この記事では「虎を野に放つ」について解説する。

端的に言えば虎を野に放つの意味は「危険なものを野放しにする」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元国語科教員ライターのminを呼んです。一緒に「虎を野に放つ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/min

高等学校の国語科教員として、授業や受験対策、小論文の講座を3年間経験。主に現代文を担当し、言葉に関する指導を幅広く経験してきた。現在はWebライターとして活動中。

「虎を野に放つ」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「虎を野に放つ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「虎を野に放つ」の意味は?

「虎を野に放つ」には、次のような意味があります。

虎(とら)を野(の)に放つ
猛威を振るう者の力を発揮できるよう自由にさせることのたとえ。また、のちに大きな災いをもたらすような危険なものを野放しにしておくことのたとえ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「虎を野に放つ」

虎を野に放つ」は2つの意味を持つことわざです。1つは「力のあるものを自由に力を発揮できる状態にすること」、もう1つは「災いをもたらすものを野放しにすること」となります。ポジティブな意味とネガティブな意味の両方持つことができるので、使用する文章や文脈には注意が必要です。

「虎を野に放つ」の語源は?

次に「虎を野に放つ」の語源を確認しておきましょう。

」は動物のトラというだけではなく、昔から「たけだけしいものや、勇猛なもの」「猛悪なこと」のたとえとしてよく使われます。

「虎を野に放つ」は「千里(せんり)の野に虎を放つ」という言い方もされますが、もともと「千里四方の広い野原に虎を放って自由にさせた状態」をたとえたことわざです。そんな広い場所に虎を放てば何をするかわからないですし、まさに「危険なものを野放しにする」状況ということで、そんな意味のことわざになりました。

もう一つの意味については、先ほどの状況を別の捉え方で考えて生まれたと考えられます。違う捉え方をすれば「力を持つものが好きに自分の力を発揮することができる」ということです。

\次のページで「「虎を野に放つ」の使い方・例文」を解説!/

「虎を野に放つ」の使い方・例文

「虎を野に放つ」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.大金を手にした彼がギャンブルの盛んな国に移住するなんて、虎を野に放つようなものだ。
2.田舎から上京した彼女の自由奔放ぶりはまさに、虎を野に放ってしまったと言える。
3.リスクヘッジとして行ったことが、結果として虎を野に放ったような危険をもたらすこととなった。

1、2は「力のあるものを自由に力を発揮できる状態にすること」という意味で「虎を野に放つ」を使用した例です。日常会話のなかではこちらの意味で使われる頻度が高く、「力」というだけではなく「勢い」や「エネルギー」のある人が、それを自由に発揮できる場所にいくといったニュアンスで幅広く使われます。

3はもう一つの意味「災いをもたらすものを野放しにすること」の意味の例文です。リスクあるものが野放しになるという、かなり危険な状態を示します。

このように文脈によって意味が異なってきますので、使用する際には注意しましょう。

「虎を野に放つ」の類義語は?違いは?

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次に「虎を野に放つ」の類義語について詳しく解説していきます。

「虎を野に放つ」の類義語「鬼に金棒」

「鬼に金棒(おににかなぼう)」は「ただでさえ勇猛な鬼に金棒を持たせる意から、強い上にもさらに強さが加わること」という意味のことわざです。「虎を野に放つ」の中の「力のあるものを自由に力を発揮できる状態にすること」の方の意味と似た意味の言葉となっています。

意味の違いとしては、「鬼に金棒」は「強いものがさらに強さを得るような状況になる」という意味であるのに対し、「虎を野に放つ」は「力を発揮できる場へ行く」という意味のため、後者の方が限定的な意味になっている点です。

昔から「鬼」も「虎」も「勇猛なもの」「恐ろしいもの」として使われる言葉で、多くのことわざに登場するワードになるため、深く調べてみると面白いかもしれません。

\次のページで「「虎を野に放つ」の対義語は?」を解説!/

「虎を野に放つ」の対義語は?

次に「虎を野に放つ」の対義語についてですが、「力のあるものを自由に力を発揮できる状態にすること」「災いをもたらすものを野放しにすること」という意味であるため、対義語の定義が難しい表現となっています。

その代わり、「虎」を使った間違いやすい表現のことわざを紹介しますので、合わせてチェックしてみてください。

「虎」を使った間違いやすいことわざ

「虎を野に放つ」と意味を混同しやすい表現について解説します。

「虎の尾を踏む」と間違えないようにしよう

虎の尾を踏む」ということわざがあります。こちらは「きわめて危険なことをすること」のたとえです。確かに、虎のしっぽを踏めば何をされるかわかりませんよね。

この「虎の尾を踏む」と「虎を野に放つ」の意味を間違えて使ってしまう場合が多いです。「危険を冒すこと」と「危険なものを野放しにすること」なので、実際に危険を冒しているかどうかという点で、微妙にニュアンスがことなりますよね。

細かい違いではありますが、この機会に注意するようにしておくと良いでしょう。

「虎を野に放つ」の英訳は?

