この記事では「一頭地を抜く」について解説する。

端的に言えば一頭地を抜くの意味は「他の人よりひときわすぐれている」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

塾講師を経験したナギセを呼んです。一緒に「一頭地を抜く」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ナギセ

塾講師経験のあるライター。もちろん国語も教えた経験あり。国語好きを生かし、楽しく解説する。

「一頭地を抜く」の意味や語源・使い方まとめ

image by PIXTA / 78933866

それでは早速「一頭地(いっとうち)を抜く」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「一頭地を抜く」の意味は?

「一頭地を抜く」には、次のような意味があります。

他の人よりひときわすぐれている。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「一頭地を抜く」

「一頭地」というのはあたま一つ分の高さのことです。「一頭地を出だす」や「一頭地を抜きんず」とも言います。頭一つ分抜きんでている、ということですね。また、漢字に気をつけなければならず、「一等地を抜く」と書くのは誤りなので注意しましょう。

「一頭地を抜く」の語源は?

次に「一頭地を抜く」の語源を確認しておきましょう。

故事から来ている慣用句で、出典は『宋史』蘇軾伝です。これに「吾当に此の人一頭地を出すを避くべし」とあります。北宋王朝時代の文人、欧陽脩が五〇歳くらいの時に、若手の文人、蘇軾の文章を読んだそうです。そして「自分のような年寄りは、道を譲り、この人があたま一つ分抜きんでるようにしなければならない」とほめたたえました。これが、この「一頭地を抜く」の由来になったのです。

「一頭地を抜く」の使い方・例文

「一頭地を抜く」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.あの子役の存在感は同じ年頃の子役の中で一頭地を抜く。

2.この詩人の才能は国内でも一頭地を抜いていた。

例文は主語にあたる人物が、ほかの人間よりずば抜けてすぐれているということです。

有名な一文としては、森村誠一『エネミイ』(2000)の「四人の若頭補佐中、津田の勢力が一頭地を抜いている。」や、内田康夫の『三州吉良殺人事件』(1991)での「一頭地を抜く存在として期待された」などという文章があります。実際に読んでみて確かめてみてもいいかもしれませんね。

「一頭地を抜く」の類義語は?違いは?

image by PIXTA / 65202789

さて、「一頭地を抜く」の類義語にはどんなものがあるのでしょうか?

「群を抜く」

この言葉は聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?「群を抜く」は、多くの中で、飛びぬけてすぐれていること、また抜群であることを指します。群、つまり群れの中で抜きんでているということです。「一頭地を抜く」と違って、具体的にどのくらい他よりすぐれているのかという部分は単語の中に表されていません。しかし、「一頭地を抜く」と同じように他より目立ってすぐれているようすを表します。では例文も見てみましょう。

1.彼女は、クラスでも群を抜くスピードの脚力を持っている。

2.どれもいいがやはり彼の作品が群を抜いている。

1の例文は、主語である彼女がクラスの中の誰よりも足が速いことを表しています。ただ、それのみにあらず、他と比べても圧倒的に差をつけていることがこの言葉によってわかるのです。

「一歩先をいく」

他の者より、有利な状態にあることを指す言葉となります。ただ、この言葉は「一歩」とある通り、他者との差はわずかなものです。「一頭地を抜く」や「群を抜く」ほどの差はありません。気をつけて使いましょう。

1.日本より一歩先をいく国々に必死に食らいついていく。

2.得意な分野でみんなより一歩先をいく。

この言葉を使うことで、順位をつけることができますが、差はわずかです。相手に配慮しながら使いましょう。

「一頭地を抜く」の対義語は?

今度は「一頭地を抜く」の対義語を見てみましょう。どんなものがあるのでしょうか?

