今回は、植物の「根」に焦点を当ててみていこう。

植物にとって根は、生存のために欠かすことのできない器官です。根にはどんな働き(役割)があるのか、どんなつくりをしているのか…根について改めて学んでいく。中学の理科でも勉強する内容ですが、ぜひ復習してほしい。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

根は何のためにある?

まずは、根(根っこ)は何のために存在するのか…根の”働き”を確認しておきましょう。根にはいくつかの役割がありますが、ここでは代表的なものを3つあげたいと思います。

根の働き1.水や養分の吸収

植物の根にある最大の役割は、地中の水や栄養分を吸収することです。ここでいう栄養分というのは、おもに「無機塩類(無機養分)」をさします。

無機塩類が溶けた水分を根から吸収ことで、植物のからだはそれらの栄養を取り入れているのです。

そうですね。あまり細かく説明しようとすると化学の範囲に入ってしまうので簡単に。

生物の体に必要な無機塩類というのは、カリウム、カルシウム、マグネシウムといった、いわゆる”ミネラル”などのことだと思ってください。私たちは細胞の栄養源として糖を必要としますが、細胞が正常に機能するためにはナトリウムやカリウムといったミネラルが必要ですよね。

image by iStockphoto

また、タンパク質をつくるには窒素という元素が不可欠です。私たちは肉などのタンパク質を食べて窒素を得ていますが、植物は硝酸イオンアンモニアイオンの形で窒素を取り入れます。そのようなイオンも無機塩類に含まれるのです。

根の働き2.からだの固定

根の役割の二つ目は、植物のからだを地面にしっかり固定するということです。

これは当たり前のことのように思えますが、植物にとっては重要なポイント。根が弱く、簡単に倒れてしまうような植物は、生育にも不利だと思いませんか?

\次のページで「根の働き3.養分の貯蔵」を解説!/

それに加えて、光合成をするにも不利なんです。その土地にその植物1個体しか生えていないのなら話は別ですが、周りに別の植物が育っていたらどうでしょう?ほかの植物が茂らせる葉っぱの陰になり、光合成に必要な日光を十分に得られなくなってしまうと考えられます。

背の高い樹木であればなおさらです。

根の働き3.養分の貯蔵

植物の種によっては、根を養分を蓄えるための貯蔵庫のようにして利用しているものがあります。私たちの食卓に上がるものもたくさんあるのですが、思いつきますか?

そのとおり!ダイコン、カブ、ニンジン、ゴボウなどは、養分が蓄えられ、一般的な植物よりも太く肥大した根を野菜として食べています。こういった根は、その特徴から貯蔵根(ちょぞうこん)とよばれるんです。

たっぷりのデンプンを蓄えた根としてさらにわかりやすい例はサツマイモでしょう。甘くほくほくとしたサツマイモは、デンプンをたっぷり含んでいます。

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ちなみに、サツマイモと同じく「芋」という名前のつくジャガイモは、茎に養分が溜まり肥大化したものです。サツマイモとは違い、根ではありませんので注意しましょう。

根のタイプ

植物の根は、その形状によって大きく2種類に分けることができます。主根型根系とひげ根型根系です。

\次のページで「主根型根系」を解説!/

主根型根系

主根型根系というタイプの根は、主根とよばれる太い根と、そこから出る側根という細い根からなります。

この主根型根系の根をもつのは植物の中でも双子葉類に当てはまるものです。

ひげ根型根系

ひげ根型根系は、たくさんの根が茎の下部などから多数生えるタイプの根です。ひげ根型根系にみられるような根は、茎の下部だけでなく、茎の節々からも生じることがあり、不定根とよばれます。ひげ根型根系は不定根が発達して形成されるものなのです。

植物の中では、おもに単子葉類がこのひげ根型根系になっています。

image by Study-Z編集部

ちなみに、ひげ根型根系の根のようにあちこちの茎の節に生える可能性がある根を不定根というのに対し、主根型根系のような根は定根ともよばれます。

根のつくり(横断面)