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最後に「虎を野に放つ」の英訳について解説していきます。

意味から英訳を考えてみよう

「虎を野に放つ」は直訳すると「AをBさせる」の「let A B」を使って「let a tiger run loose」と英訳することができます。このまま使っても意味は伝わるようですが、もう少しわかりやすく「虎を野に放つ」という意味から英訳を考えてみましょう。

「虎を野に放つ」を「危険な状態におかれる」という日本語として解釈すると、いろんな言い方ができますが、例えば「be courting disaster」のような形で表現することが可能です。もう1つの意味である「力のあるのものが自由に力を発揮できる状態にする」については、少し強引ですが「その人の強さをさらに完璧にする」と考えて「become a perfect ◯◯」といった言い方で表現することもできるでしょう。こうした表現のあとに最初に紹介した「let a tiger run loose」を加えれば完璧です。

最後に例文を用意したので、合わせて参考にしてみてください。

It is like letting a tiger run loose.
それはまさに虎を野に放ったようなものだ。


He was courting disaster at that time.
あの時の彼は虎を野に放った状況の中にいた(危険な状況の中にいた)。


Since he move aboroad, he became perfect comedian (like letting a tiger run loose).
海外に移住して以来、彼は野に放たれた虎のような(完璧な)芸人となった。

\次のページで「「虎を野に放つ」を使いこなそう」を解説!/

「虎を野に放つ」を使いこなそう

この記事では「虎を野に放つ」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「虎」を使ったことわざや慣用句は非常に多く存在します。似たような意味や言い回しがその分多くなっており、混同される場合もあるので注意が必要です。まとめて調べてみると面白いので、興味がある方は「虎」を使った表現についてぜひチェックしてみてください。

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国語言葉の意味

【ことわざ】「虎を野に放つ」の意味や使い方は?例文や類語を元国語科教員ライターがわかりやすく解説!

「虎を野に放つ」の対義語は?

次に「虎を野に放つ」の対義語についてですが、「力のあるものを自由に力を発揮できる状態にすること」「災いをもたらすものを野放しにすること」という意味であるため、対義語の定義が難しい表現となっています。

その代わり、「虎」を使った間違いやすい表現のことわざを紹介しますので、合わせてチェックしてみてください。

「虎」を使った間違いやすいことわざ

「虎を野に放つ」と意味を混同しやすい表現について解説します。

「虎の尾を踏む」と間違えないようにしよう

虎の尾を踏む」ということわざがあります。こちらは「きわめて危険なことをすること」のたとえです。確かに、虎のしっぽを踏めば何をされるかわかりませんよね。

この「虎の尾を踏む」と「虎を野に放つ」の意味を間違えて使ってしまう場合が多いです。「危険を冒すこと」と「危険なものを野放しにすること」なので、実際に危険を冒しているかどうかという点で、微妙にニュアンスがことなりますよね。

細かい違いではありますが、この機会に注意するようにしておくと良いでしょう。

「虎を野に放つ」の英訳は?

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最後に「虎を野に放つ」の英訳について解説していきます。

意味から英訳を考えてみよう

「虎を野に放つ」は直訳すると「AをBさせる」の「let A B」を使って「let a tiger run loose」と英訳することができます。このまま使っても意味は伝わるようですが、もう少しわかりやすく「虎を野に放つ」という意味から英訳を考えてみましょう。

「虎を野に放つ」を「危険な状態におかれる」という日本語として解釈すると、いろんな言い方ができますが、例えば「be courting disaster」のような形で表現することが可能です。もう1つの意味である「力のあるのものが自由に力を発揮できる状態にする」については、少し強引ですが「その人の強さをさらに完璧にする」と考えて「become a perfect ◯◯」といった言い方で表現することもできるでしょう。こうした表現のあとに最初に紹介した「let a tiger run loose」を加えれば完璧です。

最後に例文を用意したので、合わせて参考にしてみてください。

It is like letting a tiger run loose.
それはまさに虎を野に放ったようなものだ。


He was courting disaster at that time.
あの時の彼は虎を野に放った状況の中にいた(危険な状況の中にいた)。


Since he move aboroad, he became perfect comedian (like letting a tiger run loose).
海外に移住して以来、彼は野に放たれた虎のような(完璧な)芸人となった。

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