この記事では「音に聞く」について解説する。

端的に言えば音に聞くの意味は「うわさに聞く」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、ロシアで2年間日本語教師として働いた大学院生ライターの「むかいひろき」を呼んです。一緒に「音に聞く」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間日本語教師として働いた経験を持つ大学院生。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「音に聞く」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「音に聞く」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「音に聞く」の意味は?

「音に聞く」には、次のような意味が国語辞典に掲載されています。

1.人伝えに聞く。うわさに聞く。
2.名高い。有名である。「―・く勇将」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「音(おと)に聞(き)・く」

音に聞く」は「1.うわさに聞く」「2.有名である」という2つの意味を持った慣用句です。「音に聞く 高師(たかし)の浦の あだ波は かけじや袖の 濡れもこそすれ」という小倉百人一首に掲載されている祐子内親王家紀伊の恋の和歌が有名ですよね。

学校で古典を習ったときにこの言葉を目にした方も多いと思いますが、実は現代でも使用されることがあります。なお、意味は古文のものと変化はありません。

「音に聞く」の語源は?

次に「音に聞く」の語源を確認しておきましょう。

「音に聞く」の正確な語源は分かっていません。ただ、古文で「音」は、現代語の「おと」以外にも「便り」「うわさ」「評判」という意味がありました。そして「音に聞く」という言葉自体が、奈良時代の8世紀後半の万葉集音聞(おとにきき)目にはいまだ見ぬ吉野川六田(むつだ)の淀を今日見つるかも」にすでに登場しています。

とても古くから使われている表現だということは間違いなさそうです。

\次のページで「「音に聞く」の使い方・例文」を解説!/

「音に聞く」の使い方・例文

「音に聞く」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.これが音に聞く関東のからっ風かぁ。本当にすごい風だ…。
2.彼があの音に聞く日本人初の金メダリストか…。オーラがすごいなぁ。
3.ここが音に聞くパリのエッフェル塔かぁ。やっぱりきれいだなぁ。

例文1では、「これがうわさに聞いた関東の空っ風かぁ」という意味で「音に聞く」が使用されています。関東の人は風が強いのに慣れていますが、それ以外の地方の人にとっては、うわさで聞いていても実際に体験しないと実感がわかないですよね。

例文2では、「彼があの有名な日本人初の金メダリストかぁ」という意味で「音に聞く」が使用されています。そして、例文3では、「ここがあの有名なエッフェル塔かぁ」という意味で「音に聞く」が使用されていますね。

例文2と3は、文脈によっては「うわさを聞く」という意味にもとれます。意味では2つに分けましたが、どちらかと言えば「うわさに聞いたことがあり、かつ有名な」と、2つの意味が合わさったような意味で使われていることも多いです。

「音に聞く」の類義語は?違いは?

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「音に聞く」の類義語は、「高名な」「著名な」です。意味や違いを確認していきましょう。

その1「高名な」

高名な」は「こうめいな」と読みます。「高い評価を受け、広く一般の人々に名前を知られていること、そのさま」という意味の形容動詞です。「音に聞く」の「1.うわさに聞く」「2.有名である」という2つの意味をあわせたような意味を持った言葉ですね。

「音に聞く」との違いは、「高名な」は基本的に人物に対して用いられます。一方の「音に聞く」は人物以外にも広く使用されるという点が違いになりますね。

例文を見てみましょう。

\次のページで「その2「著名な」」を解説!/

・彼女がノーベル文学賞を受賞した高名な作家かぁ。書店で買った彼女の本に感動して以来、一度見てみたかったんだ。
・あの人があの高名な人気アスリートだとはとても信じられない。周囲への態度が傲慢すぎる…。

その2「著名な」

著名」は「ちょめいな」と読みます。「世間に名が知られていること、そのさま」「有名な」という意味の形容動詞です。「2.有名である」と似たような意味を持った言葉ですね。

「音に聞く」との違いは、「高名な」と同様に「著名な」は基本的に人物に対して用いられます。一方の「音に聞く」は人物以外にも広く使用されるという点が違いになりますね。

例文を見てみましょう。

・国文学で著名な教授による金葉和歌集の講義を聞いたが、とても分かりやすくて感動した。
著名な科学者たちが皆反対しているのに、政府はなぜこの計画を押し進めるのか…

「音に聞く」の対義語は?

「音に聞く」の対義語は「無名な」です。意味や使い方を確認していきましょう。

「無名な」

無名な」は「むめいな」と読みます。「1.名がないこと。名がわからないこと。また、名を記さないこと。無記名」「2.世間に名が知られていないこと」「3.名目がたたないこと」という意味を持った形容動詞です。

2番目の「世間に名が知られていないこと」という意味が、「音に聞く」と反対の意味だと言えますね。

例文を見てみましょう。

・藤原選手は無名の公立高校出身だが、大学で才能が花開き、ドラフト3位でホークスに入団した。
・堀河さんは無名の都内の私立大学の文学部の出だが、昨年芥川賞を受賞した。

\次のページで「「音に聞く」の英訳は?」を解説!/

「音に聞く」の英訳は?

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「音に聞く」の英語表現は「famous」です。意味や例文を見てみましょう。

「famous」

famous」は「有名な」「名高い」という意味の英単語です。「音に聞く」と似たようなニュアンスを表す英語表現といえるでしょう。

例文を見てみましょう。

・I first visited the famous Luding Bridge.
・わたしは最初に音に聞くルディンク橋を訪れた。

・The picture was painted by a famous Japanese painter.
・この絵はある音に聞く日本人画家によって描かれた。

「音に聞く」を使いこなそう

この記事では「音に聞く」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「音に聞く」は「1.うわさに聞く」「2.有名である」という2つの意味を持った慣用句です。大昔から使用されている表現であり、奈良時代(8世紀後半)の万葉集に掲載されている和歌で、既に使用が確認されています。

そのような昔から使用されている表現が、現代にも残っているのは驚きですね!

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国語言葉の意味

【慣用句】「音に聞く」の意味や使い方は?例文や類語を日本語教師の大学院生がわかりやすく解説!

この記事では「音に聞く」について解説する。

端的に言えば音に聞くの意味は「うわさに聞く」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、ロシアで2年間日本語教師として働いた大学院生ライターの「むかいひろき」を呼んです。一緒に「音に聞く」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間日本語教師として働いた経験を持つ大学院生。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「音に聞く」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「音に聞く」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「音に聞く」の意味は?

「音に聞く」には、次のような意味が国語辞典に掲載されています。

1.人伝えに聞く。うわさに聞く。
2.名高い。有名である。「―・く勇将」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「音(おと)に聞(き)・く」

音に聞く」は「1.うわさに聞く」「2.有名である」という2つの意味を持った慣用句です。「音に聞く 高師(たかし)の浦の あだ波は かけじや袖の 濡れもこそすれ」という小倉百人一首に掲載されている祐子内親王家紀伊の恋の和歌が有名ですよね。

学校で古典を習ったときにこの言葉を目にした方も多いと思いますが、実は現代でも使用されることがあります。なお、意味は古文のものと変化はありません。

「音に聞く」の語源は?

次に「音に聞く」の語源を確認しておきましょう。

「音に聞く」の正確な語源は分かっていません。ただ、古文で「音」は、現代語の「おと」以外にも「便り」「うわさ」「評判」という意味がありました。そして「音に聞く」という言葉自体が、奈良時代の8世紀後半の万葉集音聞(おとにきき)目にはいまだ見ぬ吉野川六田(むつだ)の淀を今日見つるかも」にすでに登場しています。

とても古くから使われている表現だということは間違いなさそうです。

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