この記事では「一二を争う」について解説する。

端的に言えば一二を争うの意味は「他に抜きんでて優劣の差がない」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

自治体広報紙の編集を8年経験した弘毅を呼んです。一緒に「一二を争う」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/八嶋弘毅

自治体広報紙の編集に8年携わった。正確な語句や慣用句の使い方が求められるので、正しい日本語の使い方には人一倍敏感。

「一二を争う」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「一二を争う」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「一二を争う」の意味は?

「一二を争う」には、次のような意味があります。

一番になるか二番になるかで競う。また、特にすぐれていて、一番か悪くても二番には位置する。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「一二を争う」

「一二を争う」とは文字どおり一位か二位に位置する程度の優秀な存在であることを意味しています。つまり、常に一番か二番かで前後することはあっても、結果が三位以下になることがないほど程度が優秀な様子を表現する言葉です。

なお広辞苑をはじめとしたほとんどの国語辞典では「一二を争う」と表記されていますが、読み間違いがないよに「一、二を争う」と読点を加えるよう注釈がある辞書もあります。また時々「12を争う」と書く人もいますが、これでは「じゅうにをあらそう」と読み方を間違える可能性があるため、漢数字を使うようにしてください。

「一二を争う」の語源は?

次に「一二を争う」の語源を確認しておきましょう。「一二」は一番か二番のことですから問題ないと思います。「争う」「競争する」「主張を通そうとする」ことを表していると考えればわかりやすいでしょう。「争う」とは激しい競争のことで「先陣争い」とか「優勝争い」のように使われることが普通です。

「争う」「あら」「荒(あら)い」「あら」「そう」「競(きそ)う」「そう」が語源となっているとの説が多数を占めています。「戦う」と違う点は暴力を伴わないところです。余談ですが「戦う」「叩き合う」が変化したものと言われていることも覚えておいて損はないでしょう。

坂口安吾の『温浴』という作品には「奇妙な貸家で、だいたい差配というものは家主に使われているのが普通のはずであるが、ここはアベコベに、差配が伊東で一二を争う金持で、御殿のような大邸宅に住んでいる」という一節があります。

\次のページで「「一二を争う」の使い方・例文」を解説!/

「一二を争う」の使い方・例文

「一二を争う」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、例えば以下のように用いられます。

1.今度行く旅館は、札幌でも一二を争うサービスと広い座敷を誇っており、大人数で宴会をするのにとても便利だ。
2.あの弁護士は、例え起訴されても被疑者を無罪にすることにかけては一二を争う腕だ。
3.僕の好きな著者は、文章のうまさでは一二を争うと定評があるので、文章を学ぶうえで大いに参考になる。

「一二を争う」内容はさまざまです。例えば文章なら語彙力、誤字・脱字の少なさなどの言語能力が優れていて、他人に引けを取らない状態を表しています。またホテルや旅館であれば、カウンターでの接客態度、ネット環境の充実度など診断される要素は満載です。それらの評価が口コミやランキングで表されるため、経営者サイドでもそれらのデータをヒントに「一二を争う」施設にしようと日常の業務に励んでいます。

電化製品や自動車でも同じです。やはりいかに優れた機能を与えられるか競争し、日夜製品のテストを繰り返しています。このような結果、問題点を解決し、お客さんのご要望に添うことができた物や施設が「一二を争う」地位を保つことができるのです。

「一二を争う」の類義語は?違いは?

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ここでは「一二を争う」の類義語を見ていきましょう。

その1「指折りの」

「一二を争う」の類義語として、まず「指折りの」を挙げておきましょう。「指折りの」「一二を争う」ほどではないものの、たくさんのなかでも指を折って数えられるほど優れていることを表しています。それに関連した表現として「五指に入る」も同じような意味を持った言葉として挙げてもいいでしょう。

\次のページで「その2「一流の」」を解説!/

その2「一流の」

「一流の」「一二を争う」の類義語と言えます。日本の首都・東京もさまざまな課題を抱えているとはいえ、人口の増加率、列車の発着回数の多さなど、まぎれもなくニューヨークやロンドンと肩を並べる世界一流の都市の一つと言えるでしょう。

このように「一二を争う」とか「一流の」と言う場合、必ずしも「断トツ」である必要はありません。「断トツ」とは「断然トップ」の略語ですから、ほかに比べるものがない様子を言います。これに対して「一二を争う」「一流の」は、ほかにも同じレベルの事柄があり、そこで激しく一位の座をかけて争っている場合に使う言葉です。

その3「折り紙付き」

「折り紙付き」という言葉は、平安時代から公式文書や贈呈品の目録として用いられた半分に折った紙が由来とされています。その後、江戸時代には美術品や刀剣などの工芸品についた鑑定書を「折り紙」と言うようになりました。そこから品質が確かなものとして保証されているものを「折り紙付き」と言うようになったのです。

「折り紙付き」のものは一つとは限りません。この点からも「一二を争う」の類義語と言えます。なお「折り紙付き」は、保証つきという意味で物だけではなく人に対しても使われるようになりました。

「一二を争う」の対義語は?

