この記事では「遠きに行くは必ず邇きよりす」について解説する。

端的に言えば遠きに行くは必ず邇きよりすの意味は「物事を成すには、一つずつ順を追って進まなければならない」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

大学で日本語学・日本文学を学んだぽん太を呼んです。一緒に「遠きに行くは必ず邇きよりす」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ぽん太

早稲田大学文学部で日本語学と日本文学を学び、中高国語科の教員免許も取得している。これまで学んだ知識を生かして、難解な言葉をわかりやすく解説していく。

「遠きに行くは必ず邇きよりす」の意味や語源・使い方まとめ

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「遠きに行くは必ず邇きよりす」は、大人気バレーボール漫画「ハイキュー!」で使用されたことで一躍有名になりましたね。そんな素敵なことわざ「遠きに行くは必ず邇きよりす」の意味や語源・使い方を一緒に見ていきましょう。

「遠きに行くは必ず邇きよりす」の意味は?

「遠きに行くは必ず邇きよりす」は「とおきにいくはかならずちかきよりす」と読みます。まず、「遠きに行くは必ず邇きよりす」の意味を国語辞典で調べてみましょう。

物事を行うには、順序を追って手近な事からやっていくべきである。一足とびには物事はできないことのたとえ。

出典:コトバンク - デジタル大辞泉(小学館)「遠きに行くは必ず邇きよりす」

「遠きに行くは必ず邇きよりす」は、直訳すると「遠くの場所へ行くには、必ず近くの場所から行わなければならない」という意味になるでしょう。近い場所とは、今の自分にできることを行う段階を指し、遠い場所とは、高い目標や成し遂げたい大きな夢などを指すと考えられます。

つまり、「高い目標を達成したいならば、必ず今の自分にできることから着実に行わなければならない」という意味であることがわかりますね。

一つ一つ順を追って進まなければならないという意味は同時に、一足とびに物事はできないという意味にも取ることができます。

「遠きに行くは必ず邇きよりす」の語源は?

次に「遠きに行くは必ず邇きよりす」の語源を確認しておきましょう。

このことわざは中国、前漢時代の経書「礼記(らいき)」の一編である「中庸」が語源となっています。礼記は、儒教教典の「儀礼」の注釈および政治・学術・習俗など礼制に関する説をまとめたものであり、中庸はその中の中国・戦国時代の思想をまとめた書籍のことです。

\次のページで「「遠きに行くは必ず邇きよりす」の使い方・例文」を解説!/

「遠きに行くは必ず邇きよりす」の使い方・例文

「遠きに行くは必ず邇きよりす」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

「世界で活躍する選手になりたいからって、いきなり海外に行くのは得策じゃないな。『遠きに行くは必ず邇きよりす』だよ。まずは日本でトップレベルの選手にならなくちゃ。」

この例文の意味を解説していきましょう。

世界に通用する選手になりたいと思っている相手が、日本での実績を持たずに海外へ挑戦しようとしている状況だと思ってください。そんな相手に対し、話し手が「遠きに行くは必ず邇きよりす」を用いて、世界で活躍する選手になるためにはまず日本でトップレベルの選手にならなければいけないと諭す様子を表しています。

相手は日本で十分に結果を残していない、つまり「邇き」をおろそかにしている状態ですね。そこでこのことわざを交えて伝えることで、世界に行くにはまず日本の中でトップレベルにならなければいけないという言葉により説得力を持たせることができます。

「遠きに行くは必ず邇きよりす」の類義語は?違いは?

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次に「遠きに行くは必ず邇きよりす」の類義語を紹介します。検索してみると、これに似たような意味を持つことわざが多くヒットしました。こうしたことからも、昔から一つずつ着実に物事を行うことが重要だとされてきたのがわかりますね。今回はその中から3つ紹介していきます。

その1「千里の道も一歩から」

これは有名なことわざですね。

遠い旅路も第一歩から始まる、どんな大事業もまずは手近なところから始まるという意味で用いられます。「遠きに行くは必ず邇きよりす」の「遠き」を「千里」、「邇き」を「一歩」と具体化してわかりやすくしたことわざと言えるでしょう。

\次のページで「その2「高きに登るは卑きよりす」」を解説!/

その2「高きに登るは卑きよりす」

「たかきにのぼるはひくきよりす」と読みます。はしごを登るように、低いところ、つまり土台となるところから順を追って進めていくべきだという意味のことわざです。

言葉の使い方や並びから考えても、「遠きに行くは必ず邇きよりす」と同列で語られ、物事は順を追って進める必要があるということを伝えたことわざだと考えられます。

その3「沙弥から長老にはなれぬ」

「しゃみからちょうろうにはなれぬ」と読みます。沙弥とは、仏門に入ったばかりの修行が未熟な僧のことです。そして長老とは、知識・経験が豊かで優れている指導的立場にある人のことを言います。

つまり、修行し始めの未熟な僧から経験豊富な優れたリーダーにはなれないという意味のことわざですね。これも物事には順序があることの例えとして用いられています。

「遠きに行くは必ず邇きよりす」の対義語は?

