
その2「後から後から」
「後から後から」は終わることなく続く様子を表し、「彼の仕事を点検すると、ミスがあとからあとから出てくる」「その店にはお客があとからあとからつめかけた」などのように動詞にかかる修飾語として用いられます。もうこれで終わりかと思うと終わらずに次々と続いて起こる様子を表し、一つの物事が起こるたびにそこで終わるかという話者の予想(期待)が働いている暗示がありますよ。
現象としては「次々と」に似ていますが、「次々と」は異なる物事が続いて起こる様子を表し、一つ一つも物事について終了を予想する暗示はありません。したがって「あとからあとからミスが見つかる」は「もうこれで終わりかこれで終わりかと思っているのに、際限もなくミスが見つかる」、「次々とミスが見つかる」は「一つまた一つと見つかる」というニュアンスになります。
その3「入れ替わり立ち代わり」
「入れ替わり立ち代わり」は大勢の人間が次々に姿を現す様子を表しますよ。例えば「その店には客がいれかわりたちかわりやって来る」「ファッションショーでは美人のモデルがいれかわりたちかわり現れてお客の目を引いた」などのように「来る・現れる」など出現を表す動詞にかかる修飾語として用いられます。
また、人間の出現の頻度が高いことを表しますが、複数の人間が交代して出現するという暗示があり、一人の人間のひんぱんな出入りや、出現以外の行動についてはふつう用いられません。したがって「彼は入れ替わり立ち代わり会社と液を往復した」「女の子たちは入れ替わり立ち代わりアイドルに握手した」は誤用となり、正しくは「彼はひっきりなしに会社と液を往復した」「女の子たちは次々にアイドルに握手した」となります。
「櫛の歯を挽く」の対義語は?
「櫛の歯を挽く」と反対の意味に近い言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。
その1「時に」
「時に」は例外的な物事が起こる可能性が存在する様子を表す副詞。例えば「彼はいつも約束の時間を守るが、ときに何の連絡もなしにすっぽかすことがある」「人はときに悪いと知りつつ悪事を犯すものだ」などのように述語にかかる修飾語として用いられます。ややかたい文章語で、日常会話にはあまり登場しません。また、頻度そのものに視点はなく例外の起こる可能性を暗示します。
この点で頻度が少ないことを表す「たまに」「ときたま」などと異なるでしょう。この「時に」は「時として」にも似ていますが、「時として」は頻度が少ないことを考慮に入れる様子を表し、例外的であるかどうかには言及しません。そのため「人は時に悪いと知りつつ悪事を犯す」は「通常は悪いこととは気づかずに悪事を犯す」、「人は時として悪いと知りつつ悪事を犯す」は「確信犯はたまにいる」というニュアンスになります。
その2「ばらばら」
「ばらばら」は統合されているべきものが独立して個別に存在する様子を表し、慨嘆の暗示がありますよ。例えば「自由市場のリンゴはサイズがばらばらだ」は大きさ、「縦割り行政の弊害でばらばらに道路を掘り返す」は時期、「ワゴンの商品にはばらばらの値段がついていた」は値段、「四つの暗に対して意見はばらばらに分かれた」「みんな言いたいことをばらばらに行っているだけじゃ、ちっとも前に進まないじゃないか」は意見、「うちの家族は帰宅時間がばらばらだ」は時間が同じでなく個別であるという意味です。
この「ばらばら」は「まちまち」に似ていますが、「まちまち」は個々の要素が非常に隔たっていて統一のしようがない懸隔と困惑の暗示がありますよ。そのため「うちは家族の帰宅時間がばらばらだ」は「夕飯が一緒に食べられない」、「うちは家族の帰宅時間がまちまちだ」は「それぞれが勝手な生活をしている」というニュアンスになります。
\次のページで「「sharpen one’s teeth with a comb」」を解説!/