この記事では「暗夜の礫」について解説する。

端的に言えば暗夜の礫の意味は「防ぎようのない襲撃」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元大手予備校校舎長で国語指導歴が長く、現在は教育系専門ライターのみゆなを呼んです。一緒に「暗夜の礫」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「暗夜の礫」の意味や語源・使い方まとめ

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暗夜の礫」ということわざは聞いたことがありますか。読み方は「あんやのつぶて」です。「礫」は「磔(はりつけ)」と似ていますが、別の漢字ですから注意しましょう。字の雰囲気から、なんとなく良くなさそうな、ネガティブな意味だろうか、という想像がつくかもしれませんね。

今回は「暗夜の礫」を詳しく解説します。正しい意味や使い方をマスターし、ぜひボキャブラリーに加えてくださいね。それでは早速「暗夜の礫」を見ていきましょう。

「暗夜の礫」の意味は?

「暗夜の礫」には、次のような意味があります。

1.不意に加えられる襲撃。防ぎようがなく恐ろしいことのたとえ。
2.あたるかあたらないかおぼつかないこと、あたらないこと、ききめのないこと、めあてのつかないことのたとえ。

出典:精選版 日本国語大辞典「暗夜の礫」

「暗夜の礫」の「礫」とは、投げられた小さな石のことです。一般的には砂より大きく、こぶし大よりは小さいものとされています。「暗夜」は文字通り、暗がりや夜という意味ですね。

さて暗夜に小石を急に投げられたらどうなるでしょう?ただでさえ周囲の様子がわからない状況ですから、小さな小石は避けようがありませんよね。このことから「暗夜の礫」は「不意の襲撃」という意味を表します。転じて「不意をつかれた驚くべき出来事」といった意味でも使われることわざです。

また投げる側からしても、相手がよく見えない暗夜に小石を投げたところで、確実に当てられるかはわかりません。ここから「当たるかどうかわからない、あてずっぽう」という意味も表すようになりました。

「暗夜の礫」の使い方・例文

ことわざは実際の使用例を見てみると、どんな場面で使えるかイメージしやすいですよね。ここからは「暗夜の礫」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「暗夜の礫」の類義語は?違いは?」を解説!/

1.上司に呼ばれ、リストラを通告された。業績は絶好調だと聞いていたのに。まさに「暗夜の礫」だ。
2.契約が欲しいのはわかるけれど、やみくもにテレアポをするなんて「暗夜の礫」だよ。

「暗夜の礫」は意外と日常会話でも使うことができます。例文を参考に、使ってみてくださいね。

例文1は突然のリストラ通告を「暗夜の礫」と表現しています。会社の業績が絶好調なら、リストラに遭うとは思いもしませんよね。そして自分では避ける方法がない事態でもあります。このような「防ぎようのない不意打ち」と言いたい場面で使えるのが「暗夜の礫」です。

例文2では「暗夜の礫」は「あてずっぽう」という意味で使われています。契約のために片っ端から電話を掛けるというテレアポ手法もありますが、実際に契約にこぎつけられるのは果たしてどれくらいでしょう。それよりもターゲットを絞り、丁寧にアプローチした方が成約率は高いかもしれませんね。このように「めあてがなく、闇雲にやる」ことも「暗夜の礫」と表現できます。

「暗夜の礫」の類義語は?違いは?

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続いて「暗夜の礫」と同じ意味を持つことわざをご紹介しましょう。1つのことわざを覚えたら、同じ意味のものをまとめて押さえてしまうことが語彙力アップの秘訣ですよ。

その1「闇夜の鉄砲」

闇夜の鉄砲」は「暗夜の礫」とつくりが似ていることわざですね。「暗夜の礫」の2つ目の意味である「あてずっぽう」を言い表しています。確かに、暗闇で鉄砲を撃っても的確にヒットするとは思えませんよね。

ちなみに「いろはかるた」では「闇に鉄砲」として掲載されています。

その2「寝首を掻く」

寝首を掻く(かく)」は相手の不意をつく側を指すことわざです。「暗夜の礫」で言えば、礫を投げる人のこと。「掻く」とは痒いところを指先でこする動作ですが、この場合は「掻き切る、切りかかる」という意味で使われています。相手が寝ている間に不意をついて首を掻き切る、ということですね。掻かれた側にしてみれば防ぎようがない不意打ち、まさに「暗夜の礫」です。

\次のページで「その3「晴天の霹靂(へきれき)」」を解説!/

その3「晴天の霹靂(へきれき)」

晴天の霹靂」とは「前触れなく突如として起こり、人や世間を震撼させるような事件、事変、大きな衝撃」を表すことわざです。アッと驚くようなことは、不意打ちだからこそ驚きも大きいですよね。しかも防ぎようがありません。「暗夜」と「晴天」という対局にある言葉が似た意味のことわざを作っているというのは、興味深いものですね。

「暗夜の礫」の対義語は?

