても廃れることはありません。

\次のページで「その2「大したことではない」」を解説!/

その2「大したことではない」

「大したことではない」「些細な」という意味で「一寸した」の類義語に挙げてもいいでしょう。お店で「一寸した」サービスを受けて「大したことはありません」と言われると、次回もそこを利用しようと思うのではないでしょうか。こうした「一寸した」サービスをお店の人は半分無意識のうちに行っているのかもしれませんが、やはり気持ちのいいものです。

その3「かなりの」

「かなりの」は、これまで解説してきた「一寸した」とは別の使い方です。つまり些細なことを示すのではなく、その対象が一目置かれる存在であるさまを表しています。その意味では「一寸した」の対義語にもなり得るおもしろい言葉の使い方です。その意味を正しく理解するには会話や文章の前後の流れから判断することが必要になります。

「一寸した」の対義語は?

次に「一寸した」の対義語を見ていきましょう。

その1「相当の」

「相当の」「相当の腕前」のように、簡単には攻略できないような実力や能力があることを指す言葉で、「一寸した」の対義語の一つとして挙げてもいいでしょう。「相当の」意志の持ち主との攻防では、生半可な気持ちではとても太刀打ちできません。

その2「極めて」

「極めて」程度が甚だしい様子を表していますから「一寸した」の対義語と言えます。栄華を誇った古代ギリシアでは、「極めて」多くの有名な哲学者や政治家が出現していることはご存じでしょう。そのような様相を見て「一寸した」現象とはとても言えません。

なお類義語の章で解説した「かなりの」「一寸した」の対義語に挙げられるのではないでしょうか。この場合は「一寸した」のような一歩引いた意味ではなく、直截的な意味として捉えることができます。

その3「なかなかの」

「なかなかの」はそれ相応の能力を持った人物を評して使う言葉で「一寸した」の対義語と言えます。スポーツで人と同じ練習メニューをこなしてもなお平然として次の練習に取りかかるような人は、そのスポーツではかなり高い能力を有しており「なかなかの」人物だと言えるでしょう。

\次のページで「「一寸した」の英訳は?」を解説!/

「一寸した」の英訳は?

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最後に「一寸した」の英訳を見ていきましょう。

その1「trifling」

「trifling」とは「些細なこと」を意味しており、「一寸した」の英訳として適当ではないでしょうか。「a trifling sum」と言えば「わずかな金額」のことです。このほか「trifling」には「くだらない」「つまらない」という意味もあります。

その2「petty」

「petty」とは「些細な」「取るに足りない」という意味です。また「度量が狭い」という意味でも使われます。「二流の」「ちんけな」という意味もあり、こそ泥を「a petty thief」と言ったり、偉そうにしている小役人を侮蔑する意味で「petty officials」と言ったりすることもあるようです。

その3「quite a bit」

「quite a bit」「一寸した」の意味のうち、「ひとかどの」とか「いっぱしの」という意味で、ある程度の地位にある人に対して使われます。ただ日本語の「一寸した」のように、一つの言葉で別の意味を持っているわけではありません。

「一寸した」を使いこなそう

この記事では「一寸した」の意味・使い方・類語などを説明しました。「一寸した」はこの記事で解説したように、取りようや文脈によって微妙なニュアンスの違いが出てきます。日本語がそのような言語だと理解したうえで、正しく使うようにしてください。

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【慣用句】「一寸した」の意味や使い方は?例文や類語を元広報紙編集者がわかりやすく解説!

この記事では「一寸した」について解説する。

端的に言えば一寸したの意味は「ほんの少し」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

自治体広報紙の編集を8年経験した弘毅を呼んです。一緒に「一寸した」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/八嶋弘毅

自治体広報紙の編集に8年携わった。正確な語句や慣用句の使い方が求められるので、正しい日本語の使い方には人一倍敏感。

「一寸した」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「一寸した」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「一寸した」の意味は?

「一寸した」には、次のような意味があります。

1.大したことではない。わずかな。
2.かなりの。なかなかの。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「一寸した」

「一寸した」の読み方は「ちょっとした」です。「いっすんした」ではありませんから注意してください。「一寸」は尺貫法による長さの単位で、約3.03センチです。それほどわずかなものという意味を持っています。

「一寸」と書いて「ちょっと」と読むのは当て字で、ほとんどの国語辞典では漢字を使わずにひらがなで表記されているのが普通です。今日では漢字で「一寸した」と書いても読むことが困難な人が増えています。よほどこだわりがない限りは「ちょっとした」と書いたほうがいいでしょう。

「一寸した」の語源は?

次に「一寸した」の語源を確認しておきましょう。先ほど説明したとおり、「一寸」には「ほんのわずか」という意味があります。測る対象は時間、スポーツ競技の距離などいろいろです。

また「一寸の虫にも五分の魂(たましい)」とか「一寸の光陰軽んずべからず」といったことわざや警句もあります。「一寸の虫にも五分の魂」とはどんなに小さな弱者にも、それなりの意地があるという意味です。また「一寸の光陰軽んずべからず」とは、時間が過ぎ去るのは早いから、少しの時間も無駄にしてはいけないという意味があります。これらに関連して「一寸した」と表示されるようになったのが由来です。

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