この記事では「懸河の弁」について解説する。
端的に言えば「懸河の弁」の意味は「早瀬の水の奔流するように勢いよくよどみのない弁舌」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「懸河の弁」の意味や例文、類語などを見ていきます。

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仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「懸河の弁」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「懸河の弁」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「懸河の弁」の意味は?

「懸河の弁」には、次のような意味があります。

水を上から流すように、とどこおりなく弁舌を振るうこと。

出典:コトバンク

「懸河の弁」は激流のように勢いよくよどみのない弁舌という意味の慣用句です。

「懸河の弁」の語源は?

次に「懸河の弁」の語源を確認しておきましょう。それでは「懸」の漢字の成り立ちについて説明しましょう。「懸」は「心」とかける意味の音を示す文字とを合わせた字。心に何かを「かける」「かかげる」意味を表します。

\次のページで「「懸河の弁」の使い方・例文」を解説!/

「懸河の弁」の使い方・例文

「懸河の弁」の使い方について例文を挙げて解説していきます。この言葉は、たとえば以下のように用いられますよ。

1.ともこは政治家のスピーチは懸河の弁、バラエティ番組のタレントの喋りは立て板に水と雑学に関連付けて故事やことわざを覚えている。

2.検察官は懸河の弁のごとく手帳のページを読み上げた。起訴された中国人の健太は外国語やカタカナ語が分からず、モノ知り顔をしつつ処分を待つのみだと思った。

例文1からはちょっと変わった物の覚え方ですが、子どもらしさが伝わってきますね。また、例文2からは海外で起訴された外国人の様子が伺えます。

「懸河の弁」の類義語は?違いは?

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「懸河の弁」と似たような意味をもつ言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「なめらか」

「なめらか」は行動や動作につかえるところがない様子を表します。これも行動や動作を起こす際の抵抗感のなさということができますよ。「彼は初めての演説というのになめらかな口調だった」はつかえたりせずに、よどみなく話すという意味、「新車は発信や停止がなめらかで乗り心地がいいね」は急発進や急停止がなく静かであるという意味。最近では外来語の「スムーズ」がよく使われます。

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その2「淀みない」

「淀みない」は停滞せずに進む様子を表します発言や発言に伴った事柄について用いられることが多く、それ以外のものについて用いられることはあまりありません

「彼の英語はよどみない」は発音が流暢だという意味、「上司の詰問にも彼女はよどみなく答えた」は答え方が流暢であるのみならず、発言の内容もすじが通っているという意味です。とても客観的な表現で、流暢に発言することについて特定の感想は暗示されていません

その3「すらすら」

「すらすら」は停滞することなく進行する様子を表します。「その留学生は難しい漢字をすらすらっと読んだ」「反省はしても謝罪の言葉がすらすらが出てこない」などのように単独でまたは「と」が付いて述語にかかる修飾語になります。「このペンはすらすら書ける」は具体物が滑るように動くという意味、「礼状くらいすらすら書けなくて恥ずかしい」「仕事がすらすらすいすいと進んだ」は物事が停滞なく成立するという意味です。勢い・気軽さ・爽快の暗示があります。

「すらすら」は「すいすい」や「するする」に似ていますが、「すいすい」は風邪を切るように快く進行する様子を表し、速さ・爽快・快感の暗示があります「するする」は摩擦が少なくよく滑る様子を表し、自動性の暗示があります。そのため「問題がすらすらと解けた」は「よくわかるなあ」、「問題がすいすいと解けた」は「気持ち良く解けたなあ」、「問題がするすると解けた」は「芋づる式にできちゃった」というニュアンスになります。

「懸河の弁」の対義語は?

「懸河の弁」と反対の意味に近い言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「ぼつぼつ」

「ぼつぼつ」は少しずつ進捗する様子を表します単独でまたは「と」が付いて述語にかかる修飾語になることが多いですが、「だ」が付いて述語になることもありますよ。

「もうぼつぼつお父さんが帰ってくるころよ」「今日すいずん暑いわね。ぼつぼつ扇風機を出すとするか」は時間の場合、「陽気に誘われて梅がぼつぼつ咲き出した」「会場にぼつぼつ客が集まり始めた」は動作・行動が進捗する場合、「その作家は三作目からぼつぼつ売れ出した」「国内生産はぼつぼつだから、どうしても輸入に頼らざるを得ない」は状態が進捗する場合

「ぼつぼつ」を使用する際のポイント

「(野球)九月を過ぎてこれだけ負けがこむと、選手にもぼつぼつあきらめムードが漂い始める」は雰囲気が変化する場合です。予定に向かって進んでいく行動(主体)に視点がありますが、やや客観的な表現で特定の感情を暗示しません

この「ぼつぼつ」は「ぼちぼち」や「そろそろ」に似ていますが、「ぼちぼち」はやや方言的で関西地方で好んで用いられ、評価の暗示があります「そろそろ」は予想・予定された時期・時間に到達しそうになっている様子を表し、予定の時期・時間を待ち受ける暗示があります

その2「ぽつぽつ」

「ぽつぽつ」は行為が断続する様子を表します。「男は問わず語りにぽつぽつ身の上話を始めた」「慣れない手つきでぽつぽつワープロを打つ」などのように単独で述語にかかる修飾語になりますよ。行動がスムーズに連続せず、とぎれとぎれに断続する様子を表し不器用の暗示があります。この「ぽつぽつ」は「ぽつりぽつり」に似ていますが、「ぽつりぽつり」は断続する間隔がもっと長い

\次のページで「「懸河の弁」の英訳は?」を解説!/

「懸河の弁」の英訳は?

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「懸河の弁」の英訳にはどのようなものがあるのでしょうか。英語で「懸河の弁」と言い表す時の例をさっそく見ていきましょう。

「speaks without hesitation」

「speaks without hesitation」は「淡々と語る」という意味です。「He speaks without hesitation」で「彼は懸河の弁のごとく話す」と表現することができますよ。

「懸河の弁」を使いこなそう

この記事では「懸河の弁」の意味・使い方・類語などを説明しました。「懸河の弁」は激流のように勢いよくよどみのない弁舌という意味の慣用句だと解説しましたね。ちなみに「懸河の弁」と同意義の言葉に「矢継ぎ早」が挙げられます。「矢継ぎ早」は同一の行動を非常に短い間隔で連続して起こす様子を表し、受け手に余裕を与えない暗示がありますよ。また、主体の積極的な行為について用いられ、自然発生的な行動については用いません。例えば「米軍のやつぎばやな攻撃に日本は防戦一方だった」などのように用いますよ。参考にしてくださいね。

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【慣用句】「懸河の弁」の意味や使い方は?例文や類語をプロダクション編集者がわかりやすく解説!

この記事では「懸河の弁」について解説する。
端的に言えば「懸河の弁」の意味は「早瀬の水の奔流するように勢いよくよどみのない弁舌」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
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仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「懸河の弁」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「懸河の弁」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「懸河の弁」の意味は?

「懸河の弁」には、次のような意味があります。

水を上から流すように、とどこおりなく弁舌を振るうこと。

出典:コトバンク

「懸河の弁」は激流のように勢いよくよどみのない弁舌という意味の慣用句です。

「懸河の弁」の語源は?

次に「懸河の弁」の語源を確認しておきましょう。それでは「懸」の漢字の成り立ちについて説明しましょう。「懸」は「心」とかける意味の音を示す文字とを合わせた字。心に何かを「かける」「かかげる」意味を表します。

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