「愚の骨頂」

この上なく愚かなことを指す言葉です。骨頂とは、程度がこれ以上ないことを表しているので、他と比べてかなり劣っているということがわかります。愚かな、という具体的にどんな状態かわかる意味が含まれている点が「一頭地を抜く」との違いですね。

1.あんなことをするなんて、まさに愚の骨頂だ。

2.お客様からのお問い合わせにあんなあやふやな答え方をするなんて愚の骨頂だ。

何かあきらかな失態を犯したことがわかる文章ですね。愚かさがはっきりとわかっている印象を受けるのがこの言葉の特徴です。

「人並」

世間一般の人と同じ程度であることを指す言葉です。世間並みともいいます。先程はずば抜けて悪いというような意味での対義語でした。こちらは、ずば抜けて良い悪いではなく、周りと同じくらいという意味での対義語です。一口に対義語といっても意味の上では複数対義語が出来上がることもあります。また、漢字は「人波」ではないので注意が必要ですよ!

1.外国でも人並の暮らしができるように努力する。

2.彼の人気は人並外れている。

海外で周りと同じような生活をしていくのは大変ですよね。「人並」は「人並すぐれる」や「人並外れる」という言い方もします。これは「人並」から程度が離れていることを表すので、一般的には「人並」とは対義する形になりますよ。上手く使っていきましょう!

\次のページで「「一頭地を抜く」の英訳は?」を解説!/

「一頭地を抜く」の英訳は?

image by iStockphoto

「一頭地を抜く」この言葉は英語では何というのでしょうか?

「be by far the best」

by farは、はるかに、断然、という意味があります。そこに最良や最上を表すbestがくるので、断然最良である=一頭地を抜く、となるのです。by farがかなり決め手ですね!

He is by far the best partner with her.

(訳:彼は彼女のパートナーとして一頭地を抜く。)

「outshine others」

outshineは~より輝く、~より優秀であるという意味を持ちます。これに、他のものという意味のothersがくっつくことで、他のものより優秀である=一頭地を抜くという形になるのです。ただ、先程のbe by far the bestと違い、ずば抜けている、飛びぬけている、というほどの差はないので、使う際は気をつけて使い分けましょう!

Her faction's strength outshine others in our company.

(訳:私たちの会社では、彼女の派閥の勢いが一頭地を抜いている。)

「一頭地を抜く」を使いこなそう

この記事では「一頭地を抜く」の意味・使い方・類語などを説明しました。〇〇は△△の中で一頭地を抜く、というような使い方が一般的なので真似して使ってみてください。自分で実際に使ってみることでより理解が深まり、自分の言葉になっていきますよ!

" /> 【慣用句】「一頭地を抜く」の意味や使い方は?例文や類語を元塾講師がわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

【慣用句】「一頭地を抜く」の意味や使い方は?例文や類語を元塾講師がわかりやすく解説!

この記事では「一頭地を抜く」について解説する。

端的に言えば一頭地を抜くの意味は「他の人よりひときわすぐれている」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

塾講師を経験したナギセを呼んです。一緒に「一頭地を抜く」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ナギセ

塾講師経験のあるライター。もちろん国語も教えた経験あり。国語好きを生かし、楽しく解説する。

「一頭地を抜く」の意味や語源・使い方まとめ

image by PIXTA / 78933866

それでは早速「一頭地(いっとうち)を抜く」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「一頭地を抜く」の意味は?

「一頭地を抜く」には、次のような意味があります。

他の人よりひときわすぐれている。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「一頭地を抜く」

「一頭地」というのはあたま一つ分の高さのことです。「一頭地を出だす」や「一頭地を抜きんず」とも言います。頭一つ分抜きんでている、ということですね。また、漢字に気をつけなければならず、「一等地を抜く」と書くのは誤りなので注意しましょう。

「一頭地を抜く」の語源は?