それでは、根のつくりについてももう少し詳しく見てみましょう。

まずは、植物の根を”金太郎飴”のように、横に切ってみる場合。その内部は大きく3つの層に分けて考えることができます。

一番外側の層は表皮(ひょうひ)です。表皮は細長く変形し、根毛(こんもう)という細い毛のような構造をつくります。根毛をもつことで、根は表面積を増やし、土壌中からの水分の吸収を効率よく行ってるのです。

Monocot Root Acorus (35399384203).jpg
Berkshire Community College Bioscience Image Library - Monocot Root: Acorus, CC0, リンクによる

表皮のさらに内側には皮層(ひそう)があります。柔細胞とよばれる、細胞壁があまり固くなっていない細胞からなり、前述のような養分の貯蔵にも関わっているようです。

根の中心部には中心柱(ちゅうしんちゅう)とよばれる部分があります。ここに道管や師管などの維管束が存在し、茎や葉といった別の器官との物質のやりとりを行っているのです。

\次のページで「根のつくり(縦断面)」を解説!/

根のつくり(縦断面)

それでは、根を縦に切った場合、どのような断面が観察されるのでしょうか。

根の先端部分は根端(こんたん)とよばれます。根端部分は土中へどんどん伸びていきますが、その先端近くには、細胞分裂を盛んに行う組織が存在しているのです。これを根端分裂組織(こんたんぶんれつそしき)といいます。

image by iStockphoto

根端分裂組織は、別の組織に覆われ、むやみに傷つかないよう守られています。これが根冠(こんかん)です。

根冠には、分裂組織を守るという役割以外にも、粘液を出して根を伸ばしやすくする役割や、重力の方向(どちらに根を伸ばすか)を感知する役割もあると考えられています。

いろいろな”根”

この記事では、根の基本的なつくりやはたらきについてご紹介しました。基礎知識はこれでOKですが、世界の植物には”普通の根”から一歩進み、変わった機能や形状をもつようになった根をもっているものもいます。本文中に登場した”貯蔵根”も、そんな根の一つです。

「呼吸根」「板根」「支柱根」…なかには巻きひげのような構造をとるものもあります。皆さんは、変わった根をいくつ知っているでしょうか?興味のある方はぜひ調べてみてください。

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理科環境と生物の反応生物生物の分類・進化細胞・生殖・遺伝

根のつくりと働きを確認しよう!植物の根には2タイプある?現役講師がわかりやすく解説します

今回は、植物の「根」に焦点を当ててみていこう。

植物にとって根は、生存のために欠かすことのできない器官です。根にはどんな働き(役割)があるのか、どんなつくりをしているのか…根について改めて学んでいく。中学の理科でも勉強する内容ですが、ぜひ復習してほしい。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

根は何のためにある?

まずは、根(根っこ)は何のために存在するのか…根の”働き”を確認しておきましょう。根にはいくつかの役割がありますが、ここでは代表的なものを3つあげたいと思います。

根の働き1.水や養分の吸収

植物の根にある最大の役割は、地中の水や栄養分を吸収することです。ここでいう栄養分というのは、おもに「無機塩類(無機養分)」をさします。

無機塩類が溶けた水分を根から吸収ことで、植物のからだはそれらの栄養を取り入れているのです。

そうですね。あまり細かく説明しようとすると化学の範囲に入ってしまうので簡単に。

生物の体に必要な無機塩類というのは、カリウム、カルシウム、マグネシウムといった、いわゆる”ミネラル”などのことだと思ってください。私たちは細胞の栄養源として糖を必要としますが、細胞が正常に機能するためにはナトリウムやカリウムといったミネラルが必要ですよね。

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また、タンパク質をつくるには窒素という元素が不可欠です。私たちは肉などのタンパク質を食べて窒素を得ていますが、植物は硝酸イオンアンモニアイオンの形で窒素を取り入れます。そのようなイオンも無機塩類に含まれるのです。

根の働き2.からだの固定

根の役割の二つ目は、植物のからだを地面にしっかり固定するということです。

これは当たり前のことのように思えますが、植物にとっては重要なポイント。根が弱く、簡単に倒れてしまうような植物は、生育にも不利だと思いませんか?

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