次に「一二を争う」の対義語を見ていきましょう。

その1「後塵を拝する」

「後塵を拝する」とは人に後れを取って、追いかける立場になることを表しています。先を行く人の後ろについていくことになりますから、馬や馬車の立てるほこりをかぶることになることからできあがった言葉です。とても「一二を争う」ことはできないでしょう。

その2「どんじり」

「どんじり」を漢字で書くと「どん尻」です。お尻が人間の体の終端に近い部分にあるように「どんじり」とは最後尾や最後のほうを指します。物事の最後を「お尻」と言うようなものです。「先頭」の対極にある言葉ですから「一二を争う」の反対の言葉だと言えます。

その3「ビリ」

「ビリ」とはお尻のことです。したがって先に挙げた「どんじり」と意味は同じになります。また「芸妓」「娼妓」を指す俗語としても使われているようです。中国では娼婦のことを「ぴい」と言いますから、それが転じて「芸妓」「娼妓」を意味する言葉になったという説があります。

\次のページで「「一二を争う」の英訳は?」を解説!/

「一二を争う」の英訳は?

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最後に「一二を争う」の英訳を見ていきましょう。

その1「to compete for the first place」

「to compete for the first place」「一二を争う」の英訳です。「first」には「最初の」という意味のほかに「主要な」とか「一流の」という意味もあります。したがって「the first place」「一流の場所(ポジション)」を表しているのです。

「compete」「競争」を意味します。つまり「to compete for the first place」「一流の地位を求めて競う」「一二を争う」という意味になるのです。ちなみに日本で各企業が発注者に案を持ち寄って競争させ、そのなかから一つを採用することを「コンペ」と言いますが、.これは「compete」の名詞形「competition」から来ています。

その2「to be one of the best」

「to be one of the best」を直訳すると「最高のものの一つになる」ですから、日本語の「一二を争う」と同じ意味になります。「to be the best」ではなく「on of the best」ですから注意してください。「to be the best」では「最高のものになる」となり、「一二を争う」とは違う意味になってしまいます。

「一二を争う」を使いこなそう

この記事では「一二を争う」の意味・使い方・類語などを説明しました。誰でも、どのような分野であれ「一二を争う」存在になりたいと思っているのではないでしょうか。そのためには会社や学校でわからないことはこまめに質問したり、書籍に親しんであらゆる知識を頭に入れるようにしていくことが必要です。そうすればおのずから、一つの分野で「一二を争う」ことができるようになるでしょう。

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【慣用句】「一二を争う」の意味や使い方は?例文や類語を元広報紙編集者がわかりやすく解説!

この記事では「一二を争う」について解説する。

端的に言えば一二を争うの意味は「他に抜きんでて優劣の差がない」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

自治体広報紙の編集を8年経験した弘毅を呼んです。一緒に「一二を争う」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/八嶋弘毅

自治体広報紙の編集に8年携わった。正確な語句や慣用句の使い方が求められるので、正しい日本語の使い方には人一倍敏感。

「一二を争う」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「一二を争う」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「一二を争う」の意味は?

「一二を争う」には、次のような意味があります。

一番になるか二番になるかで競う。また、特にすぐれていて、一番か悪くても二番には位置する。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「一二を争う」

「一二を争う」とは文字どおり一位か二位に位置する程度の優秀な存在であることを意味しています。つまり、常に一番か二番かで前後することはあっても、結果が三位以下になることがないほど程度が優秀な様子を表現する言葉です。

なお広辞苑をはじめとしたほとんどの国語辞典では「一二を争う」と表記されていますが、読み間違いがないよに「一、二を争う」と読点を加えるよう注釈がある辞書もあります。また時々「12を争う」と書く人もいますが、これでは「じゅうにをあらそう」と読み方を間違える可能性があるため、漢数字を使うようにしてください。

「一二を争う」の語源は?

次に「一二を争う」の語源を確認しておきましょう。「一二」は一番か二番のことですから問題ないと思います。「争う」「競争する」「主張を通そうとする」ことを表していると考えればわかりやすいでしょう。「争う」とは激しい競争のことで「先陣争い」とか「優勝争い」のように使われることが普通です。

「争う」「あら」「荒(あら)い」「あら」「そう」「競(きそ)う」「そう」が語源となっているとの説が多数を占めています。「戦う」と違う点は暴力を伴わないところです。余談ですが「戦う」「叩き合う」が変化したものと言われていることも覚えておいて損はないでしょう。

坂口安吾の『温浴』という作品には「奇妙な貸家で、だいたい差配というものは家主に使われているのが普通のはずであるが、ここはアベコベに、差配が伊東で一二を争う金持で、御殿のような大邸宅に住んでいる」という一節があります。

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