「暗夜の礫」と対義になる言葉には、どのようなものがあるでしょうか?

「百発百中」

ことわざではなく四字熟語ですが、放ったものすべてが命中するという意味の「百発百中」は対義として成立するでしょう。「暗夜の礫」は当たるかどうかわからず、あてずっぽうに投げていましたからね。1発だけ放ち、それが命中するという意味の「一発必中」という四字熟語もあります。

「暗夜の礫」の英訳は?

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「暗夜の礫」と同じ意味を英語で表現したいときは、どのように言えばよいでしょうか?

その1「a surprise attack」

やや直訳的な印象も受けますが、「a surprise attack」という表現が「暗夜の礫」が持つ不意打ちという意味を表します。「奇襲攻撃、だまし討ち」というニュアンスもありますよ。「surprise」は「驚かす」、「attack」は「攻撃」という意味の英単語です。

We decided to make a surprise attack early in the next morning.
「我々は明朝、敵に不意打ちをくらわせることを決定した」

\次のページで「その2「wide of the mark」」を解説!/

その2「wide of the mark」

「暗夜の礫」が持つ「あてずっぽう」という意味を表現したいときは、「wide of the mark」と言うと良いでしょう。「wide」は遠く離れていること、markは目標や目印を指します。つまり「目標・目印から遠く離れている=当たるわけがない」という意味ですね。同じ意味・用法で「way off the mark」と言うこともできます。

The arrow that he shoot was wide of the mark.
「彼が放った矢は、的から遠く外れていた」

「暗夜の礫」を使いこなそう

この記事では「暗夜の礫」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「暗夜の礫」とは夜、不意に投げられる小石のこと。防ぎようのない襲撃、という意味でしたね。また、あてずっぽうという意味があることもわかりました。一寸先を予想できないのが人生です。不意打ちの連続とも言えます。私たちはいつ「暗夜の礫」に遭遇したとしても、冷静に次の打つ手を考えられる落ち着きを持っていたいものですね。

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【ことわざ】「暗夜の礫」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校校舎長がわかりやすく解説!

この記事では「暗夜の礫」について解説する。

端的に言えば暗夜の礫の意味は「防ぎようのない襲撃」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元大手予備校校舎長で国語指導歴が長く、現在は教育系専門ライターのみゆなを呼んです。一緒に「暗夜の礫」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「暗夜の礫」の意味や語源・使い方まとめ

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暗夜の礫」ということわざは聞いたことがありますか。読み方は「あんやのつぶて」です。「礫」は「磔(はりつけ)」と似ていますが、別の漢字ですから注意しましょう。字の雰囲気から、なんとなく良くなさそうな、ネガティブな意味だろうか、という想像がつくかもしれませんね。

今回は「暗夜の礫」を詳しく解説します。正しい意味や使い方をマスターし、ぜひボキャブラリーに加えてくださいね。それでは早速「暗夜の礫」を見ていきましょう。

「暗夜の礫」の意味は?

「暗夜の礫」には、次のような意味があります。

1.不意に加えられる襲撃。防ぎようがなく恐ろしいことのたとえ。
2.あたるかあたらないかおぼつかないこと、あたらないこと、ききめのないこと、めあてのつかないことのたとえ。

出典:精選版 日本国語大辞典「暗夜の礫」

「暗夜の礫」の「礫」とは、投げられた小さな石のことです。一般的には砂より大きく、こぶし大よりは小さいものとされています。「暗夜」は文字通り、暗がりや夜という意味ですね。

さて暗夜に小石を急に投げられたらどうなるでしょう?ただでさえ周囲の様子がわからない状況ですから、小さな小石は避けようがありませんよね。このことから「暗夜の礫」は「不意の襲撃」という意味を表します。転じて「不意をつかれた驚くべき出来事」といった意味でも使われることわざです。

また投げる側からしても、相手がよく見えない暗夜に小石を投げたところで、確実に当てられるかはわかりません。ここから「当たるかどうかわからない、あてずっぽう」という意味も表すようになりました。

「暗夜の礫」の使い方・例文

ことわざは実際の使用例を見てみると、どんな場面で使えるかイメージしやすいですよね。ここからは「暗夜の礫」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

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