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「遠きに行くは必ず邇きよりす」はことわざなので対義語はありませんが、反対の意味のことわざを見つけたので紹介しましょう。

「近きを捨てて遠きを謀る」

「近きを捨てて遠きを謀る」は、「ちかきをすててとおきをはかる」と読みます。これは、大切な目の前の仕事を忘れて遠い先の計画をたてるのに熱中するという意味です。しばしば、実際的なことを考えずに順序を誤ることの戒めとして用いられます。

「近きを捨てて遠きを謀る」は「釈近謀遠」という四字熟語が語源で、その出典は中国の兵法書「三略」です。こうしたことから、戦いにおいてもこの言葉が重要とされていたことがわかりますね。

「遠きに行くは必ず邇きよりす」を使いこなそう

この記事では「遠きに行くは必ず邇きよりす」の意味・使い方・類語などを説明しました。「遠きに行くは必ず邇きよりす」は何か物事を成す上でとても重要な考え方です。意味や使い方を覚えて、今日からこの行動を心がけてみましょう。誰かのサポートや支援をしているという人は、相手を応援する言葉として使うのもオススメですよ。

「遠きに行くは必ず邇きよりす」を大切にして一つ一つ丁寧に物事を追求していければ、その過程が身を結び、あなたの未来をきっと明るいものにしてくれるはずです。

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国語言葉の意味

【ことわざ】「遠きに行くは必ず邇きよりす」の意味や使い方は?例文や類語を早稲田文学部卒Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「遠きに行くは必ず邇きよりす」について解説する。

端的に言えば遠きに行くは必ず邇きよりすの意味は「物事を成すには、一つずつ順を追って進まなければならない」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

大学で日本語学・日本文学を学んだぽん太を呼んです。一緒に「遠きに行くは必ず邇きよりす」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ぽん太

早稲田大学文学部で日本語学と日本文学を学び、中高国語科の教員免許も取得している。これまで学んだ知識を生かして、難解な言葉をわかりやすく解説していく。

「遠きに行くは必ず邇きよりす」の意味や語源・使い方まとめ

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「遠きに行くは必ず邇きよりす」は、大人気バレーボール漫画「ハイキュー!」で使用されたことで一躍有名になりましたね。そんな素敵なことわざ「遠きに行くは必ず邇きよりす」の意味や語源・使い方を一緒に見ていきましょう。

「遠きに行くは必ず邇きよりす」の意味は?

「遠きに行くは必ず邇きよりす」は「とおきにいくはかならずちかきよりす」と読みます。まず、「遠きに行くは必ず邇きよりす」の意味を国語辞典で調べてみましょう。

物事を行うには、順序を追って手近な事からやっていくべきである。一足とびには物事はできないことのたとえ。

出典:コトバンク – デジタル大辞泉(小学館)「遠きに行くは必ず邇きよりす」

「遠きに行くは必ず邇きよりす」は、直訳すると「遠くの場所へ行くには、必ず近くの場所から行わなければならない」という意味になるでしょう。近い場所とは、今の自分にできることを行う段階を指し、遠い場所とは、高い目標や成し遂げたい大きな夢などを指すと考えられます。

つまり、「高い目標を達成したいならば、必ず今の自分にできることから着実に行わなければならない」という意味であることがわかりますね。

一つ一つ順を追って進まなければならないという意味は同時に、一足とびに物事はできないという意味にも取ることができます。

「遠きに行くは必ず邇きよりす」の語源は?

次に「遠きに行くは必ず邇きよりす」の語源を確認しておきましょう。

このことわざは中国、前漢時代の経書「礼記(らいき)」の一編である「中庸」が語源となっています。礼記は、儒教教典の「儀礼」の注釈および政治・学術・習俗など礼制に関する説をまとめたものであり、中庸はその中の中国・戦国時代の思想をまとめた書籍のことです。

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