この記事では「異にする」について解説する。

端的に言えば異にするの意味は「ほかとは違う」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

自治体広報紙の編集を8年経験した弘毅を呼んです。一緒に「異にする」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/八嶋弘毅

自治体広報紙の編集に8年携わった。正確な語句や慣用句の使い方が求められるので、正しい日本語の使い方には人一倍敏感。

「異にする」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「異にする」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「異にする」の意味は?

「異にする」には、次のような意味があります。

1.別にする。ちがえる。
2.際立って特別である。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「異にする」

「異にする」の読み方は「ことにする」です。簡単に表現すれば「異なる」とか他人とは立場が違う、普通とは違うことを表現しています。職務では様々な立場や考え方があり、それぞれに物事の進め方一つ取ってもやり方はいろいろです。相手の事情がわかっていても、厳しい意見を言わなければならないこともあります。部下の評判や人気取りばかりしていては、それら職員から軽く見られてしまい、そのうち誰も相手にしてくれない状態になってしまうかもしれません。

「異にする」の語源は?

次に「異にする」の語源を確認しておきましょう。とはいうものの、語源らしい語源はありません。ただ「異」の読み方は、その時の状況によって変わります。普通は「ことにする」ですが「不思議に思う」とか「奇異に感じる」というような場合は、「異(い)とする」と読むのです。よく使われるのは「異とするに足りない」のような利用法でしょう。これは、ことさら驚いたりすることではない、不思議なことではない様子を表す場合に使います。例えば「テスト直前に一夜漬けの勉強をしても点数が悪いのは異とするに足りない」のような使い方です。

\次のページで「「異にする」の使い方・例文」を解説!/

「異にする」の使い方・例文

「異にする」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、例えば以下のように用いられます。

1.僕と彼は同じ書物を読んでも感想を異にするから、どうも考え方が違うようだ。
2.同じ趣旨の文章を書いても、書き手によって表現の仕方を異にするからおもしろい。
3.昭和、平成、令和と時代を異にしてきたが、いつまでたってもこのメールマガジンだけは配信をとめられない貴重な読み物の一つだ。

「異にする」という言い方は、特に法律や条令、規則などでよく使われる言葉です。例えば人事院規則では、官署の異動に当たっての適用基準が附則で事細かく記されています。そのなかでは通勤手当や住居手当、俸給表による号俸別の給料月額などが規定されているのです。その運用方法も在勤地によって別々に決められています。その内容は複雑で、一度読んだだけではなかなか理解できません。それに関連して別の法律や規則を参照しなければなりませんから大変です。

そのほか「異にする」を使うのは、ほかより相当優れた能力を持っていて、その程度が違うような場合にも使われます。例えばある店舗のサービスがほかの店舗より際立って優れていた場合にも、「あの店のサービスは他の店のサービスとは次元を異にする」というように使うことができるでしょう。

「異にする」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

ここでは「異にする」の類義語を見ていきましょう。

その1「食い違う」

「食い違う」とは、組み合わせた部分がうまく合わない、物事や意見などがうまく一致しないことを表しており「異にする」の類義語と言えます。よく「噛み合わない」という表現と同じではないかと考える人もいるようですが、微妙な違いがあるのです。「噛み合わない」歯車になぞらえたもので、ぴったりしないことや論点が互いにずれたまま議論を進めていく様子を表しています。これだけであれば同じ意味にも取れますが、言葉にしてみれば違いがわかるでしょう。

例えば「話がなかなか噛み合わない」とは言いますが「話がなかなか食い違う」とは言いません。また「見積書と食い違う」とは言いますが「見積書と噛み合わない」とは言わないですね。このように文脈によって意味が少し違ってきます。

余談ですが「イスカの嘴(はし)の食い違い」という言葉をご存じでしょう。これはイスカという鳥の嘴(くちばし)が上下で左右食い違いになっていることが由来になった言葉です。

\次のページで「その2「対立する」」を解説!/

その2「対立する」

「対立する」も互いの意見や立場が違うことにより発生する状態ですから「異にする」の類義語と言えます。二つ以上のものが互いに譲らないで張りあう場合に使う言葉です。これは人間だけに限らず、企業や商工業製品にも使えます。

似た意味の言葉に「鼎立(ていりつ)」が挙げられるでしょう。鼎立は対立する勢力が三つある場合に使われます。「鼎立」の「鼎」「かなえ」と読み、もともとは古代中国で使われた三本足の鉄の釜のことです。よく雑誌などの表題に「鼎談」と掲げられた読み物がありますが、三人が向かい合って話し合うことを指します。

その3「三者三様」

「三者三様」も、人間が複数いればそれぞれ異なる態度、考え方を持つ存在であることから「異にする」の類義語の一つに挙げてもいいでしょう。この場合の「三者」は必ずしも三人に限っているわけではありません。比喩的に「三者」と表現していると考えたほうがいいでしょう。似たような意味を持つ言葉に「十人十色」「千差万別」があります。「千差万別」は、より多くのものの違いを表す言葉として使ったほうがいいようです。

「異にする」の対義語は?