次に「一頭地を抜く」の語源を確認しておきましょう。

故事から来ている慣用句で、出典は『宋史』蘇軾伝です。これに「吾当に此の人一頭地を出すを避くべし」とあります。北宋王朝時代の文人、欧陽脩が五〇歳くらいの時に、若手の文人、蘇軾の文章を読んだそうです。そして「自分のような年寄りは、道を譲り、この人があたま一つ分抜きんでるようにしなければならない」とほめたたえました。これが、この「一頭地を抜く」の由来になったのです。

「一頭地を抜く」の使い方・例文

「一頭地を抜く」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.あの子役の存在感は同じ年頃の子役の中で一頭地を抜く。

2.この詩人の才能は国内でも一頭地を抜いていた。

例文は主語にあたる人物が、ほかの人間よりずば抜けてすぐれているということです。

有名な一文としては、森村誠一『エネミイ』(2000)の「四人の若頭補佐中、津田の勢力が一頭地を抜いている。」や、内田康夫の『三州吉良殺人事件』(1991)での「一頭地を抜く存在として期待された」などという文章があります。実際に読んでみて確かめてみてもいいかもしれませんね。

「一頭地を抜く」の類義語は?違いは?

image by PIXTA / 65202789

さて、「一頭地を抜く」の類義語にはどんなものがあるのでしょうか?

「群を抜く」

この言葉は聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?「群を抜く」は、多くの中で、飛びぬけてすぐれていること、また抜群であることを指します。群、つまり群れの中で抜きんでているということです。「一頭地を抜く」と違って、具体的にどのくらい他よりすぐれているのかという部分は単語の中に表されていません。しかし、「一頭地を抜く」と同じように他より目立ってすぐれているようすを表します。では例文も見てみましょう。

1.彼女は、クラスでも群を抜くスピードの脚力を持っている。

2.どれもいいがやはり彼の作品が群を抜いている。

1の例文は、主語である彼女がクラスの中の誰よりも足が速いことを表しています。ただ、それのみにあらず、他と比べても圧倒的に差をつけていることがこの言葉によってわかるのです。

「一歩先をいく」

他の者より、有利な状態にあることを指す言葉となります。ただ、この言葉は「一歩」とある通り、他者との差はわずかなものです。「一頭地を抜く」や「群を抜く」ほどの差はありません。気をつけて使いましょう。

1.日本より一歩先をいく国々に必死に食らいついていく。

2.得意な分野でみんなより一歩先をいく。

この言葉を使うことで、順位をつけることができますが、差はわずかです。相手に配慮しながら使いましょう。

「一頭地を抜く」の対義語は?

今度は「一頭地を抜く」の対義語を見てみましょう。どんなものがあるのでしょうか?

「愚の骨頂」

この上なく愚かなことを指す言葉です。骨頂とは、程度がこれ以上ないことを表しているので、他と比べてかなり劣っているということがわかります。愚かな、という具体的にどんな状態かわかる意味が含まれている点が「一頭地を抜く」との違いですね。

1.あんなことをするなんて、まさに愚の骨頂だ。

2.お客様からのお問い合わせにあんなあやふやな答え方をするなんて愚の骨頂だ。

何かあきらかな失態を犯したことがわかる文章ですね。愚かさがはっきりとわかっている印象を受けるのがこの言葉の特徴です。

「人並」

世間一般の人と同じ程度であることを指す言葉です。世間並みともいいます。先程はずば抜けて悪いというような意味での対義語でした。こちらは、ずば抜けて良い悪いではなく、周りと同じくらいという意味での対義語です。一口に対義語といっても意味の上では複数対義語が出来上がることもあります。また、漢字は「人波」ではないので注意が必要ですよ!

1.外国でも人並の暮らしができるように努力する。

2.彼の人気は人並外れている。

海外で周りと同じような生活をしていくのは大変ですよね。「人並」は「人並すぐれる」や「人並外れる」という言い方もします。これは「人並」から程度が離れていることを表すので、一般的には「人並」とは対義する形になりますよ。上手く使っていきましょう!

\次のページで「「一頭地を抜く」の英訳は?」を解説!/

次のページを読む
1 2
Share: