この記事では「過たず」について解説する。

端的に言えば過たずの意味は「的確に」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

自治体広報紙の編集を8年経験した弘毅を呼んです。一緒に「過たず」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/八嶋弘毅

自治体広報紙の編集に8年携わった。正確な語句や慣用句の使い方が求められるので、正しい日本語の使い方には人一倍敏感。

「過たず」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「過たず」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「過たず」の意味は?

「過たず」には、次のような意味があります。

1.約束や予想にたがわず。・・・のとおり。
2.ねらったとおり正確に。ねらいたがわず。案の定。

出典:古語辞典第十版増補版(旺文社)「過たず」

「過たず」の読み方は「あやまたず」です。最近ではまず使われることのない言葉ではないでしょうか。『竹取物語』や『平家物語』、吉田兼好の随筆『徒然草』など古くから伝わる読み物によく使われた言葉です。これらの読み物は現代でもそれなりに人気があり、古典としてはおすすめですが、「過たず」という言葉自体は現在ではほとんど廃れた言葉だと言えるでしょう。

「過たず」の語源は?

次に「過たず」の語源を確認しておきましょう。「過たず」は間違いや失敗を犯すことがない様子を表す表現で「過つ」の否定形です。「過」の字義には通過するという意味があります。場所だけではなく、時間が過ぎていくことも表しているのです。そうした点から、度を超してしまうことや失敗することも表すようになりました。それが「過たず」と否定形で表記されることにより、正確なという意味になったのです。

過去の古典からいくつか例を挙げてみましょう。「~に違わず」という意味では『今昔物語』で「夢の告げをあやまたず」があり、これは「夢のお告げのとおり」を表しています。「ねらいたがわず」の意味では『平家物語』にある那須与一の章が有名ではないでしょうか。「あやまたず扇の要(かなめ)ぎは一寸ばかりおいて」という一節が見られます。意味は「狙い違わず扇の要の際(きわ)から一寸(約3センチ)くらい離れて」ということです。また「案の定」を意味する言葉としては『徒然草』に「あやまたず足もとへふと寄り来て」があります。意味は「案の定足もとへ素早く寄ってきて」です。

\次のページで「「過たず」の使い方・例文」を解説!/

「過たず」の使い方・例文

「過たず」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、例えば以下のように用いられます。

1.彼は一つ一つの問題について判断を過たず、適切に処理した。
2.全体の方向性を過たず、意図したとおりに仕事は進んでいる。
3.彼女はとても几帳面な性格で、予定時間には過たず目的の場所に到着している。みんなに信頼されるわけだ。

仕事をお願いするにしても、知識が豊富でこちらの希望どおりの内容に過たず仕上げてくれる人はやはり信頼できるものですし、お礼をしたくもなるものです。そうした人は昇進の機会を多いでしょうし、なにかと有利な位置にあります。

あなたももしどこかに弱点があれば、それを克服して悪いところを修正するよう努力してはいかがでしょうか。

「過たず」の類義語は?違いは?

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ここでは「過たず」の類義語を見ていきましょう。

その1「案の定」

「案の定」「予想していたとおり」とか「思ったとおり」「果たして」という意味があり「過たず」の類義語の一つに挙げていいでしょう。「果たして」には「本当に~だろうか」と疑問を表す場合にも使いますが、「予想どおり」という意味でも使われます。多くは「果たして~だろうか」と疑問の形で使うことが多いですが、「果たして僕の願望は見事に叶った」のように、結果が希望どおりになった場合にも使うことができるのです。

いずれにしても結果がどうだったかを表現するときに使われます。むしろ「果たして」よりも「果たせるかな」としたほうが意味を間違いなく伝えることができるでしょう。

\次のページで「その2「的確に」」を解説!/

その2「的確に」

「的確に」とは的を外さない、間違いがないという意味がありますから「過たず」の類義語と言えます。ここで迷うのが「的確」「適確」「適格」の使い分けです。読み方がすべて「てっかく」ですからなおさらでしょう。

「適確」もほとんど同じ意味です。ただ「適確」「適正確実」あるいは「適切確実」を略したものとされており、普通は「的確」を使うほうがいいでしょう。「適確」という言葉が多く使われているのは法律です。「間違いなく正確」であることはもちろん「正しい方法で執行される」ことを要件とするのが法律ですから、誤った解釈を防ぐ意図もあります。

「適格」は役割に合った資格を持っている場合に使う用語です。この場合の資格とは、国家資格など必ずしも試験を受けて取った資格という意味ではありません。その業務を行うに足る資質や条件のことです。

その3「果たせるかな」

「果たせるかな」も予想どおりという意味で「過たず」の類義語の一つに挙げてもいいでしょう。先ほど解説した「的確に」と同じような意味があります。「果たして」でも「過たず」という意味で使われることがありますが、「果たして~だろうか」のように疑問形で使われることが多く、意味を取り違えやすい不具合があることから「果たせるかな」を使ったほうが間違いがなくて、より適切でしょう。

「過たず」の対義語は?

