この記事では「血を吐く思い」について解説する。

端的に言えば血を吐く思いの意味は「ひどく辛い思い」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、ロシアで2年間日本語教師として働いた大学院生ライターの「むかいひろき」を呼んです。一緒に「血を吐く思い」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間日本語教師として働いた経験を持つ大学院生。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「血を吐く思い」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「血を吐く思い」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「血を吐く思い」の意味は?

「血を吐く思い」には、次のような意味が国語辞典に掲載されています。

ひどくつらい思い。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「血(ち)を吐(は)く思(おも)い」

血を吐く思い」は、「ひどく辛い思い」という意味の慣用句です。例文でも見ていきますが、「血を吐く思いで」という形で使用されることが多いですね。実際に血を吐くことはまずないですよね。血を吐くときと言えば、重い病気の時です。もちろん、血を吐くことはとても辛いこと。それと同じくらいの辛さだということを表しています。

「血を吐く思い」の語源は?

次に「血を吐く思い」の語源を確認しておきましょう。

「血を吐く思い」の語源はよく分かっていません。文献での使用が初めて確認できるのは、明治時代(1895年)に樋口一葉が書いた『やみよ』の「此やうの情なき願ひに血を吐く思ひの我が心中を汲み給へ」という一節です。

ただ、「血を吐く思い」は口語のため、明治前後より以前から既に使われていたと考えられます。

\次のページで「「血を吐く思い」の使い方・例文」を解説!/

「血を吐く思い」の使い方・例文

「血を吐く思い」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.東京大学に合格するために、毎日血を吐く思いで勉強した僕は、合格発表の紙に自分の番号を見つけ、大粒の涙を流した。
2.血を吐く思いで厳しい練習と重圧に耐え、ついに山田選手はオリンピックで金メダルを獲得した。
3.家族と愛犬を養うために、どんなにブラックな企業であっても、血を吐く思いで仕事をしてきた。
4.試合本番までの1週間は、これまでにないプレッシャーと毎日の練習で、血を吐く思いだった。

例文1では、「毎日たくさんの量を大変な思いをして勉強した」という文脈で「血を吐く思い」が使用されています。東京大学に合格するためには、普通の人は並大抵の努力では合格できません。大変な思い辛い思いを乗り越えての合格ですね。

例文2では、「辛く大変な思いをしながらも厳しい練習と重圧に耐えた」という文脈で「血を吐く思い」が使用されています。オリンピックで金メダルを取るためには、並大抵の練習では足りません。大変な量の努力が必要ですよね。

例文3では、「ブラック企業で、辛く大変な思いをしながらも仕事をしてきた」という文脈で「血を吐く思い」が使用されています。家族のためなら、どんなに嫌な思いをしても、仕事に行きたくないという辛い気持ちになっても、働かなければならない…と責任感の強い人は思ってしまいますよね。

例文4では、「プレッシャーと毎日の練習で辛く大変だった」という文脈で「血を吐く思い」が使用されています。「血を吐く思いで~」という形で使用されることが多いですが、例文4のように文末で使用することも可能です。

「血を吐く思い」の類義語は?違いは?

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「血を吐く思い」の類義語は、「血反吐を吐く思い」「身を削る思い」があります。意味や違いを確認していきましょう。

その1「血反吐を吐く思い」

血反吐を吐く思い」の読み方は「ちへどをはくおもい」です。意味は「非常に辛い思い」ですね。「血を吐く思い」とは意味やニュアンスの違いは一切ありません。

ちなみにこの「血反吐」というのは、「血の混じった吐しゃ物」のことです。病気の時や気持ちが悪い時に吐いてしまうことはありますが、そこに血が混じることはまずないですよね。それだけ辛く困難な思いである…というニュアンスです。

例文を見てみましょう。

\次のページで「その2「身を削る思い」」を解説!/

・コンクールが近づいてきたため、ここ最近は血反吐を吐く思いで必死に練習に取り組んでいる。
・持病の偏頭痛に悩ませられながらも、血反吐を吐く思いで勉強して、司法試験に合格した。

その2「身を削る思い」

身を削る思い」は「大変な思い」「ひどく苦労をする思い」という意味の慣用句です。「ひどく辛い思い」という意味の「血を吐く思い」とは類義語になります。

「身を削る」とは、文字通りに読めば「身体をけずる」という意味です。つまり自身の体の一部をけずるほどの辛さ、大変さを示す言葉ですね。「血を吐く思い」意味やニュアンスの違いは、ほぼありません。

例文を見てみましょう。

・私は獣医師として、経営が苦しい中でも身を削る思いで生き物たちの診療を続けてきたが、もう限界だ。
・コールセンターでのお客様対応は、身を削る思いで取り組まざるを得ない。多くの人が心を病んで辞めていく。

「血を吐く思い」の対義語は?

「血を吐く思い」の対義語は「のほほん」です。意味などを確認していきましょう。

「のほほん」

のほほん」は、「何もしないで、または気を使わないでのんきにしているさま」という意味の単語(副詞)です。気を使わないでのんきにしているさま…「ひどく辛い思い」という意味の「血を吐く思い」とは、反対の意味といえるでしょう。

例文を見てみましょう。

・今の仕事は夜も遅いし激務だし大変だ。定年後は妻と田舎でのほほんと暮らしたいなぁ。
のほほんとしていたら、何年浪人しても東大に合格できないよ!

\次のページで「「血を吐く思い」の英訳は?」を解説!/

「血を吐く思い」の英訳は?

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「血を吐く思い」にピッタリ合う英語表現は実はありません。今回は最も近いものを紹介いたします。

「Desperately」

Desperately」は「必死になって」「絶望的に」「ぜひとも」…等の意味を持った英単語です。「必死になって」という意味の場合、「血を吐く思いで」と近いニュアンスで使用される場合もあります

「血を吐く思いで」と訳せるような例文を見てみましょう。

He desperately tried to write good music.

彼は血を吐く思いで素晴らしい曲を書いた。

「血を吐く思い」を使いこなそう

この記事では「血を吐く思い」の意味・使い方・類語などを説明しました。

血を吐く思い」は、「ひどく辛い思い」という感情を表す慣用句です。「血を吐く思いで~」という形で使用されることが多いですね。

類義語には身体に関連する単語を用いた「血反吐を吐く思い」「身を削る思い」がありますが、意味やニュアンスの違いはありません。

みなさんは、血を吐く思いで何かに取り組んだ経験はありますか?

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国語言葉の意味

【慣用句】「血を吐く思い」の意味や使い方は?例文や類語を日本語教師の大学院生がわかりやすく解説!

この記事では「血を吐く思い」について解説する。

端的に言えば血を吐く思いの意味は「ひどく辛い思い」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、ロシアで2年間日本語教師として働いた大学院生ライターの「むかいひろき」を呼んです。一緒に「血を吐く思い」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間日本語教師として働いた経験を持つ大学院生。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「血を吐く思い」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「血を吐く思い」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「血を吐く思い」の意味は?

「血を吐く思い」には、次のような意味が国語辞典に掲載されています。

ひどくつらい思い。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「血(ち)を吐(は)く思(おも)い」

血を吐く思い」は、「ひどく辛い思い」という意味の慣用句です。例文でも見ていきますが、「血を吐く思いで」という形で使用されることが多いですね。実際に血を吐くことはまずないですよね。血を吐くときと言えば、重い病気の時です。もちろん、血を吐くことはとても辛いこと。それと同じくらいの辛さだということを表しています。

「血を吐く思い」の語源は?

次に「血を吐く思い」の語源を確認しておきましょう。

「血を吐く思い」の語源はよく分かっていません。文献での使用が初めて確認できるのは、明治時代(1895年)に樋口一葉が書いた『やみよ』の「此やうの情なき願ひに血を吐く思ひの我が心中を汲み給へ」という一節です。

ただ、「血を吐く思い」は口語のため、明治前後より以前から既に使われていたと考えられます。

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