この記事では「噛んで含める」について解説する。
端的に言えば「噛んで含める」の意味は「十分に理解するように言い聞かせる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「噛んで含める」の意味や例文、類語などを見ていきます。

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仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「噛んで含める」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「噛んで含める」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「噛んで含める」の意味は?

「噛んで含める」には、次のような意味があります。

1 親が、食物をかんで柔らかくして子供の口に含ませてやる。

2 よく理解できるように丁寧に言い聞かせる。

出典:コトバンク

「噛んで含める」は親が堅い物を噛んで柔らかくして子供の口に含ませるように、相手によく理解できるように易しく丁寧に説明したり言い聞かせたりすることを意味する慣用句です。

「噛んで含める」の語源は?

次に「噛んで含める」の語源を確認しておきましょう。それでは「含」の漢字の成り立ちについて説明しましょう。「含」は口と覆いかぶせて塞ぐ意味の音を示す「今」とを合わせた字。口の中に物を入れて塞ぐ、つまり「ふくむ」意味を表します。

\次のページで「「噛んで含める」の使い方・例文」を解説!/

「噛んで含める」の使い方・例文

「噛んで含める」の使い方について例文を挙げて解説していきます。この言葉は、たとえば以下のように用いられますよ。

1.日本人の社長は初老の米国人女性に対してゆっくりと噛んで含めるように日本語を話し、特にあ行とわ行のところは言い方に気を付けて発音した。

2.健太は嚙んで含めるように、外柔内剛と快刀乱麻のことわざの相違点をあなたに説明した。

3.サービス関連グループの会社は書き入れ時に火事にみまわれ、運営者は事の顛末を調査会社に嚙んで含めるように話した。

 

例文1からは聞き取りやすいようゆっくりと話している様子が伝わってきますし、例文2からは学校で習ったばかりの言葉を多くの人に説明したいという思いが読み取れます。また、例文3からは不審火なのか社員の火の不始末なのかをきちんと調べてもらいたいという思いが伺えますよ。

「噛んで含める」の類義語は?違いは?

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「噛んで含める」と似たような意味をもつ言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「みっちり」

「みっちり」は一定期間、緊密に行動を持続する様子を表し、単独で述語にかかる修飾語になります。「間に一定時間の昼休みを取る他、八時間みっちり働かなければならない」「荻原選手は夏の間みっちり走りこんだ」は基本的な用法で、一定期間、同一の有意な行動を持続するという意味、「彼女は十歳のときから芸をみっちり仕込まれた」「高校に入ったらみっちり勉強するんだぞ」は十分に鍛錬するという意味ですよ。

緊密・厳格・完璧・鍛錬の暗示があります。また、「みっちり」は「じっくり」に似ていますが、「じっくり」は時間をかけて十分に行う様子を表し、意志・落ち着き・成熟の暗示がありますよ。

\次のページで「その2「繰り返し」」を解説!/

その2「繰り返し」

「繰り返し」は動詞「繰り返す」の連用形で、「彼は家賃を持ってくれるようくりかえし頼んだ」「環境保護の重要性をくりかえし主張する」などのように動詞にかかる修飾語となって何度も反復して行う様子を表します一連のある行為をまったく同じように複数行うという意味で、回数としては数回がふつう一連の流れのない単発の行為を複数回行う場合にはふつう用いられません

「繰り返し」は「何度も」に似ていますが、「何度も」は回数が多いという意味で、行われる行為の内容については言及しません。したがって「この機械の設計は完成までに繰り返し失敗した」は誤用となり、正しくは「この機械の設計は完成までに何度も失敗した」となります。

その3「何度も」

「何度も」は多数回を強調する様子を表し、「なんども練習したらやっと歌えるようになった」「彼はアブダビになんども行ったことがある」などのように動詞にかかる修飾語として用いられます。結果としての回数が多い様子を表し、全体の傾向や頻度は表しません。また、客観的な表現で特定の感情を暗示しません

