この記事では「いい鴨」について解説する。

端的に言えばいい鴨は「利用しやすい相手」という意味ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

情報誌系のライターを10年経験した柊 雅子を呼んです。一緒に「いい鴨」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/柊 雅子

イベントの司会や雑誌の記事作成を仕事としてきたライター、柊 雅子。夫に「あなたのような扱いにくい人は『いい鴨』と言われることはないね」と言われた彼女が「いい鴨」について解説する。

「いい鴨」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「いい鴨」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「いい鴨」の意味は?

「いい鴨」には、次のような意味があります。

1.こちらの思うとおりに利用できる人。特に、勝負事で思うように負かせる人。いい獲物。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「好い鴨」

 

1973年公開なので、かなり古い映画なのですが「スティング」という映画があります。我が家のお気に入りの映画で、展開がわかっているのに何度も観てしまう映画なのですが、タイトルの「スティング」とは「だます」という意味。シブいポール・ニューマンと若いロバート・レトフオードが魅力的な映画で、偽の競馬賭博の話を持ち掛け大金を巻き上げようというストーリーなのですが、この映画のキャッチコピーが「いっちょ カモろうぜ!」。

「カモ」とは「鴨」のことで、意味はこちらの思うとおりに利用できる人。特に、勝負事で思うように負かせる人」。なので「いっちょ カモろうぜ」「さあ、引っ掛けて(あいつから金を)巻き上げてやろうぜ」という意味合いになります。

日本では江戸時代、鴨肉を添えた蕎麦「鴨南蛮」が庶民の間で広く食されるようになりました。鴨肉はそれ以前から食材として利用されていたという記録もあり、私たちと関わりが深いということがわかりますね。

「いい鴨」の語源は?

次に「いい鴨」の語源を確認しておきましょう。

鴨は秋~冬に渡ってくる渡り鳥。その鴨を捕獲するための伝統的な猟が今日に伝えられています。種子島南種子町には「鴨突き網猟」、石川県加賀市には「坂網猟」、どちらも江戸時代から伝わる猟です。この二つの猟は共に長い木を組み合させたものに網を渡して作ったシンプルな作りの道具で鴨を捕まえます。

その習性を上手く利用することにより、はシンプルな道具で比較的簡単に捕まえることができることから「引っ掛かり易い」を象徴するようになり、「いい鴨」という表現がうまれました。

\次のページで「「いい鴨」の使い方・例文」を解説!/

「いい鴨」の使い方・例文

「いい鴨」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.「あれが欲しい」「これ、買って」と彼女にねだられ、貢ぐだけ貢いだ後でふられてしまった友人は「いい鴨にされたってことだな」と自嘲気味に笑った。

2.孫の晃にコンビニでお菓子をねだられた夫は「じぃじは晃のいい鴨だもんね」と言いながら、嬉しそうにレジでお金を払った。

3.部屋に入ってきた男を見て、彼は碁石を持ちながら「いい鴨が来た」と言った。

例文1:この文章での「いい鴨にされた」「相手の思うように利用された」という意味。「彼女におねだりされるままに沢山プレゼントをしたが、結局ふられてしまった」ということですね。

例文2:この文章は「孫の晃にお菓子をねだられた夫は『自分は晃の思い通りになる人間だ』と言いながら、嬉しそうにレジで支払いをした」、つまり「じぃじは孫の言うことを何でも嬉しそうにきく」ということを表した文章ですね。私の父は厳しい人でしたが、孫には「ダメだ」という言葉を決して使わない人。私の息子が小さい頃、いけないことをすると父は「ダメ」とは言わずに「ばぁばが怒るからやめよう」と言ったので、母は「いつも私が悪者よ」と呆れていたものです。

例文3:この「いい鴨」「勝負事で思うように負かせる人」という意味。我が家の次男は近所のおじいさんに連れられて、小さい頃から囲碁クラブに通っていました。そこにいつも「鴨が来たぞ」と言われるおじいさんがいたそうで、彼は「カモ」の意味を知るまでそのおじいさんのことを「賀茂さん」だと思っていたそうです。

「いい鴨」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

それでは「いい鴨」の類義語をみていきましょう。

「食い物」

「食い物」とは「他人利益のために利用されるもの」という意味。「組織に食い物にされた」は「組織に利用された」という意味ですね。

「いい鴨にされる」も「利用される」という意味ですが、この言葉にはどこかユーモアを感じさせるところがあります。勝負に負けて「またいい鴨にされてしまったよ」という様に用いられるのがその例ですね。しかし「食い物にされる」にはユーモアは感じられません。「食い物にされる」はその過程や結果において、「いい鴨」よりも酷い状態であることを表しています。

\次のページで「「いい鴨」の対義語は?」を解説!/

「いい鴨」の対義語は?

