この記事では「暖を取る」について解説する。

端的に言えば暖を取るの意味は「体を暖めること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、ロシアで2年間日本語教師として働いた大学院生ライターの「むかいひろき」を呼んです。一緒に「暖を取る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間日本語教師として働いた経験を持つ大学院生。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「暖を取る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「暖を取る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「暖を取る」の意味は?

「暖を取る」には、次のような意味が国語辞典に掲載されています。

からだを暖める。「たき火で―・る」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「暖(だん)を取・る」

暖を取る」は「だんをとる」と読みます。辞書では「からだを暖める」という意味が記載されている慣用句です。

厚着をして体を暖めたり、運動をして体を暖めたりする場合でも使用可能ですが、コタツやヒーター、たき火など、「熱や火を利用して体を暖める」という意味でよく使用されていますね。

「暖を取る」の語源は?

次に「暖を取る」の語源を確認しておきましょう。

「暖を取る」の語源は残念ながらよく分かっていません。ただ、江戸時代(1827年)に漢文で書かれた「日本外史」という書物には、「焼我営取煖。今夜虜柵陥矣。不復用営」という記述があり、古くから使われていた言葉だと考えられます。

\次のページで「「暖を取る」の使い方・例文」を解説!/

「暖を取る」の使い方・例文

「暖を取る」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.「犬は喜び庭駆け回り、猫はコタツで丸くなる」という歌詞の歌があるが、うちの犬は雪が降ると必ずコタツで暖を取って、庭を走り回ることはない。
2.子どもたちは体育の授業の後、体を冷やさないように教室のストーブの前で暖を取っている。
3.大昔の人は、しか暖を取る道具がなかった。
4.今日は寒いから、ヒートテックと厚手のセーターで暖を取ろう

例文1は、「うちの犬は雪が降ると必ずコタツで体を暖める」という文脈で「暖を取る」が使用されています。コタツは昔から日本人が暖をっとるために使用している道具ですよね。

例文2は、「子どもたちが、教室のストーブの前で体を暖めている」という文脈で「暖を取る」が使用されています。冬の体育の授業の後は寒いですもんね。

例文3は、「大昔の人は、火以外に体を暖める道具がなかった」という文脈で「暖を取る」が使用されています。コタツや暖炉は昔からありますが、縄文時代や弥生時代といった時代には、火以外で体を暖める手段や方法はありません。

例文4は、「ヒートテックとセーターで体を暖めよう」という文脈で「暖を取る」が使用されています。

例文1~3のように、「熱や火を利用して体を暖める」という意味で使用される場合が多いです。

「暖を取る」の類義語は?違いは?

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「暖を取る」の類義語は「ぬくもる」です。意味や違いを確認していきましょう。

「ぬくもる」

ぬくもる」は「あたたまる」という意味の言葉です。漢字では「温もる」と書きますが、ひらがなで書くのが一般的ですね。

「暖を取る」との違いは、「暖を取る」は「体を暖める」と他動詞であるのに対し、「ぬくもる」は「あたたまる」と自動詞である点です。他動詞は人間の行動を示しますが、自動詞は状況を表します。つまり、「寒いので、コタツで暖を取ったらぬくもった」=「寒いのでコタツで暖をとったら温まった」という言い方も可能です。

例文を見てみましょう。

\次のページで「「暖を取る」の対義語は?」を解説!/

・冬山で遭難し絶体絶命の状況まで追い込まれたパーティーが何とか全員無事に救助された。彼らは今、サウナでぬくもりながら涙を流している。
・家族とコタツでぬくもる時間は、幸せだし大事だ。
・この村には、子どもが夏に温泉で長時間ぬくもると、キツネにさらわれるという伝承がある。

「暖を取る」の対義語は?

「暖を取る」の対義語は「涼を取る」です。意味や用語の使い方を確認していきましょう。

「涼を取る」

涼を取る」は「りょうをとる」と読みます。「涼しい風に当たるなどして暑さをしのぐ、涼む」という意味の慣用句です。「暖を取る」は「暖める」という意味でしたが、「涼を取る」は「涼む」「体を冷やす」という意味になるので、まさに反対語ですね。

ちなみに、「暖」の反対は「寒」だから、「寒を取る」という表現もあるのでは…と考えた方もいらっしゃるかもしれません。残念ながら「寒を取る」という表現はないので気をつけましょう。

以下、例文です。

・暑い日は、かき氷を食べて涼を取るのがおすすめです。その他、アイスクリームもおすすめですよ。
・外は35度と死にそうなくらいの暑さだったが、冷房の効いた部屋で涼を取って生き返った。
・真夏の炎天下で中継を行っていたニュースキャスターは、カメラが止まると大量に水を飲んで涼を取っていた。

「暖を取る」の英訳は?

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「暖を取る」の英語表現は、「warm oneself」です。意味や例文を確認していきましょう。

「warm oneself」

warm oneself」は、直訳すると「自らを暖める」という意味の熟語です。より丁寧に翻訳すると「暖を取る」がピッタリの言葉になりますね。ちなみに、「oneself」の部分には「myself」や「yourself」などの再帰代名詞の単語が入ります。

例文を見てみましょう。

\次のページで「「暖を取る」を使いこなそう」を解説!/

・It is good to warm oneself by another's fire.
・他人の火で暖を取るのは良いものだ。(「人の褌で相撲を取る」という意味のことわざと同義の表現)

・Mary went back to the car to warm herself. 
・マリーは暖を取るために車に戻った。

「暖を取る」を使いこなそう

この記事では「暖を取る」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「暖を取る」は「体を暖める」という意味の慣用句です。厚着をして体を暖めたり、運動をして体を暖めたりする場合でも使用可能ですが、コタツやヒーター、たき火など、「熱や火を利用して体を暖める」という場合でのほうが、より使用されています。

対義語は「寒を取る」ではなく、「涼を取る」なので気をつけましょう。

寒い日は積極的に暖を取って、健康に気をつけて暮らしていきたいですね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「暖を取る」の意味や使い方は?例文や類語を日本語教師の大学院生がわかりやすく解説!

この記事では「暖を取る」について解説する。

端的に言えば暖を取るの意味は「体を暖めること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、ロシアで2年間日本語教師として働いた大学院生ライターの「むかいひろき」を呼んです。一緒に「暖を取る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間日本語教師として働いた経験を持つ大学院生。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「暖を取る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「暖を取る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「暖を取る」の意味は?

「暖を取る」には、次のような意味が国語辞典に掲載されています。

からだを暖める。「たき火で―・る」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「暖(だん)を取・る」

暖を取る」は「だんをとる」と読みます。辞書では「からだを暖める」という意味が記載されている慣用句です。

厚着をして体を暖めたり、運動をして体を暖めたりする場合でも使用可能ですが、コタツやヒーター、たき火など、「熱や火を利用して体を暖める」という意味でよく使用されていますね。

「暖を取る」の語源は?

次に「暖を取る」の語源を確認しておきましょう。

「暖を取る」の語源は残念ながらよく分かっていません。ただ、江戸時代(1827年)に漢文で書かれた「日本外史」という書物には、「焼我営取煖。今夜虜柵陥矣。不復用営」という記述があり、古くから使われていた言葉だと考えられます。

\次のページで「「暖を取る」の使い方・例文」を解説!/

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