次に「異にする」の対義語を見ていきましょう。

その1「同じくする」

「異にする」の対義語はあまり多くありませんが、まず「同じくする」が挙げられます。「同じくする」とは「同じものとして扱う」「共有する」という意味がありますから「異にする」とは反対の意味を持つ言葉です。

「同様に」も似たような意味がありますが、この言葉には「する」という動詞がついていません。したがって「右に同じく」といった程度の意味と考えていいでしょう。

その2「同じゅうする」

「同じゅうする」「異にする」の対義語ですが、この言葉は「同じくする」の音が変化したもので、意味は「同じくする」とまったく同じです。「~が同じである」「~と同列である」という意味があります。一般社会に広まった表現としては「男女七歳にして席を同じゅうせず」がよく知られた言葉です。

「異にする」の英訳は?

image by iStockphoto

最後に「異にする」の英訳を見ていきましょう。

\次のページで「その1「differ」」を解説!/

その1「differ」

「differ」という単語は「異にする」の英訳です。「異なった」を意味する「different」「differ」の派生語だということは、察しがつくと思います。「be different」とすると「differ」とほぼ同じ意味になりますが、どちらかというと「differ」のほうがより堅いニュアンスを持つ言葉だと言えるでしょう。

その2「disagree」

「disagree」「異にする」の英訳ですが、どちらかといえば「意見が対立する」「話が食い違う」という意味合いを持った言葉です。否定を意味する接頭辞の「dis」を取ると「agree」となり「同意する」「意見が一致する」という意味になります。

その3「dissent」

「dissent」「disagree」と同じような意味で「異議」「反対」の英訳です。「dissent  from the policy of the government」とすれば、「政府の方針に異議を唱える」となります。

「異にする」を使いこなそう

この記事では「異にする」の意味・使い方・類語などを説明しました。普段生活をするうえではあまり使わない言葉かもしれませんが、時々職場では聞くことばです。特に官公庁で法令執務に携わっている人には馴染みのある言葉ではないでしょうか。一般生活でも使える言葉ですから、意味を正しく知って使うようにすれば、あなたのボキャブラリーが増えることでしょう。

" /> 【慣用句】「異にする」の意味や使い方は?例文や類語を元広報紙編集者がわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

【慣用句】「異にする」の意味や使い方は?例文や類語を元広報紙編集者がわかりやすく解説!

この記事では「異にする」について解説する。

端的に言えば異にするの意味は「ほかとは違う」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

自治体広報紙の編集を8年経験した弘毅を呼んです。一緒に「異にする」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/八嶋弘毅

自治体広報紙の編集に8年携わった。正確な語句や慣用句の使い方が求められるので、正しい日本語の使い方には人一倍敏感。

「異にする」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「異にする」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「異にする」の意味は?

「異にする」には、次のような意味があります。

1.別にする。ちがえる。
2.際立って特別である。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「異にする」

「異にする」の読み方は「ことにする」です。簡単に表現すれば「異なる」とか他人とは立場が違う、普通とは違うことを表現しています。職務では様々な立場や考え方があり、それぞれに物事の進め方一つ取ってもやり方はいろいろです。相手の事情がわかっていても、厳しい意見を言わなければならないこともあります。部下の評判や人気取りばかりしていては、それら職員から軽く見られてしまい、そのうち誰も相手にしてくれない状態になってしまうかもしれません。

「異にする」の語源は?

次に「異にする」の語源を確認しておきましょう。とはいうものの、語源らしい語源はありません。ただ「異」の読み方は、その時の状況によって変わります。普通は「ことにする」ですが「不思議に思う」とか「奇異に感じる」というような場合は、「異(い)とする」と読むのです。よく使われるのは「異とするに足りない」のような利用法でしょう。これは、ことさら驚いたりすることではない、不思議なことではない様子を表す場合に使います。例えば「テスト直前に一夜漬けの勉強をしても点数が悪いのは異とするに足りない」のような使い方です。

\次のページで「「異にする」の使い方・例文」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: