この間国語の授業で怪談話がでてきてな。そこで「身の毛がよだつ」って表現が出てきたんですね。生徒たちはだいたいの意味は理解しているようだったが、「"よだつ"って何ですか?」と聞いてきた。この記事を読んでいる皆さんは答えられるかな。

ちなみに、「身の毛がよだつ」は「恐怖のために全身の毛が逆立つ」という意味の言葉です。

今回は、この「身の毛がよだつ」について、「よだつ」の意味も含めて院卒日本語教師の"むかいひろき"に解説してもらうぞ。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学に再就職した、日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「身の毛がよだつ」の意味や使い方は?

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「身の毛がよだつ」という言葉、実際に見聞きしたり使ったりしたことがあるという人が多いのではないでしょうか。ただ、正確な意味となると把握できているか怪しい人がいらっしゃるかもしれませんね。まずは「身の毛がよだつ」の意味や使い方を確認していきましょう。

「身の毛がよだつ」の意味は「恐怖のために全身の毛が逆立つ」

最初に、「身の毛がよだつ」の辞書での意味を確認していきましょう。国語系の辞典には、「身の毛がよだつ」について次のような意味が掲載されています。

恐怖のために全身の毛が逆立つ。

出典:明鏡 ことわざ成句使い方辞典(大修館書店)「みのけがよだつ【身の毛がよだつ】」

「身の毛がよだつ」は「恐怖のために全身の毛が逆立つ」という意味の慣用句です。ものすごいレベルの恐怖で、全身の毛が逆立ちしてしまうような状況を表します。この「よだつ」は「恐ろしさや寒さのために体の毛が立つ」という意味で、とても古い時代から使用されている言葉ですね。なお、「身の毛がよだつ」は鎌倉時代に書かれた平家物語で使用が既に確認できる言葉です。

また、「身の毛がよだつ」は、”寒さから全身の毛が逆立つ”場合には使用できないのでご注意ください。

「身の毛がよだつ」の使い方を例文とともに確認!

続いて、「身の毛がよだつ」の使い方を例文とともに確認していきましょう。「身の毛がよだつ」が文中で使用されている例文を3つ用意しました。どのような場面や文脈で使用されているのか、確認していきましょう。

\次のページで「「身の毛がよだつ」の類義語は?」を解説!/

1.誰もいないはずの部屋から叫び声がして、私は恐怖で身の毛がよだった
2.ロンドンでテロ事件に巻き込まれたときは身の毛がよだつ思いだった。
3.近所で身の毛がよだつような連続殺人事件が発生した。とにかく、戸締りはしっかりしよう。

例文1では、誰もいないはずの部屋から叫び声がしたことで「ものすごく怖い思いをした」ことが、「身の毛がよだつ」を用いて表現されています。このように怪談話で強い恐怖を表すためによく用いられる表現です。

例文2では、テロ事件に巻き込まれたときに「とても恐ろしい思いをした」ことが、「身の毛がよだつ」を用いて表現されています。テロ事件に海外で巻き込まれてしまうことほど恐ろしいことは、他になかなかないでしょう。

例文3では、「とても恐ろしい連続殺人事件が発生した」という文脈で「身の毛がよだつ」が使用されています。「とても恐ろしい○○」という意味で「身の毛がよだつような○○」という使われ方をする例ですね。

「身の毛がよだつ」の類義語は?

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続いて、「身の毛がよだつ」の類義語について見ていきましょう。「身の毛がよだつ」の類義語は「背筋が寒くなる」「戦慄する」「震えあがる」です。意味やニュアンスを確認し、「身の毛がよだつ」と比較してみてください。

「背筋が寒くなる」:恐ろしさや気味の悪さにゾッとする

「背筋が寒くなる」は「恐ろしさや気味の悪さにゾッとする」という意味の慣用句です。背筋は背中の中心線を表し、恐怖や気味の悪さによって、その部分がゾクゾクするような思いを表します。意味やニュアンスは「身の毛がよだつ」とほぼ変わりません。

「戦慄する」:恐ろしさのために体が震える

「戦慄する(せんりつする)」は「恐ろしさのために体が震える」という意味の表現です。「戦慄を覚える」「戦慄が走る」という言い方をする場合もありますが、意味は変わりません。「慄」という字は、「恐れや不安のために体が震える=おののく」という意味を表します。

なお、同じ読みの「旋律」と取り違えられることが多いので気をつけましょう。「旋律」は音楽の基本的要素の一つで、楽音の高低・長短がリズムを伴って展開する連続的な流れ…つまり「メロディー」という意味を表す日本語表現です。