次に「過たず」の対義語を見ていきましょう。

「過つ」

「過たず」の反対語として一つだけ挙げておきましょう。それは「過つ」です。もともと「過たず」は「過つ」の否定形からきています。「過つ」には悪事を働くという意味がありますが、今回解説している言葉にふさわしいものは、「やり損なう」「取り違える」などでしょう。このほか「しくじる」「失敗する」「過たず」の対義語として挙げることができます。

「過たず」の英訳は?

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最後に「過たず」の英訳を見ていきましょう。

その1「accurate」

「accurate」という英単語は「正確な」「精密な」という意味です。その意味で「過たず」の英訳となります。よく似た単語に「正しい」を意味する「correct」がありますが、「accurate」は「correct」よりさらに正確さを強調した単語です。

\次のページで「その2「unerringly」」を解説!/

その2「unerringly」

「unerringly」「的確な」を意味する英語です。「erringly」「誤って」という意味で、それに否定形の「un」を接頭辞につけることで、「過たず」という意味になります。

その3「without making a mistake」

「without making a mistake」を直訳すると「失敗することなく」となり、「過たず」の英訳になります。「without」「それなくして」という意味で、「making a mistake」「間違いを犯す」と続けることで、「間違いを犯すことなく」となり、「過たず」となるのです。

「過たず」を使いこなそう

この記事では「過たず」の意味・使い方・類語などを説明しました。近頃ではまず耳にしない言葉であり、書籍でも掲載されることは珍しい言葉です。日常会話ではほとんど口にはしませんが、文章で使うと格調高い文になるかもしれません。この解説をヒントに、「過たず」を適宜使うようにしてはいかがでしょうか。

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【慣用句】「過たず」の意味や使い方は?例文や類語を元広報紙編集者がわかりやすく解説!

この記事では「過たず」について解説する。

端的に言えば過たずの意味は「的確に」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

自治体広報紙の編集を8年経験した弘毅を呼んです。一緒に「過たず」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/八嶋弘毅

自治体広報紙の編集に8年携わった。正確な語句や慣用句の使い方が求められるので、正しい日本語の使い方には人一倍敏感。

「過たず」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「過たず」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「過たず」の意味は?

「過たず」には、次のような意味があります。

1.約束や予想にたがわず。・・・のとおり。
2.ねらったとおり正確に。ねらいたがわず。案の定。

出典:古語辞典第十版増補版(旺文社)「過たず」

「過たず」の読み方は「あやまたず」です。最近ではまず使われることのない言葉ではないでしょうか。『竹取物語』や『平家物語』、吉田兼好の随筆『徒然草』など古くから伝わる読み物によく使われた言葉です。これらの読み物は現代でもそれなりに人気があり、古典としてはおすすめですが、「過たず」という言葉自体は現在ではほとんど廃れた言葉だと言えるでしょう。

「過たず」の語源は?

次に「過たず」の語源を確認しておきましょう。「過たず」は間違いや失敗を犯すことがない様子を表す表現で「過つ」の否定形です。「過」の字義には通過するという意味があります。場所だけではなく、時間が過ぎていくことも表しているのです。そうした点から、度を超してしまうことや失敗することも表すようになりました。それが「過たず」と否定形で表記されることにより、正確なという意味になったのです。

過去の古典からいくつか例を挙げてみましょう。「~に違わず」という意味では『今昔物語』で「夢の告げをあやまたず」があり、これは「夢のお告げのとおり」を表しています。「ねらいたがわず」の意味では『平家物語』にある那須与一の章が有名ではないでしょうか。「あやまたず扇の要(かなめ)ぎは一寸ばかりおいて」という一節が見られます。意味は「狙い違わず扇の要の際(きわ)から一寸(約3センチ)くらい離れて」ということです。また「案の定」を意味する言葉としては『徒然草』に「あやまたず足もとへふと寄り来て」があります。意味は「案の定足もとへ素早く寄ってきて」です。

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