
その2「するり」
「するり」は素早く滑って抜け出る様子を表し、「と」が付いて述語にかかる修飾語になります。「手品師が合図すると縄がするりと解けた」が基本的な用法で、接触している物の一方が滑って抜け出るという意味、「そのすりは客の財布をするりと抜き取った」は滑るように気づかれずに抜き取るという意味、「政治家は質問をするりするりとかわした」は捕まえられそうだが巧みに滑り抜けてかわすという意味ですよ。接触面に隙間があってよく滑る様子を表し、狡猾・意外性の暗示を伴い、滑った結果に視点があります。
「するり」は「つるり」や「ぬるり」に似ていますが、「つるり」は接触面が非常に平滑でしばしば水分や油分で濡れている暗示がありますし、「ぬるり」は接触面に粘液などがあって滑る様子を表し、不快・不気味の暗示があります。そのため「するりと滑る」は「絹のひもが」、「つるりと滑る」は「磨かれた廊下が」、「ぬるりと滑る」は「ウナギが」というニュアンスになりますよ。
その3「瞬く間」
「瞬く間」は所要時間がほとんどかからない様子を表す表現。「彼は山盛りのごちそうをまたたくまに平らげた」は動詞にかかる修飾語、「事故はまたたくまの出来事でした」は名詞にかかる修飾語、「引っ越しだってね。手伝おうか?いいよ、プロに任せればまたたくまだから」は述語の用法です。所要時間のかからなさの程度はとても主観的で一定の基準はありません。また、話者の主観で予想よりも短時間ですむことを誇張して表し、驚きの暗示がこもります。「瞬く間」は「あっという間」に似ていますが、「あっという間」は実際の所要時間だけでなく手間のかからなさ、意外さの暗示があり、驚きの暗示は少ないでしょう。
「右の耳から左の耳」の対義語は?
「右の耳から左の耳」と反対の意味に近い言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。
その1「しつこい」
「しつこい」は執着が強くてなかなかあきらめない様子を表しますよ。「セールスマンはしつこくつきまとった」「彼女の質問はいつもしつこい」「どんな難しい課題にも、塾生たちはしつこく食い下がる」「部長は部下のミスをしつこく追求した」はある行為について執着が強くてあきらめないという意味、「あんたみたいにしつっこい人は嫌いよ」「まだあきらめないなんて、しつこい子だねえ」は人間の性質についてあきらめの悪い性格という意味です。
「しつこい」を使用する際のポイント
「しつこい」は「くどい」に近い意味がありますが、「くどい」に暗示されている不快感は「しつこい」ではそれほど強くなく、執着の濃厚さをやや客観的に表していますよ。したがって、執着の濃厚さが好ましい場合には「くどい」は用いられません。「しつこい」は対象の執着の強さに視点があり、「くどい」にある繰り返しの暗示がない。したがって「質問がしつこい」は「いろいろ質問してあきらめない」、「質問がくどい」は「同じことを何度も聞く」というニュアンスになります。
その2「根強い」
「根強い」は「そのベテラン俳優にはねづよい人気がある」「住民は開発にねづよく反対している」などのように奥深いところが堅固で動かない様子を表します。「根強い」は表面はともかく、奥深いところが動かないというニュアンスをもつ語で、好ましいことにも好ましくないことにも、心理の状態についても行為についても用いられますよ。
行為について用いられた場合には、執着の濃厚さを暗示することになるので、「粘り強い」などと似た意味になりますが、「粘り強い」は逆境や困難に耐える強さを暗示するのに対して、「根強い」は不動・不変の状態を暗示し、逆境や困難の暗示は少ないでしょう。「根強い」が植物の根が強いという文字通りの意味で用いられることは稀です。
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