この記事では「勝手知ったる」について解説する。

端的に言えば勝手知ったるの意味は「心得がある」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

多くの学術書を読み、豊富な知識をもつハヤカワを呼んです。一緒に「勝手知ったる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ハヤカワ

学術書を中心に毎年100冊以上の本を読む、無類の本好き。人にさまざまな影響を与える言語、それ自体に強い興味をもち、言葉の細やかな表現にも並々ならないこだわりをもっている。

「勝手知ったる」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「勝手知ったる」の意味や語源・使い方をご紹介していきます。「勝手知ったる」は慣用句であるという点も抑えておきましょう。

「勝手知ったる」の意味は?

「勝手知ったる」というキーワードをネット上の辞典・辞書「コトバンク」で検索してみると、次のような記載があります。

1.ある場所などの様子、物事のやり方の具合などを心得る。内情に通じる。
※洒落本・百安楚飛(1779)「片田舎より、へんくつな和尚のつゐて来れた開帳仏、江戸の勝手(カッテ)をしらず」

出典:精選版 日本国語大辞典「勝手を知る」

「勝手知ったる」は「勝手を知る」の口語体で、特定の場所の事情、または物事のやり方をよく知っているという意味になります。すでに何度も経験したことがあるため、ある場所・ある物事の事情をよく心得ている。「勝手知ったる」はこうした意味合いを表現する言葉です。

また、勝手知ったるは「勝手知ったる他人の家」という言い回しでよく使われており、こちらは他人の家をまるで自分の家かのように我が物顔で振る舞うという意味になります。こちらもあわせて覚えておきましょう。

「勝手知ったる」の語源は?

次に「勝手知ったる」の語源を確認しておきましょう。勝手知ったるは、「勝手」と「知ったる」の二つの単語を組み合わせて生まれています。「勝手」はわがまま・都合が良いこと・便利なこと・台所・生計など、非常に多彩な意味で使われている単語です。

そうした「勝手」の多彩な意味のひとつに、都合・事情という意味があり、「勝手知ったる」では、こちらの意味で使われています。「勝手知ったる」は勝手を知っている。つまり都合や事情についてよく知っているという意味で、古くから使われている慣用句となっています。

\次のページで「「勝手知ったる」の使い方・例文」を解説!/

「勝手知ったる」の使い方・例文

「勝手知ったる」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.前職でも似た仕事に携わっていた彼は、勝手知ったる様子で成果を上げていった。
2.しばらく道に迷っていたが、角を曲がると勝手知ったるいつもの道に出た。
3.居候の身の彼は、勝手知ったる他人の家といった様子でふてぶてしく振る舞った。

「勝手知ったる」は例文のように、特定の事柄や場所についてよく知っている、慣れているといった意味で使われています。「勝手知ったる他人の家」というフレーズに関しては、普段と意味が違い、他人の家を我が物顔で振る舞うという意味となるため、この点には注意が必要です。

「勝手知ったる」は「勝手を知る」の口語表現ですが、すこし古めかしく、実際の発言としてはあまり使われていない印象があります。現代では小説や新聞など、文章のなかで時折使われている単語です。

「勝手知ったる」の類義語は?違いは?

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続いて「勝手知ったる」の類義語・違いについて確認していきましょう。よく似た表現との違いを確認することで、「勝手知ったる」という言葉の意味をより深く理解することができます。

その1「勝手が分かる」

「勝手が分かる」はある物事が分かるという意味で、勝手知ったるとほとんど同じ意味で使われている同義語です。逆の意味である「勝手がわからない」は、日常的にも耳にすることの多い言葉ですよね。「勝手が分かる」は現在、「勝手知ったる」よりも使われる頻度の多い表現となっています。

\次のページで「その2「精通」」を解説!/

その2「精通」

「精通」はある物事について詳しく知っているという意味の単語です。「あの人は語学に精通している」といった形で使われており、その道について専門的な知識まで心得ていることを指しています。「精通」は、ある分野の専門的な知識が深いというニュアンスが強い点に注意しましょう。

その3「造詣(ぞうけい)が深い」

「造詣が深い」は特定の分野について非常に知識が豊富であることを意味しています。こちらも「精通」と同様に、ある分野の知識に秀でているという意味のため、「勝手知ったる」とはニュアンスが少し違い、注意が必要です。「造詣」の読み方ですが、「ぞうし」と読むのは誤りのため、こちらも注意しましょう。

「勝手知ったる」の対義語は?