\次のページで「「震え上がる」:寒さや恐ろしさのためにひどく震える 」を解説!/

「震え上がる」:寒さや恐ろしさのためにひどく震える

「震え上がる」は「寒さや恐ろしさのためにひどく震える」という意味の表現です。「身の毛がよだつ」と同じような場面で使用されることが多いですが、「震え上がる」は寒さで震えている場合にも使用できます。ここが「身の毛がよだつ」との違いですね。

「毛」が含まれるその他の慣用句

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今回ご紹介した「身の毛がよだつ」は、「毛」が言葉の意味を考えていく上で重要なキーワードになっていました。ここでは、その他の「毛」が使われている日本語の慣用句を見ていきましょう。

「心臓に毛が生えている」:きわめて厚かましい

「心臓に毛が生えている」は「きわめて厚かましい」という意味の慣用句です。恥知らずで他人に対して全く遠慮がなく、とても厚かましい態度を取る人に対して使用します。なお、大正時代までは「肝に毛が生えている」という言い方をしていたそうです。

最近では、プレッシャーのかかる場面において、そのプレッシャーを気にかけずに行動ができる人に対しても使用されます。この場合は、「厚かましい」というマイナスのニュアンスはなく、「心が強い」というプラスのニュアンスが含まれますね。

「眉毛を読まれる」:相手に心中を見抜かれる

「眉毛を読まれる」は「相手に心中を見抜かれる」という意味の慣用句です。自分が何を考えているのか、何をしようとしているのかを相手に見透かされる場合に用いる表現ですね。眉毛は人の感情が表出する部分の1つ。そこを見ることで、相手の考えや意図が分かってしまうこともあるでしょう。

あなたの「身の毛がよだつ」体験、何ですか?

今回は「身の毛がよだつ」について解説しました。「身の毛がよだつ」は「恐怖のために全身の毛が逆立つ」という意味の慣用句で、ものすごいレベルの恐怖で、全身の毛が逆立ちしてしまうような状況を表すのに使用します。

あなたは「身の毛がよだつ」体験を何かしたことがありますか?私もいくつかあるのですが…。ただ、「身の毛がよだつ」体験は、今後は一切したくないですね。

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国語言葉の意味

簡単に想像できぬほどの恐怖…「身の毛がよだつ」の意味や類義語などを院卒日本語教師が分かりやすく解説

この間国語の授業で怪談話がでてきてな。そこで「身の毛がよだつ」って表現が出てきたんですね。生徒たちはだいたいの意味は理解しているようだったが、「”よだつ”って何ですか?」と聞いてきた。この記事を読んでいる皆さんは答えられるかな。

ちなみに、「身の毛がよだつ」は「恐怖のために全身の毛が逆立つ」という意味の言葉です。

今回は、この「身の毛がよだつ」について、「よだつ」の意味も含めて院卒日本語教師の”むかいひろき”に解説してもらうぞ。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学に再就職した、日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「身の毛がよだつ」の意味や使い方は?

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「身の毛がよだつ」という言葉、実際に見聞きしたり使ったりしたことがあるという人が多いのではないでしょうか。ただ、正確な意味となると把握できているか怪しい人がいらっしゃるかもしれませんね。まずは「身の毛がよだつ」の意味や使い方を確認していきましょう。

「身の毛がよだつ」の意味は「恐怖のために全身の毛が逆立つ」

最初に、「身の毛がよだつ」の辞書での意味を確認していきましょう。国語系の辞典には、「身の毛がよだつ」について次のような意味が掲載されています。

恐怖のために全身の毛が逆立つ。

出典:明鏡 ことわざ成句使い方辞典(大修館書店)「みのけがよだつ【身の毛がよだつ】」

「身の毛がよだつ」は「恐怖のために全身の毛が逆立つ」という意味の慣用句です。ものすごいレベルの恐怖で、全身の毛が逆立ちしてしまうような状況を表します。この「よだつ」は「恐ろしさや寒さのために体の毛が立つ」という意味で、とても古い時代から使用されている言葉ですね。なお、「身の毛がよだつ」は鎌倉時代に書かれた平家物語で使用が既に確認できる言葉です。

また、「身の毛がよだつ」は、”寒さから全身の毛が逆立つ”場合には使用できないのでご注意ください。

「身の毛がよだつ」の使い方を例文とともに確認!

続いて、「身の毛がよだつ」の使い方を例文とともに確認していきましょう。「身の毛がよだつ」が文中で使用されている例文を3つ用意しました。どのような場面や文脈で使用されているのか、確認していきましょう。

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