この記事では「言を左右にする」について解説する。
端的に言えば「言を左右にする」の意味は「はっきりしたことを言わずその場をごまかす、言を左右に託する」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「言を左右にする」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/flicker

仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「言を左右にする」の意味や語源・使い方まとめ

image by PIXTA / 72058596

それでは早速「言を左右にする」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「言を左右にする」の意味は?

「言を左右にする」には、次のような意味があります。

あれこれ言い逃れて、はっきりしたことを言わない。

出典:コトバンク

「言を左右にする」は己の立場や態度、何かの返事などをそれとはっきり表明しなければならない場面において、どちらともつかない曖昧な態度を意図的に取って、はっきりとは返事しないことを意味する慣用句です

「言を左右にする」の語源は?

次に「言を左右にする」の語源を確認しておきましょう。それでは「左」と「右」の漢字の成り立ちについて説明しましょう。「左」は工作の意味を表す「工」と、ひだりの手の形の文字とを合わせた字。工作の仕事を助ける意味を表します。

後に、工作の道具をもった右手のはたらきを助ける「ひだりて」の意味に使われるようになりました。また「右」は口とかばって助ける意味の音を示す文字とを合わせた字。口添えをして助ける意味を表します。後に、優れている意味を表す「優」の字と音が同じであり、右手の方が左手より優れていることから、「みぎ」の意味に使われるようになりました

\次のページで「「言を左右にする」の使い方・例文」を解説!/

「言を左右にする」の使い方・例文

「言を左右にする」の使い方について例文を挙げて解説していきます。この言葉は、たとえば以下のように用いられますよ。

1.健太は委員会で字の書き順と読み方を間違え、言を左右にする言い訳をした。再度、国語辞典を参考にし、用語一覧の単語を辞書なしで書き方も合わせて正確に書いた。

2.おすすめのサービスがお知らせできず申し訳ございません、と米国ボーイング航空運営社は言を左右にする確答をした。

例文1からは名誉挽回とばかりに再チャレンジした健太君の姿が想像できます。例文2からは明らかにできないことが隠されていることが読み取れますね。

「言を左右にする」の類義語は?違いは?

image by PIXTA / 70826990

「言を左右にする」と似たような意味をもつ言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「うやむや」

「うやむや」は不明瞭な様子を表す表現。例えば「(役所の不正)責任の所在をうやむやにするな」は「に-する」が付いて述語になりますし、「事件はうやむやなまま迷宮入りした」は「な」が付いて名詞にかかる修飾語になります。事の成り行きや結末が不明瞭になっていることについて、しばしば意図して無責任にする暗示がありますよ。「うやむや」は「あいまい」や「あやふや」に似ていますが、「あいまい」は対象の実態が不明瞭であることを客観的に表し、二者のいずれか判然としないことについても用いられます。また「あやふや」には不安定の暗示があります

\次のページで「その2「あやふや」」を解説!/

その2「あやふや」

「あやふや」は不明確な様子を表します。「僕の事好き?と彼女に聞いても、あやふやな返事しか返ってこなかった」「僕はあやふやな気持ちで大学に入ったんじゃない」は「な」が付いて名詞にかかる修飾語になりますし、「目撃者の記憶はあやふやだった」は「だ」が付いて述語になりますよ。述語にかかる修飾語にはなりません対象の実体を明確に決定できない様子を表し、不安定の暗示があります。二者のうちいずれか判然としないという意味にはなりません。

「あやふや」を使用する際のポイント

「あやふや」は「あいまい」や「うやむや」に似ていますが、「あいまい」は二者のいずれか判然としないことについても用いられます「うやむや」は結果を明瞭にしないことについて、無責任の暗示がありますよ。そのため「事件はあやふやなまま迷宮入りした」は誤用となり、正しくは「事件はうやむやなまま迷宮入りした」となりますよ。また「あやふやな記憶」は「何が何だかよくわからない」、「あいまいな記憶」は「AかBかはっきりしない」というニュアンスになります。

その3「定か」

「定か」は多くの場合、「古いことなので記憶がさだかでない」「霧がたちこめて彼の顔はさだかには見えなかった」などのように打消しを伴って「はっきり…しない」「確かでない」という意味になりますとてもかたい文章語で、日常会話にはあまり登場しません。肯定の内容を表すときには「はっきり」や「あきらか」「たしか」などを用います。そのため「年月を経ても記憶は定かだ」は誤用となり、正しくは「年月を経ても記憶は確かだ(はっきりしている)」となりますよ。

「定か」を使用する際のポイント

「定か」は「あきらか」に似ていますが、より主観的で自分の感覚としての確信を暗示するニュアンスがあり、客観的な証拠の存在を暗示しません。したがって、客観的な判断を表す事柄に関しては「定か」はふつう用いられません

そのため「この細菌と病気との関係はさだかでない」は誤用となり、正しくは「この細菌と病気との関係はあきらかでない」となります。主観的な確信を暗示する意味では「定か」は「たしか」に似ていますが、「たしか」は知的な理解や保証に基づく確信の暗示があり、感覚的な理解に基づくニュアンスのある「定か」と異なりますよ。

「言を左右にする」の対義語は?