続いて対義語です。

 

「利口」

「利口」とは「頭が良くて、賢いこと」「抜け目がないこと」

頭が良くて、賢けれは誰かに利用されることはなく、抜け目がなければ勝負事で相手の思う通りに負かされることもないでしょう。「いい鴨」「お人好し」という意味合いを含むのに対し「利口」「ずる賢い」という意味合いを含みます。

「いい鴨」の英訳は?

image by iStockphoto

「いい鴨」を英語で表現すると、どのようになるのでしょうか。

英文1.Buying at the seller's asking price in the antique market means that you are  made an easy target.

骨董市で売り手の言い値で購入することは、いい鴨にされるということだ。

英文2.  When he drinks,he is made a sucker.  

彼はお酒を吞むと、いい鴨になってしまう

英文1「you are  made an easy target」「いい鴨にされる」という意味。「easy target」「格好の的」という意味で「make an easy terget」「いい鴨になる」と訳されます。この表現が受動態になると「いい鴨にされる」となりますね。

英文2は直訳すると「彼はお酒を吞むと、だまされやすい人になってしまう」。「be made a sucker」「だまされやすい人になってしまう」、言い換えれば「いい鴨になってしまう」ということですね。

\次のページで「「いい鴨」を使いこなそう」を解説!/

「いい鴨」を使いこなそう

この記事では「いい鴨」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「いい鴨」は「こちらの思うとおりに利用できる人。特に、勝負事で思うように負かせる人。いい獲物」という意味で、類義語は「食い物」、対義語は「利口」、英語では「make an easy terget」等と表現されることがわかりましたね。

「鴨」と言えば「鴨が葱を背負って来る」ということわざを連想しますね。「鴨の水搔き」「隣りの貧乏鴨の味」等、「鴨」という言葉を含む慣用句やことわざは他にもあるので、調べてみてください。

" /> 「いい鴨」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

「いい鴨」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「いい鴨」について解説する。

端的に言えばいい鴨は「利用しやすい相手」という意味ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

情報誌系のライターを10年経験した柊 雅子を呼んです。一緒に「いい鴨」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/柊 雅子

イベントの司会や雑誌の記事作成を仕事としてきたライター、柊 雅子。夫に「あなたのような扱いにくい人は『いい鴨』と言われることはないね」と言われた彼女が「いい鴨」について解説する。

「いい鴨」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「いい鴨」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「いい鴨」の意味は?

「いい鴨」には、次のような意味があります。

1.こちらの思うとおりに利用できる人。特に、勝負事で思うように負かせる人。いい獲物。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「好い鴨」

 

1973年公開なので、かなり古い映画なのですが「スティング」という映画があります。我が家のお気に入りの映画で、展開がわかっているのに何度も観てしまう映画なのですが、タイトルの「スティング」とは「だます」という意味。シブいポール・ニューマンと若いロバート・レトフオードが魅力的な映画で、偽の競馬賭博の話を持ち掛け大金を巻き上げようというストーリーなのですが、この映画のキャッチコピーが「いっちょ カモろうぜ!」。

「カモ」とは「鴨」のことで、意味はこちらの思うとおりに利用できる人。特に、勝負事で思うように負かせる人」。なので「いっちょ カモろうぜ」「さあ、引っ掛けて(あいつから金を)巻き上げてやろうぜ」という意味合いになります。

日本では江戸時代、鴨肉を添えた蕎麦「鴨南蛮」が庶民の間で広く食されるようになりました。鴨肉はそれ以前から食材として利用されていたという記録もあり、私たちと関わりが深いということがわかりますね。

「いい鴨」の語源は?

次に「いい鴨」の語源を確認しておきましょう。

鴨は秋~冬に渡ってくる渡り鳥。その鴨を捕獲するための伝統的な猟が今日に伝えられています。種子島南種子町には「鴨突き網猟」、石川県加賀市には「坂網猟」、どちらも江戸時代から伝わる猟です。この二つの猟は共に長い木を組み合させたものに網を渡して作ったシンプルな作りの道具で鴨を捕まえます。

その習性を上手く利用することにより、はシンプルな道具で比較的簡単に捕まえることができることから「引っ掛かり易い」を象徴するようになり、「いい鴨」という表現がうまれました。

\次のページで「「いい鴨」の使い方・例文」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: