
その2「たわいない」
「たわいない」は子供のようで相手にしがいがない様子を表す表現。「子供をおぶったらたわいなく寝てしまった」は簡単だという意味、「彼女の言う大事件は、たいていたわいない」はたいしたことはないという意味、「近所の主婦とたわいない話をして時間をつぶす」はつまらないという意味、「母は言い訳をたわいなく信じた」は簡単だ、あっけないという意味、「我がチームは全くたわいなく負けてしまった」は容易いという意味ですが、これらの知的意味に加えて、対象に対する侮蔑ないし愛情などの感情の加わる点が「たわいない」の特徴です。
「たわいない」を使用するときのポイント
「たわいない」は子供の性質としての無邪気さ、純真さ、単純さ、ひ弱さなどが行為の上に表れたとき、見る者が上位者の立場に立ってこれを評する人は対象より心理的に上位に立っていることが暗示され、対象の行為が愛すべきときには愛情の暗示が加わり、憎むべき時には侮蔑の暗示が加わりますよ。
つまり、話者の心理によって全く同じ文脈がプラスイメージにもマイナスイメージにもなりうる。子どもの性質を総合的に表す意味で、「たわいない」は「頑是ない」に共通しますが、「頑是ない」は子供専用の文章語であって、大人の幼児性や幼児的行為については用いられません。
「たわいない」を使用するときのポイント2
また、「たわいない」は「子供っぽい」や「幼い」にも似ていますが、「子供っぽい」「幼い」はとても客観的な幼児性を表す語であって、移入される感情の暗示はない点が「たわいない」と異なります。子どもの性質を表す語としては、他に「あどけない」「いとけない」「いたいけ」などがありますが、これらは幼児性をプラスイメージでとらえている点が「たわいない」と異なりますよ。なお「曲がない」との違いは、「たわいない」は子どもの性質を総合的に表す表現だという点です。
その3「とげとげしい」
「とげとげしい」は刺激的な感じで不快な様子を表します。「彼女はとげとげしい目つきでにらんだ」「電話に出た母の声はとげとげしかった」「会議のとげとげしい雰囲気にはいたたまれない」のように、顔・目つき・声・雰囲気など、ある状況下において外に現れたものについて用いることが多く、人の性格全体を表すことは少ない。性格について用いられた場合にも、外見の「とげとげしさ」によって性格を類推する場合が多いです。そのため「彼女はとげとげしい性格だ」は誤用となり、正しくは「彼女はきつい(角々しい)性格だ」となりますよ。
「とげとげしい」を使用するときのポイント
「とげとげしい」は「けわしい」に似ていますが、「けわしい」が「危険や困難を感じさせるような」というニュアンスをもつのに対して、「とげとげしい」は神経の過敏さを暗示する点で異なります。したがって「彼はけわしく突っかかって行った」は誤用となり、正しくは「彼はとげとげしく突っかかって行った」となりますよ。
また、「とげとげしい」は「きつい」にも似ていますが、「きつい」が性格の強さをやや客観的に表現するのに対して、「とげとげしい」はその人の性格全体の強さまで暗示せず、ある状況下において外見に現れた感情の高ぶりを暗示する点で異なります。ちなみに「曲がない」との違いは、「とげとげしい」は点ある状況下において外に現れたものについて用いることが多く、人の性格全体を表すことは少ないという点ですよ。
「曲がない」の対義語は?
「曲がない」と反対の意味に近い言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。
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