その4「何度でも」

「何度でも」は回数が多いことを許容する様子を表し、「できなければなんどでもやり直せ」「小津安次郎の映画ならなんどでも見たいね」などのように述語にかかる修飾語として用いられます。多数回になることを許容するという意味で主体の根気の暗示がありますよ。なお、角度や温度などについてはふつう用いません

その5「何度となく」

「何度となく」は回数が多くなる様子を表し、「彼は同じ失敗をなんどとなく繰り返す」「断られても断られても、坂上はなんどとなく薫にアタックしている」などのように動詞にかかる修飾語として用いられます。結果として多数回になることについて話者のあきれの暗示がこもりますよ。角度や温度などについてはふつう用いません。また、「何度となく」は「何度でも」に似ていますが、「何度でも」は主体の根気の暗示があり、話者のあきれは暗示されません。そのため「できなければ何度となくやり直せ」は誤用となり、正しくは「できなければ何度でもやり直せ」となります

「噛んで含める」の対義語は?

「噛んで含める」と反対の意味に近い言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

「ざっと」

「ざっと」は全体を大まかに扱う様子を表し、「髪をざっとしめらせてからシャンプーをつける」「事件の概略をざっと説明しよう」などのように述語にかかる修飾語として用いられます。細かい部分は無視してともかく全体を通して扱う様子を表し疎略の暗示を伴いますよ。「(難問を解く)どうだい、ざっとこんなもんだよ」の「ざっとこんなもんだよ」は日常会話で慣用的に用いられる表現

賞賛に値する物事をなしとげたとき、話者が自分では粗略にやったつもりがそれでも結果は賞賛に値するだろうと自慢する心理を表し、対象を軽視する暗示もあります。この「ざっと」は「だいたい」や「およそ」などに似ていますが、「だいたい」は主要な大部分という意味、「およそ」は不確定な全体という意味で、全体を通して扱う暗示はありません

\次のページで「「噛んで含める」の英訳は?」を解説!/

「噛んで含める」の英訳は?

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「噛んで含める」の英訳にはどのようなものがあるのでしょうか。英語で「噛んで含める」と言い表す時の例をさっそく見ていきましょう。

「chew and include」

「chew and include」は「噛んで含める」という意味です。「Teach him to chew and include」で「彼に噛んで含めるように教える」と訳すことができますよ。

「噛んで含める」を使いこなそう

この記事では「噛んで含める」の意味・使い方・類語などを説明しました。「噛んで含める」は親が堅い物を噛んで柔らかくして子供の口に含ませるように、相手によく理解できるように易しく丁寧に説明したり言い聞かせたりすることを意味する慣用句だと解説しましたね。ちなみに「噛んで含める」と同意義の表現に「重ねて」が挙げられます。「重ねて」はさらに一度繰り返す様子を表しますよ。それまでの行動をもう一度繰り返して行うという意味で用いられ念を入れる暗示があり、繰り返す回数は一回であることが多いでしょう。また、「重ねて」は「再び」に似ていますが、「再び」が同じ行動や状態をもう一度繰り返すという意味で用法が広いのに対して、「重ねて」は行動しないことや状態については用いられません。

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【慣用句】「噛んで含める」の意味や使い方は?例文や類語をプロダクション編集者がわかりやすく解説!

この記事では「噛んで含める」について解説する。
端的に言えば「噛んで含める」の意味は「十分に理解するように言い聞かせる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
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仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「噛んで含める」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「噛んで含める」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「噛んで含める」の意味は?

「噛んで含める」には、次のような意味があります。

1 親が、食物をかんで柔らかくして子供の口に含ませてやる。

2 よく理解できるように丁寧に言い聞かせる。

出典:コトバンク

「噛んで含める」は親が堅い物を噛んで柔らかくして子供の口に含ませるように、相手によく理解できるように易しく丁寧に説明したり言い聞かせたりすることを意味する慣用句です。

「噛んで含める」の語源は?

次に「噛んで含める」の語源を確認しておきましょう。それでは「含」の漢字の成り立ちについて説明しましょう。「含」は口と覆いかぶせて塞ぐ意味の音を示す「今」とを合わせた字。口の中に物を入れて塞ぐ、つまり「ふくむ」意味を表します。

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