つづいて「勝手知ったる」の対義語についても確認していきましょう。「勝手知ったる」には明確に対義語とされている語はありません。しかしその意味から連想してみると次の単語が思い浮かびます。

「馴染みのない」

「馴染みのない」はある物事について慣れていないことを表す言葉です。これまでに経験したことがなく、知識がない。「馴染みのない」はこういった場面で使われている言葉となっています。

「勝手知ったる」がある場所や物事についてよく慣れ親しんでおり、知識が豊富という意味のため、「馴染みのない」はちょうど真逆の意味を表していますね。こちらもあわせて覚えておきましょう。

「勝手知ったる」の英訳は?

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つづいて「勝手知ったる」の英語訳についても確認していきましょう。

「Know one's way around」

「Know one's way around」はある場所について詳しいこと、またはある分野について詳しいことを表しており、ちょうど「勝手知ったる」と同じ意味を伝えることができます。

Know one's way around the house」といった形で使い、特定の場所の事情をよく知っているということを表現することができますよ。こちらもあわせて覚えておきましょう。

\次のページで「「勝手知ったる」を使いこなそう」を解説!/

「勝手知ったる」を使いこなそう

この記事では「勝手知ったる」の意味・使い方・類語などを説明しました。「勝手知ったる」はある場所やある物事について詳しい知識があるということを表現する言葉です。また「勝手知ったる他人の家」という慣用句では意味が変化し、他人の家をまるで自分の家のように扱うことを表す、という点に注意が必要。

類義語には「勝手が分かる」、「精通」、「造詣が深い」などがありました。それぞれ非常によく似た意味を持っていますが、少しづつ使用する状況・ニュアンスに違いがあります。それぞれの特徴をしっかり捉えて、使い分けるようにしていきましょう。今回の記事が皆さんの参考になっていれば幸いです。

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国語言葉の意味

【慣用句】「勝手知ったる」の意味や使い方は?例文や類語を読書家Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「勝手知ったる」について解説する。

端的に言えば勝手知ったるの意味は「心得がある」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

多くの学術書を読み、豊富な知識をもつハヤカワを呼んです。一緒に「勝手知ったる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ハヤカワ

学術書を中心に毎年100冊以上の本を読む、無類の本好き。人にさまざまな影響を与える言語、それ自体に強い興味をもち、言葉の細やかな表現にも並々ならないこだわりをもっている。

「勝手知ったる」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「勝手知ったる」の意味や語源・使い方をご紹介していきます。「勝手知ったる」は慣用句であるという点も抑えておきましょう。

「勝手知ったる」の意味は?

「勝手知ったる」というキーワードをネット上の辞典・辞書「コトバンク」で検索してみると、次のような記載があります。

1.ある場所などの様子、物事のやり方の具合などを心得る。内情に通じる。
※洒落本・百安楚飛(1779)「片田舎より、へんくつな和尚のつゐて来れた開帳仏、江戸の勝手(カッテ)をしらず」

出典:精選版 日本国語大辞典「勝手を知る」

「勝手知ったる」は「勝手を知る」の口語体で、特定の場所の事情、または物事のやり方をよく知っているという意味になります。すでに何度も経験したことがあるため、ある場所・ある物事の事情をよく心得ている。「勝手知ったる」はこうした意味合いを表現する言葉です。

また、勝手知ったるは「勝手知ったる他人の家」という言い回しでよく使われており、こちらは他人の家をまるで自分の家かのように我が物顔で振る舞うという意味になります。こちらもあわせて覚えておきましょう。

「勝手知ったる」の語源は?

次に「勝手知ったる」の語源を確認しておきましょう。勝手知ったるは、「勝手」と「知ったる」の二つの単語を組み合わせて生まれています。「勝手」はわがまま・都合が良いこと・便利なこと・台所・生計など、非常に多彩な意味で使われている単語です。

そうした「勝手」の多彩な意味のひとつに、都合・事情という意味があり、「勝手知ったる」では、こちらの意味で使われています。「勝手知ったる」は勝手を知っている。つまり都合や事情についてよく知っているという意味で、古くから使われている慣用句となっています。

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