「言を左右にする」と反対の意味に近い言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

「じじつ」

「じじつ」は実際に存在する物事を表します。「検察当局は脱税の事実をつかんだ」は基本的な名詞の用法、「じじつ、彼の言うことは正しい」は「実際に怒ったように、本当に、確かに」という意味を表す、述語にかかる修飾語の用法

「じじつは小説よりも奇なり」はことわざで、実際に怒ったことの方が作られた話よりも不思議なことがしばしばあるという意味です。「じじつ」は存在の暗示が強く、しばしば非存在や虚構と対置されますよ。「君が何んと言おうとじじつはじじつだ」では相手の「間違い(非存在)ではないか、嘘(虚構)ではないか」という疑惑に対して、実際の存在を強調する意味で用いられます

\次のページで「「じじつ」を使用する際のポイント」を解説!/

「じじつ」を使用する際のポイント

ただし、冷静で客観的な表現であって、特定の感情は暗示されていません。現実に起こったことという意味で、「じじつ」は「実際」に似ていますが、「実際」は現実の状況をそのまま認める暗示が強く、理念や理想と対置され、非存在や虚構とは対置されません

そこで述語にかかる修飾語として用いられた場合には、「じじつ」が話者の冷静な確信を暗示するのに対して、「実際」は現実に照らした話者の納得を暗示します。そのため「事実、あいつは困った奴だよなあ」は誤用となり、正しくは「実際、あいつは困った奴だよなあ」となりますよ。

「言を左右にする」の英訳は?

image by PIXTA / 70826917

「言を左右にする」の英訳にはどのようなものがあるのでしょうか。英語で「言を左右にする」と言い表す時の例をさっそく見ていきましょう。

「equivocate」

「equivocate」は「曖昧にする」という意味です。「You say that in a way that's equivocate」で「言を左右にするような言い方だ」と表現することができますよ。

「言を左右にする」を使いこなそう

この記事では「言を左右にする」の意味・使い方・類語などを説明しました。「言を左右にする」は己の立場や態度、何かの返事などをそれとはっきり表明しなければならない場面において、どちらともつかない曖昧な態度を意図的に取って、はっきりとは返事しないことを意味する慣用句だと解説しましたね。ちなみに「言を左右にする」と同異義語の表現に「上手」が挙げられます。「上手」は口先がうまい、お世辞がうまいという意味を表しますよ。「お上手を言う」は慣用句で、「お世辞を言う」という意味、「じょうず者」はお世辞のうまい者という意味。ただし、「お上手を言う」は「お世辞を言う」より婉曲的なので、言われる者の不快感は少ない表現になっています

" /> 【慣用句】「言を左右にする」の意味や使い方は?例文や類語をプロダクション編集者がわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

【慣用句】「言を左右にする」の意味や使い方は?例文や類語をプロダクション編集者がわかりやすく解説!

この記事では「言を左右にする」について解説する。
端的に言えば「言を左右にする」の意味は「はっきりしたことを言わずその場をごまかす、言を左右に託する」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「言を左右にする」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/flicker

仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「言を左右にする」の意味や語源・使い方まとめ

image by PIXTA / 72058596

それでは早速「言を左右にする」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「言を左右にする」の意味は?

「言を左右にする」には、次のような意味があります。

あれこれ言い逃れて、はっきりしたことを言わない。

出典:コトバンク

「言を左右にする」は己の立場や態度、何かの返事などをそれとはっきり表明しなければならない場面において、どちらともつかない曖昧な態度を意図的に取って、はっきりとは返事しないことを意味する慣用句です

「言を左右にする」の語源は?

次に「言を左右にする」の語源を確認しておきましょう。それでは「左」と「右」の漢字の成り立ちについて説明しましょう。「左」は工作の意味を表す「工」と、ひだりの手の形の文字とを合わせた字。工作の仕事を助ける意味を表します。

後に、工作の道具をもった右手のはたらきを助ける「ひだりて」の意味に使われるようになりました。また「右」は口とかばって助ける意味の音を示す文字とを合わせた字。口添えをして助ける意味を表します。後に、優れている意味を表す「優」の字と音が同じであり、右手の方が左手より優れていることから、「みぎ」の意味に使われるようになりました

\次のページで「「言を左右にする」の使い方・例文」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: